Column

光星学院 強打の秘密/田村・北條を生み出した練習法(1)

2012.10.31

強打者を育てた打撃練習法 /東海大甲府(山梨)

 2012年夏、甲子園で史上3校目となる3季連続決勝進出を果たした光星学院。悲願はならず、史上初の3季連続準優勝で終わったが、3番・田村龍弘、4番・北條史也を軸とした強打は注目を浴びた。そんな光星学院の打撃理論とは?そして、練習方法は?

重要なのはタイミング

 仲井宗基監督に「打撃について」とテーマを出したところ、やはり、「バッティングで一番、大切なのはタイミングです」と開口一番で返ってきた。

 以前、金沢成奉前監督(現・明秀学園日立監督)は「ピッチャーにとって大切なことはバッターのタイミングを外すこと」と語っていたことがある。いくら速い球を投げても、タイミングが合ってしまえば、痛烈にはじき返される。これをバッター目線にすれば、「タイミングが合えば打てる」ということになる。

 では、どうやってタイミングを合わせるのか。光星学院で取り入れているのが「近距離バッティング」と呼ばれる練習だ。投本間13メートルの距離で行うフリーバッティング。近い距離で思いっきり投げる打撃投手の球を打ち返すには上手くタイミングを取らなければならない。投手は直球や変化球も交える。ストライク、ボールの見極めもしなければならないため、「総合的な練習」(仲井監督)になる。

 近距離バッティングとティーバッティングで使用するバットは竹バット。「投手と打者の距離が近いので、金属バットだとピッチャー返しが危ないし、バットのヘッドの重みを使って打つ感覚を養うのには竹バットがいいんです。木製バットは折れるし、速い球を打つと手がしびれるから当てにいくバッティングになってしまう。フルスイングをせず、スイングが弱くなってしまう。そういう弊害がありますが、近距離バッティングでは加減をしないで打てる。尚且つ、芯に当てる練習になります」(仲井監督)。正規の距離で、打撃マシーンを使ってのフリーバッティングは金属バットを使っている。

 強打につながった光星学院の練習ということで、取り入れていたチームも多くあるようだが、結局はバットとボールがなかなか当たらず、正規の距離でのフリーバッティングに戻ることが多いと聞く。「近距離バッティングは気持ちよく打つ練習ではない。身につけるための練習」と仲井監督。光星学院が信じる打撃理論があってこそ、「近距離バッティング」は生きてくる。

このページのトップへ

[page_break:光星学院の打撃理論]

光星学院の打撃理論

(モデルは右打者の田村龍弘選手。左打者は逆と考えてください)

《構え》(写真1)
ボールを長く見るため、なるべく後ろに立ち、手首を軟らかく使ってバットは動かしておく

《乗せ》(写真2)
左足を上げ、体重を右股関節に乗せる

《トップ》OK (写真3)
右打者の場合、上げた左足が地面につく瞬間。左足が付くと同時にバットを振りにいける位置。

《トップ》NG (写真4)
左足が地面についた時点でも上半身が後ろに入りすぎており、バットの出が遅くなる


▲(写真1)構え

▲(写真2)乗せ

▲(写真3)トップ OK

▲(写真4)トップ NG

《インパクト》(写真5)
ボールの軌道にバットの軌道を入れる。光星学院では「ラインで打つ」と表現する。「上から落ちてくるボールをつかもうとして手を横から出すよりは、ボールの軌道に合わせて下から手を出した方がつかめる確立は高い。ミートポイントは、前がいいか、後ろがいいかと言えば、後ろの方がいい。

▲(写真5)インパクト

なぜなら、(投本間)18、44メートルの中で、ストレートか変化球か、ボールを正確に捉えるにはボールを長く見た方いい。また、前だと体の中で強い打球が打てないし、前で裁くとタイミングを外される。また、ボールに対して力を強く加えたいので後ろで「幅」を作ることが大切です。ボールの軌道にバットを合わせるために、ボールを見極めることが大切になりますが、そのためにテークバックがあります。後ろで「幅」を取るため、振り遅れることが心配されますが、その分、スイングスピードを上げることが必要になります」(仲井監督)

《軸》OK(写真1)
頭、右肩、右股関節が一直線。左打者の場合は頭、左肩、左股関節が一直線。

《軸》NG(写真2)
頭、右肩が前に出てしまっている状態。

《軸》NG(写真3)
頭、右肩が後ろになっている状態。


▲(写真1)《軸》OK

▲(写真2)《軸》NG

▲(写真3)《軸》NG

◎ボールの見送り方
トップが、「上げた左足が地面に付く瞬間。左足が付くと同時にバットを振りにいける位置」であるため、必然的に打ちに行った中で見送ることになる。 


写真13 見送り方(OK)

写真14 見送り方(NG)

光星学院 強打の秘密/田村・北條を生み出した練習法(2)に続く

(文=高橋 昌江

このページのトップへ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.06.15

西東京大会は激戦ブロックが続出!昨夏甲子園出場の日大三は国士舘と同ブロック!【2024年夏の甲子園】

2024.06.15

東東京の横綱に上り詰めた帝京、関東一の軌跡~前田三夫と小倉全由、2人の名将~【東西東京大会50周年物語③】

2024.06.15

【福島】日大東北がサヨナラ勝ち、帝京安積はコールド勝ちで4強入り<春季支部選手権大会>

2024.06.15

今年の東京は「スラッガー大豊作世代」! 超進学校に現れた「プロ入り明言」の二刀流、木製で本塁打量産の早実のスラッガーなどが夏を盛り上げる【注目選手リスト】

2024.06.15

“超不人気”だった東京の高校野球を「3つの出来事」が変えた! 東京ローカルチーム・桜美林の全国制覇、都立高の甲子園出場、そして……【東西東京大会50周年物語②】

2024.06.14

【福岡】九州国際大付は小倉商、東海大福岡は小倉南、春日は大川樟風、福岡大大濠は輝翔館と対戦【2024夏の甲子園】

2024.06.11

センバツ出場・東北のレギュラー左翼手がプロボクサー挑戦へ! エースはENEOS、主力は國學院大、国士舘大などへ進学【卒業生進路】

2024.06.14

15日に夏の甲子園抽選会!超激戦区・愛知が誇る逸材を一挙紹介!素材の宝庫・愛工大名電、中京大中京の149キロ右腕…そしてモイセエフはどこまで成長したのか?今年も全国クラスの逸材が点在!【注目選手リスト】

2024.06.11

【北海道】十勝支部は12日に抽選会!帯広大谷、白樺学園の初戦の相手に注目<夏の甲子園予選組み合わせ>

2024.06.11

【北海道】旭川支部の抽選会は12日!旭川実、旭川志峯など強豪の初戦の相手に注目<夏の甲子園予選組み合わせ>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.21

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在33地区が決定、岩手では花巻東、秋田では横手清陵などがシードを獲得〈5月20日〉

2024.05.19

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在30地区が決定、青森では青森山田、八戸学院光星がシード獲得

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.05.20

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在31地区が決定、宮城では古川学園、仙台南、岩手では盛岡大附、秋田では秋田商などがシードを獲得