試合レポート

京都共栄vs宮津

2013.07.17

京都共栄・村田が5回参考ながらノーヒットノーラン達成

 北部のチーム同士の対戦が福知山球場で実現したこともあり、平日にも関わらず多くの保護者が観戦に訪れていた。天候は曇り。強い日差しは無く、温かい声援の下、野球をするには絶好のコンディションの中試合が行われた。

プレーボール直後、京都共栄学園の1番・足立が初球を叩いた打球は、サイレンが鳴り止まぬうちに宮津のセンター・井上のグラブに収まった。初球から積極的に行こうという指示が出ていたのか、二死後、3番・小池が1ボールからファーストストライクを振り抜くと、打球はセンターの頭を越えるツーベースヒット。一打先制の場面で4番・末廣も初球攻撃。やや詰まった当たりがセンター前に落ちそうになるが、これを宮津のショート・細見が背走しながらキャッチ。まずは守備でチームに貢献した。

 1回裏、宮津の攻撃は1番・井上がフォアボールで出塁し、2番は守備でいいプレーを見せたキャプテンの細見。一塁方向へ1球で見事なバントを決めた。膝を折って身をかがめ、バットを目線の位置で固定する姿からはバントに対する強い意識が感じられ、その構えは強豪校でも滅多に見られないほど美しかった。3番・林、4番・中村は宮津打線の文字通りの主軸。クリーンアップのバットに期待がかかったが、林はアウトローのストレートに手が出ず、中村はいい当たりのセンターフライに倒れ得点には至らなかった。

 2回に8番・村田の犠牲フライで先制した京都共栄学園、3回にも2番・公宅のヒットをきっかけに二死一、三塁とチャンスを作る。リードを広げたい場面だったが再び宮津の好守に阻まれる。セカンド・倉がピッチャー・奥田の頭をワンバウンドで越えてセンター前へ抜けようかという当たりを好捕。捕球の勢いそのままにセカンドベースを踏み一塁ランナーを封殺した。その裏、流れをつかみたい宮津の攻撃は8番・小西から。小西が出塁すれば、9番・倉が送って上位打線へという攻撃も可能だったが、小西、倉は連続三振に、俊足の井上はライトフライに倒れ出塁できなかった。


 守備では隙を見せない京都共栄学園だが、攻撃では何度もチャンスを作りながらもあと1本が出ない。
春季大会と同じ展開になりかけたが4回に打線が奮起する。一死から村田、小田の連打とフォアボールで満塁のチャンスを作ると公宅がセンター前に2点タイムリーヒットを放つ。なおも続く一死一、二塁のチャンスに小池の当たりはゲッツーコースのセカンドゴロだったが、慎重に行き過ぎたのかセカンド・倉が二塁へ悪送球。緊迫の場面で足が動いておらず、下半身を切り返さないままの手投げになってしまっていた。ボールがレフト方向へ転がる間に二塁ランナー・足立が生還、一塁ランナー・公宅は三塁へ進んだ。尚も続く一死一、三塁のチャンスに末廣が4番の働きをする。フェアゾーンならホームランという弾丸ライナーのファールの直後、3球目をライトに弾き返すタイムリーヒット。この時点で得点は5対0、これ以上離されたくない宮津は奥田に代えて梅若をマウンドに送る。

 1回からブルペンに入り肩を作っていた梅若だが、マウンドに上がるとコントロールに苦しむ。2ボールから5番・安達にデッドボールを与えてしまい再び満塁とすると、6番・市田をフォアボールで歩かせてしまい6点目を献上。7番・澤田の内野ゴロ間にも三塁ランナーが生還し、4回表のスコアには試合の行方を決定付ける6点が記された。長い攻撃を終え守備に就く京都共栄学園ナインにスタンドからは「この回抑えな意味ないぞ」との声が飛ぶ。流れを手放さないためにも無死点に抑えたい4回裏、宮津の攻撃は2番から始まる好打順だった。このまま1点も取れなければ7回コールドゲームとなるため、宮津にとっては試合の勝ち負けの前にまず1点が必要だった。2死から中村がフォアボールで出塁すると盗塁を決め得点圏に進む。しかし京都共栄学園先発・村田の前に5番・大谷のバットから快音は聞かれず、初回に続いてチャンスを生かすことができない。


ポイントになりそうな4回の攻防を理想的な展開に持ち込んだ京都共栄学園は、5回にも攻撃の手を休めない。小田のヒットと足立のセーフティ気味の送りバントで一死二塁とすると、公宅、小池、末廣が3連打。この回3点を加え、得点を2桁10点とした。

 5回裏、追い詰められた宮津は一死から代打の切り札・宮崎を送るがレフトフライ、続く代打・茂木も空振り三振に倒れ反撃の糸口をつかめぬままゲームセット。京都府吹奏楽コンクール金賞常連のブラスバンド部や女子生徒によるダンスの華やかな応援も及ばず無念の試合終了となった。退席する応援団を見送る野球部の列の中で、多々野監督の目は選手よりも赤く潤んでいた。

 5回を投げた京都共栄学園・村田が許したランナーはフォアボールの2人だけ。5回参考記録ながら毎回の7奪三振でノーヒットノーランを達成した。
 攻撃面では決して会心の当たりでなくとも内野手の頭を越え、外野手の前にポトリと落ちた。当てに行くのではなく、しっかりスイングした結果だろう。
 投打がかみ合い、春季大会では苦戦した相手を10対0の5回コールドで退けた。試合時間は1時間30分。点差は開いたが大味な試合ではなく、気がつけば開いていたという印象さえ残る。

 3ヶ月の上積み期間を経ての再戦は、再び京都共栄学園に軍配が上がった。

(文=小中翔太)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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