Column

誰も書かなかったイチロー

2012.05.27

 border=

誰も書かなかったイチロー2012年05月21日

 『(ダルビッシュが)帽子を取ったりしたら大したことないと思ったけど、“この内容では”というプライドが見えた』

 ダルビッシュ有(テキサス・レンジャーズ)のメジャー初登板に対するイチロー(シアトル・マリナーズ)のコメントである。

 4月9日メジャーリーグに挑戦した日本を代表する投手であるダルビッシュが初登板を迎えた。ダルビッシュがメジャーリーグで通用するか否かの点において、異論をはさむ評論家はいなかった。

 しかしながら、この初登板、ダルビッシュ投手にとっては、ほろ苦い思い出となってしまった。結果は6回途中、5失点での降板である。

 この結果に対して、様々なコメントが発せられた。ここで印象に残ったのは、ダントツでイチローのコメントであった。



イチロー(シアトル・マリナーズ)

 コメントは、注目してみると面白いもので、その人がいつも関心を持っていることが自然と表れる。つまりコメントから、その選手や監督がどういう思考をしているか、何を基準に判断しているかなどを推測することができる。

 今回のイチローの視線は、ダルビッシュが降板する際に、ファン総立ちの拍手にもかかわらず、手を振ることも帽子を取ることもしなかったことをとらえている。
 ダルビッシュが帽子をとらなかったのが、良かったかどうかはともかくとして、イチローは普段からこういう点、つまり“姿勢”という心の中のコアな点に注目しているのだ。

 解説者の多くは、『まだメジャーリーグのボールになれていない。』『マウンドの傾斜や土が違う。』『メジャー流の調整が・・・』という点に触れていた。確かにそれもあったであろう。

 しかし、イチローの視点は違った。

[page_break:イチローの本当の強さの秘密]

イチローの本当の強さの秘密

スポーツ心理コンサルタント 布施努氏

 例えば、前回のWBC(2009年ワールドベースボールクラシック)終了後にもイチローは次のようにコメントしている。

『日本が勝って最後にいいところで結果が出たということによる自信ではありません。(自分も調子悪かったが)そこに至るまでの自分の在り方に自信を持ったので、これより怖いものはなかなか出てこないでしょう。』

 このコメントには、イチローの本当の強さの秘密が隠れている。

 結果は思うようになかなかいかない。つまりコントロールできない。しかし、そこに至る姿勢は自分で何とかなるとイチローは考えている。

 プレッシャーのかかる緊迫した場面になればなるほど、結果ばかり考えてしまう。結果に心が支配されてしまうのだ。そんな中で、その姿勢であり続ける事は、大変だということはイチロー自身が一番知っている。しかし、意識を姿勢に向けることで結果へのとらわれから解放されるのだ。

 イチローは、その場面におかれた自分を、苦しい事も含め一生懸命に楽しんでしまう姿勢をただひたすら貫こうとしている。
 それが、イチローの心がけた“自分の在り方”だ。そうであればこそ、最後には自分らしい結果がやってきて、それを素直に受け入れられる。

 イチローは、この野球に対峙する-結果がでる-受け入れる-野球に対峙する・・・というサイクルを確立して、まだまだ進化し成長している。

 イチローのバッティングなど、トップアスリートの技術を真似るのはなかなか難しい。しかし、かれらの心のあり方を知り、それに近づくことは誰でもトレーニング次第で可能だ。

 これから、このコラムでスポーツ心理の視点を身につけることによって、ワンランクアップした選手へと成長して行こう。

(文・布施努

このページのトップへ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.07.17

長野8強決定!松商学園、長野日大、東海大諏訪、佐久長聖などが勝ち上がる【2024夏の甲子園】

2024.07.17

【全国注目シード校・成績速報】神奈川では2校が4回戦で姿を消す、大阪、島根ではシードに明暗、昨夏初戦敗退の智辯和歌山はコールド勝ち【2024夏の甲子園】

2024.07.17

【全国ベスト8以上進出校一覧7・16】青森山田と八戸学院光星が8強入りし、準々決勝で対決!山梨、佐賀でも8強名乗り、北北海道では4強が決まる

2024.07.17

元営業マンの監督が率いる大阪学院大高が夏初戦、春初優勝の勢いを夏にぶつける!17日大阪大会【2024夏の甲子園】

2024.07.17

シード国士舘が過去5戦全敗の強敵・ノーシードの日大三に挑む!17日西東京大会【2024夏の甲子園】

2024.07.14

甲子園通算19度出場・享栄が初戦敗退 1点差でまさかの敗戦【2024夏の甲子園】

2024.07.13

四国の夏を盛り上げる逸材20名! 全国注目の四国BIG3から「東大野球部か医者か」の秀才、名門・池田の小さな大エースまで【逸材選手リスト】

2024.07.15

ノーシード・二松学舎大附が2戦連続で延長戦を制す【2024夏の甲子園】

2024.07.13

モイセエフ擁する豊川、初の夏の甲子園へ戦力向上中! カギは超高校級スラッガーの前、投手陣は急成長 センバツの雪辱をはたすか!?【注目チーム紹介】

2024.07.15

プロ注目153キロ右腕が3回戦で姿消す 好リリーフ見せるもあと1点及ばず【2024夏の甲子園・兵庫】

2024.07.08

令和の高校野球の象徴?!SJBで都立江戸川は東東京大会の上位進出を狙う

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.06.23

大阪桐蔭が名門・日体大に1勝1分け! スター選手たちが快投・豪快弾・猛打賞! スーパー1年生もスタメン出場 【交流試合】

2024.06.23

プロ注目の大阪桐蔭・徳丸が大学生相手に決勝アーチ!直近3週間5本塁打と量産態勢!2年ぶり夏甲子園へ強打者の勢い止まらず!

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」