試合レポート

平塚学園vs横浜

2012.09.22

平塚学園、創部初めて横浜を破る

 前日の向上戦で、4人のピッチャーをつぎ込み8対7で何とか逃げ切った横浜高校。伝統的にバッテリーを中心とした守りの野球で勝ち進んでいくが、今年はピッチャーに不安を抱えていた。その不安が、この平塚学園戦で出てしまった。

 先発は背番号1を着けた浅間大基。1年春から外野のレギュラーを取り、夏は1番センターで出場していた。新宿シニア時代はピッチャーとしても名をはせており、投打両面でポテンシャルの高い選手である。
両チーム無得点で迎えた3回裏、思わぬ形で試合は動いた。浅間が先頭の宮䑓正椰にストレートのフォアボールを与えると、続く松本琳太郎の送りバントを一塁へ悪送球し、無死一、三塁と自らピンチを広げた。
ファースト側のバントだったため、浅間と一塁ベースの距離が近い状況でのミスだった。じつは浅間は地区大会でも同じような悪送球をしていて、近い距離での送球に不安があった。

 浅間は1番・角井将治にノースリーからフォアボールを与えると、2番・蛭田堅斗にはカウントを取りにいったストレートを狙われ、レフト前へのタイムリー。これをレフトの小林章太が判断を誤り後逸し、走者三人が一気に生還。打者走者も三塁まで到達した。
さらに、大谷楓にフォアボールを与えたところで、浅間は降板。マウンドに上がったのは同じく1年生の左腕・伊藤将司だった。伊藤はこのあとのピンチを、6番・亀山徹の犠牲フライの1点でしのいだが、結果的にはこの4点目が重くのしかかることになった。


 横浜の反撃は5回。それまで浅間が放った2安打だけに抑えられていた打線が、平塚学園のエース熊谷拓也をとらえた。途中出場の根本耕太がライト前で出塁すると、続く高井大地の初球に渡辺監督は思い切ってエンドランをかけてきた。4点差あるため大事にいきたいところだが、あえて動いた。
高井は期待にこたえセンター前ヒットで、無死一三塁。このあとショートのエラー、新キャプテン・長谷川寛之のタイムリーで2点差に追い上げた。
なおもチャンスは続き、無死一二塁。しかし、2番の川口凌がバントできずにカウント2-2。強攻に切り替えるも、外のシンカーを引っかけてのピッチャーゴロゲッツー。3番・小野遼久は外のボールになるスライダーを振らされて空振り三振に終わった。
 横浜は2回にも無死一二塁のチャンスがあったが、小林が3バント失敗に終わっている。このようなミスがあると、自分たちのリズムに持っていきづらい。

 その後、8回に1点を返すもここまで。3回途中から投げた伊藤が、ストレートとカーブのコンビネーションでよく抑えたが、3回裏の4失点が最後まで響いた。
「すべてはピッチャーです。そこを鍛え上げなければいけない」と渡辺監督。期待していたピッチャーが何人かいたが、夏休みの練習で故障者が続出。「体力的に付いてこられない」と嘆く。夏休みにほとんど投げていなかった浅間と伊藤を使わざるをえないのが現状だった。

 
 平塚学園の熊谷は、今夏ベスト4に入ったチームで2年生エースとして活躍していた。夏よりも腕の位置を上げ、ストレート、スライダーともに角度が出ている。落ち着いたマウンドさばきも光り、終始、冷静に横浜打線を打ち取っていた。
 平塚学園にとって、横浜に勝ったのはこれが初めて。9度目の挑戦での初勝利だった。それでも八木崇文監督は「うれしいですけど、これで終わったわけじゃない。まだ大会は続くので…」とうかれる様子は一切なく、気をひきしめていた。

(文=編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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