東海大高輪台vs都立文京
クォーターデービット(東海大高輪台)
我慢の守りで本大会進出
代表決定戦2試合目。東海大高輪台対都立文京の試合は最後まで見離せない接戦となった。
都立文京。
シートノックを見て、直ぐに強いチームというのが分かった。ボール回し、内野守備の足の運び、外野守備の打球の追い方、肩の強さは都立高校として高いレベルに達しており、際どいフライに対して、内野手と外野手の連携も良い。高い意識で臨んでいるのが分かった。あとは投手が良ければ、十分に東海大高輪台に対抗出来るチームという印象を受けた。都立文京のエース・大塚は中々の好投手だった。
177センチ78キロと体格的には申し分ない。間近で見ると太ももの太さは並みの高校生に比べて分厚く、土台の良さを持った投手だった。コンパクトなフォームから投じるストレートは常時130キロ中盤を計測していそうで、球威のあるストレートを投げている。
しかし先頭の川内に四球を出してしまった。二死二塁となって4番クォーター・デービットにまわった。
188センチ83キロと恵まれた体格を誇るデービット。東海大高輪台の宮嶌監督によると練習試合から長打を連発するスラッガーで、一塁、投手もこなす器用さがあり、現在はセンターを守って打撃に専念しているようだ。
デービットは2ストライクから外寄りのスライダーを捕え、レフト前ヒット。レフトがファンブルする間に二塁走者が三塁を回ってホームイン。1点を先制する。さらに追加点といきたいが、大塚は尻上がりに調子を上げていく。さらに腕の振りが速くなり、勢いのある直球が決まっていく。力強い腕の振りからキレのあるスライダー、チェンジアップを投げ分け、東海大高輪打線を封じこむ。
大塚(都立文京)
宮嶌監督は大塚が良い投手ということは正捕手の川内から伺っていた。
「正捕手の川内が大塚君と同じシニア(江戸川中央シニア)でしたので、川内が良い投手だから警戒しろよということはナインに伝えていました。それに向けて準備してきましたが、大塚君が回を追うごとに良くなってきましたし、甘い球を投げてこないので、打ち崩せませんでしたね。ただ速いだけではなく、間の取り方も上手いですし、良い投手でした」
予想以上の出来。なんとか追加点を取りたいけど、厳しいコースに来て打てない。そういう焦りがネット裏から感じられ、東海大高輪打線はなかなか打ち崩すことができなかった。
なんとかナインは大塚の好投に応えたい。4回裏、二死から3番高橋の四球で二死一塁。そしてボークで二死二塁となって、大塚が打席に立った。大塚は高めのスライダーを捕えて左中間を破る二塁打。自身の二塁打で、同点に追い付き、試合を振り出しに戻した。
6回表、1番川内がストレートを振りきってライト前ヒット。まさに執念の安打ともいっていい。2番信保の犠打で一死二塁となって3番蓼沼のセンター前ヒットで、一死一、三塁で4番デービットに回った。大塚は冷静だった。スライダー、ストレートと攻め続け、2ストライク1ボールからストレートでねじ伏せファーストファウルフライ。二死一、三塁。デービットを打ち取ったことで気が抜けてしまったのか。5番熊谷に甘く入った直球を捕えられライト前ヒット。2対1と勝ち越す。
1点差と気が抜けない状況だったが、昨年から主戦の佐藤 洋叡が冷静だった。昨年より直球の勢いは出てきて、何より縦の変化球を有効的に使えるようになった。以前はスライダー中心の配球だったが、縦スライダー、カーブ、チェンジアップを使い分け、都立文京打線を抑え込む。好投する佐藤を支えたのはバックの守備だ。何よりも球際に強く、ミスをしなかったのが大きい。
大塚もスイッチを入れ、球威のある直球で、追加点を許さず9回裏へ。まず同点に追い付きたい都立文京であったが、あっさりと二死。しかし代打・金井が四球で出塁。さらに代打・佐藤のセカンドゴロをトンネル。ここまで堅い守りを見せていた東海大高輪の守備陣にほころびが見え、同点のピンチとなった。東海大高輪ナインは一度マウンドに集まり、気持ちを落ち着かせる。
8番高橋が打席に立った。高橋は初球を打ったが、サード正面のライナー。東海大高輪台が本大会出場を果たした。
佐藤(東海大高輪台)
宮嶌監督は「今日は硬かったですね。いつもならばノビノビとした心境で、思い切りのよい野球をやってくれるのですが、硬かったです」
ナインに硬さが見られ、本来の打撃が出来なかったと説明した。しかし苦しい試合展開でも、タイムリーエラーをせず守り勝ちしたのは大きかったのでは?という問いに対しては
「そうですね。今日は良く守ることができましたけど、9回にミスが出てしまったので、まだまだですね。背番号と守備位置が一緒じゃない選手が多いじゃないですか。この夏、いろいろと守備位置を変えましたけど、まだ固定できていないんですよね。本大会に向けて守備の精度を上げていかないと勝てないと思っています」
確かに4番のデービットが背番号5なのにセンター。6番平尾も背番号4でショート。守り勝つチームを信条とする宮嶌監督にとって今のチームはまだ守れるチームというラインに達していないと感じられた。
「大事なところでミスをせず、しっかりと守り、小さなチャンスをモノに出来るチームにしていきたいと思います」
今後の抱負を語ってくれた。秋では打撃よりも守備型チームが有利なだけに本大会へ向けてさらに守備を仕上げていけるか注目していきたい。
都立文京は紙一重だった。エース大塚は安定感のある好投手で、守備も手堅く、安定感のあるチームだった。ただ強豪私学に勝つにはここ一番で打てる、守れる、抑えられる勝負強さが必要なのであろう。それでも来年の成長が楽しみなチームの一つに入った。この冬の練習で、一皮むけることができれば、今年の都立小山台、都立日野、都立片倉のように旋風を巻き起こす存在になるかもしれない。
(文=河嶋宗一)