常翔学園vs関大一
合言葉は、いつも笑顔で
いつのころからか、大阪は「私学(私立高校)30強の激戦区」と呼ばれるようになった。
どの学校が30強に入るか否かが語られることはないが、それほど大阪には強い私立が点在するということの言い表しである。
「大阪の私学」というだけで、強そうなイメージがするのだが、一風変わった私立があるのも事実だ。
常翔学園―――。
旧校名は大阪工業大学高校。ラグビーの名門校として名をはせた学校である。
野球部も過去にベスト4の実績があり、強いチームの一つだった。
しかし、このチーム、いわゆる“大阪の私立”とは一味違う。
まず、何より、大阪の私学のほとんどがしているような選手の勧誘をしない。
宮下裕治監督は言う。
「基本的にはうちでやりたいという選手と一生懸命やろうという方針です。もちろん、野球だけではだめだし、勉強もしてもらわないといけません。
欠点をとったら、練習に参加できませんし、合宿も連れて行きません。そのなかでやっています」
だからなのか、ちょっと私立っぽくない。勧誘もせず、文武両道。公立のちょっと強いチームに空気が似ている。
宮下監督は続ける。
「2回戦の相手が太成学院大高と分かって、『10回に1回の野球をしようや』ってすごく雰囲気が良く練習をしていました。楽しんでやっていました。でも、その試合に勝ってからは、燃え尽きたみたいで、全然、練習に身が入らなかったんです。昨日の抽選で、次の相手が履正社と分かって、履正社までは行きたい。頑張って履正社戦を楽しもうという感じになって、それで、いい雰囲気になって今日を迎えたんですけどね」
そう、2回戦で太成学院大高を撃破し、今は、勢いに乗っているのだ。
3回戦の対戦相手は選抜大会準優勝経験もある関大一だった。
モチベーションが高く、初回から果敢に攻めていった。
1回、先頭の山岡佑一郎(3年)がレフト前ヒットで出塁すると、犠打で進塁。二死から4番舩本広大(3年)のタイムリー二塁打で1点を先制した。
2回裏には8番東條雅城(2年)がライト前ヒットで出塁すると、犠打で二進の後、1番山岡がセンター前へタイムリー、さらに、岡本真輝(2年)、山田健太郎(2年)の連打で1点を追加した。
4回裏に2点を返されると、6回に代打攻勢で1点を追加。投手を先発の東條から左腕の谷口晃平(3年)にスイッチ。逃げ切りを図った。谷口は1失点したが、9回表にダメ押しの2点を追加、試合をものにした。
つながりのある打線と、継投でしのぎ切る投手陣。個性の強さは感じないが、チーム全体で乗り切っていく。
太成学院大高、関大一を破っての3回戦突破はチームにとっても大きな結果になったはずだ。
二番手として登板した谷口は、はにかみながら、嬉しさを語った
「常に笑って常翔学園!がうちのテーマなんです。今日は、先発の東條が後輩なので、負けてられないなと思ってマウンドに行きました。強い相手なので、勝ってやろうと思いました。履正社戦も頑張りたいと思います」
公立校のような全員野球で挑む常翔学園。彼らの快進撃は果たしていつまで続くだろうか。
(文=氏原英明)