埼玉栄高校相撲部が実践している 強靭さ・柔軟さを高める足裏基礎トレーニング 後編
野球にも取り入れられる「相撲的トレーニング」法
では、相撲のトレーニング法で野球にもすぐ取り入れられるものはあるのだろうか?山田監督は「じゃあ、道場を出ましょうか」と私たちを外へと案内する。
整理整頓された用具が並ぶ道場外の通路。そこには、どこにでもあるタイヤがアスファルトの上に置かれていた。シューズを履いてそれを押さんとしている1人の選手。
「脂肪を減らして、筋肉量を増やすためのトレーニングですね」(山田監督)
このときばかりはさすがの選手も思いっきり踏ん張って、アスファルト上のタイヤを20mほど押す。
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「誰か押してみてください」
監督から指名を受けた野球経験ありの若手スタッフが押してみるが・・・びくともしない。
「グラウンドの上でタイヤ押しやタイヤ引きをする野球部はあると思うんですが、アスファルトの上だと摩擦力が違う。アスファルトの上で押すからこそ意味があるんです」
もちろん選手の状態を見計らう必要はあるだろうが、このトレーニング法も一考の余地があるだろう。
足裏は「強靭さ・柔軟さ」を出す原動力
それにしても稽古は基礎であっても厳しい。部員の中には今年2月に国民栄誉賞を受賞した第48代横綱・大鵬(2013年1月没)、佐渡ヶ嶽親方としても名力士を次々と輩出した第53代横綱・琴櫻(2007年8月没)のお孫さんたちも在籍しているが、ここでは「サラブレッド」などという肩書きは一切関係ない。時に顔をしかめながら、土俵に汗を流す彼らの懸命さには、見ている我々も心を打たれてしまう。
「すり足」に続いては相撲で必須となる突き、押しのパワーを作るため「鉄砲柱」といわれる木の柱に向かって突っ張る「鉄砲」へ。ここでも「足裏」が大事なキーワードになっていた。
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軽い「パン」でなく思い「ドン」という音。様々なパターンの鉄砲を見せて頂いた中でも足裏をしっかり使い、踏み込んでの鉄砲は明らかにそうでないものと打撃力が異なっていた。
いざ、土俵に入り押し稽古やぶつかり稽古に入る選手たち。かかとが浮いていれば押し込めず、土俵に転がされる。かかとがしっかり付いていれば、押し込め、相手を押し出せる。すなわち足裏のバランスが崩れた方が負け。足裏は相撲の勝敗を分ける生命線となっていることが如実にわかる光景である。ほとんどが100キロ以上にもかかわらず強靭、かつ柔軟な動きができる力士たち。その奥義はこのように全て「足裏」から始まっている。
ここ最近、スポーツ界では今まで見落としがちだった「足裏」の重要性を見直す動きが増えている。当然、野球界も例外ではない。トレーニングも然ることながら、「足裏」に特化した用具にも注目が集まっている。日頃から鍛えるためには、NIKE FREEなど足裏の強化を考えたソールの屈曲性が高いシューズなど発売されているため、トレーニング用具も上手に活用していきたいところだ。
日本古来の伝統競技・相撲が教えてくれる「足裏」の大切さ。球児の皆さんも参考にしてもらえば幸いだ。
文=寺下友徳