Interview

株式会社アシックス 西村 嘉文 さん

2012.10.29

第111回 株式会社アシックス 西村 嘉文 さん2012年10月29日

 2012年11月上旬に野球界に進出するASICS BASEBALL。「あと1cm先へ」を企画コンセプトに、軽さと操作性を追求した硬式用グラブ(SPEED TECH)の企画・開発に携わった西村嘉文さんに軽量化にこだわるきっかけ、開発秘話、開発者のこだわりを語っていただきました。

「あと1cm先へ」軽さと操作性を追求したグラブ作り

株式会社アシックス 西村嘉文さん

――今回のアシックスのスローガンである「最新、最速。」グラブならば、「あと1cm先へ」を企画コンセプトに、軽さと操作性を追求したグラブを開発しましたが、軽量化にこだわったきっかけを教えてください。

西村 嘉文さん(以下「西村」) アシックスのブランド自体がどういう野球を目指していくかというところでいきますと、スピードベースボールをコンセプトとしてやっていこうとしています。その中で、グラブがどういう形で、スピードベースボールを具現化できるかを常に追求してきました。

 スピードを具現化するにはどうすればいいかを考えた結果、軽量化しようという結論に辿りつき、開発を行いました。今、このグラブが完成してようやくスタートラインに立ったと思います。

――グラブの軽量化に拘ったのはいつごろなのでしょうか?

西村 ここまで特化したことはないですけど、我々が旧ブランド時代から市場、プロ野球選手から「軽量化」を望まれていたのはキャッチしていました。軽量化実現へ向けて、長年継続して研究してきておりましたが、今回スポーツ工学研究所で、研究を重ね、思い切って特化することが出来たと思います。

――開発する上で、苦労した点は何でしょうか?

西村 耐久性を従来通りにキープしながら、軽量化を具現化することですね。耐久性と軽量化は相反するものだと思っていますので、そこに苦労しました。なんとか耐久性と軽量化を実現したグラブを完成させました。あとはただ軽くなっただけではなく、ひと目見て軽そう!と思わせるグラブ作りにも手掛けてきました。

――グラブを見た時、ひと目見て軽そうに見えますね!

西村 それができたのは「スライバートップ構造」(意匠登録第1452039号)です。指先の形状を改良し、革をそり落とすことによって、見た目の軽量化も実現していきました。

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2年間のグラブ開発秘話

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▲ASICS BASEBALLのグラブ開発コンセプトは「あと1cm先へ。」[/pc]

――軽量化と耐久性の具現化をするのは本当に難しいですね。

西村 材料の選定、中身の形状の持たせ方ももちろんですが、そり落とすとくたくたになってします。しかし軽量化と耐久性を両立しなければならない。軽量化する上で、中身をどのように構造していくか。このグラブを実現する上で、工場とのやり取りは非常に苦労しましたね。

――開発して、理想のグラブが出来あがったのは、何年ぐらいかかったのでしょうか?

西村 前から軽量化のグラブを実現しようと描いていたのですが、ここまで特化したグラブを計画したのは初めてですから、計画して完成したのは2年以上かかりましたね。

”ASICS BASEBALLラベル”

――このグラブが完成したときに、グラブを試してもらった選手からはどのような感想をいただているのでしょうか?

西村 ブランドマークがついていない状態で使用感を確認するため、同じような商品をユーザーに渡した時に、「非常に軽い!」「使いやすい!」という感想をいただきました。その時点ではまだ発売前の商品ですので会社に持って帰る必要があるのですが、「継続して使わせてくれ!」「持って帰らんでくれ!」という声をいただいております。皆さん、気に入っておりますね。

 「とにかく軽い!」「使いやすい!」という声は常にいただいております。

――先ほどグラブを試着したところ、グラブの軽さだけではなく、嵌めやすく、とても使いやすく感じました。

西村 手の甲の関節があるのですが、その関節の動きを邪魔しないようにして背面の形状を変え、MP関節を動かせやすい設計にしておりますので、そう感じられたのかなと思います。ただ軽いだけではなく、動かしやすい機能性にも拘っております。

――これからはどういうグラブを目指していきますか?

西村 軽いに越したことはないですけど、これからは軽いだけではなく、耐久性を求めていきたいですね。皆さんが描く「型」もしっかりと吸収していきたいと思います。

――最後に開発者としての拘りについて教えていただけますでしょうか?

西村 挑戦し続けることだと思っています。例えば軽量化やデザイン性。皆さんが「こんなグラブあったらええな」というニーズに対して、具現化できることを挑戦し続けていきたいと思っております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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