Column

目のトラブルに注意しよう

2012.05.15

グランドの土ぼこりが目に入ったらすぐに洗おう

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

今回は野球の技術にも大きく影響する目のトラブルについて考えてみたいと思います。視力が良い状態であればいいのですが、視力があまり良くない場合は、コンタクトレンズなどを使用してプレーすることが多いのではないでしょうか。コンタクトレンズは適切に使用しないと、視力を矯正するどころか目のトラブル・病気などを引き起こすリスクのあるものです。スポーツ現場においてもさまざまな相談を受けてきましたが、その中でも皆さんにぜひ理解してもらいたいことを中心に解説したいと思います。

●コンタクトレンズによる目のトラブル
視力矯正が必要な選手が使用しているものはソフトレンズ、その中でも特に使い捨てタイプのものが主流です。ハードレンズですと、グランドの土埃が舞うだけで異物が目に入り、痛くて目を開けることが出来ません。使い捨てレンズに関しても異物が入ると違和感を感じますが、ハードレンズほど痛みを伴わないため、比較的使いやすいと考えられます。また使用前後のケアに関しても簡単にすませられるところがメリットとしてあげられます。一方で決められた期限を過ぎても使用する等、適切な使用法を守らないケースもあり、これをそのまま使用していると目のトラブルの原因ともなります。ごくごく一般的なことですが、ワンデータイプであれば1日装着後は交換する、ツーウィークタイプであれば2週間を超えて装着しないといった使用法を守ることが大切です。

このような使用法を守っていても長時間続けてコンタクトレンズを装着していると、目のトラブルを引き起こすことがあります。目の角膜に十分に酸素が行き渡らない状態が長く続くと、角膜の細胞に影響を及ぼし、目の充血、痛み、異物感、目が渇く、涙が止まらないといった症状がみられることがあります。またレンズのキズや汚れが原因で角膜にキズをつけてしまったり、目の炎症を引き起こしたりすることもあります。視界がまっ白になってしまい、かすんでモノがぼやける状態になった選手を連れて、あわてて眼科を受診したところ、コンタクトレンズのトラブルによる角膜炎であったこともあります。

コンタクトレンズは視力の悪い選手にとっては必要不可欠なものですが、使い方や適切なケアを怠ると目のトラブルにつながってしまいます。長時間の装着をする場合は酸素透過性の高いレンズを選ぶ、レンズを触るときはキチンと手を洗って清潔な状態を保つ、決められた使用法を守る、といった日頃から目やコンタクトレンズに対する意識を高めておく必要があります。


目の外傷はイレギュラーバウンドによっても起こる

●目の異物感とものもらい
こちらもよくある相談なのですが、「まぶたの裏や目の奥がコロコロする、かゆい、痛い」といったもの。いわゆる「ものもらい」と言われるものですが、一般的なものは麦粒腫(ばくりゅうしゅ)といって、まぶたの分泌腺に雑菌などが繁殖し、化膿したものです。目をこすったり、汗が目に入ったりと目の周辺部が不衛生になってしまうことが原因と言われています。これから汗をかく季節にあたり特に気をつけたいですよね。このような症状が見られた場合は、抗菌剤の点眼薬や軟膏などを処方してもらうよう、すみやかに眼科医もしくは薬剤師に相談するようにしましょう。

適切な治療を行うと数日でかゆみや痛みが軽減し、まぶたの腫れも徐々にひいていきます。こうした症状がある間はコンタクトレンズの使用を控え、タオル等も他人と共有しないようにしましょう。清潔に保つということももちろんですが、他人に感染するのを防ぐためでもあります。入浴もなるべく目に汚れなどが入らないように注意します。

●目のスポーツ外傷
野球という競技特性を考えると、目への突発的なケガについても考慮しておく必要があります。ライナー、イレギュラーバウンド、デッドボール、自打球などによる直接的な目への打撃から、スライディングなどによる接触プレーでのケガ、グランドの土埃、石灰などが目に入ったというケースまでさまざまあります。目のスポーツ外傷はほとんどが突然の外力によるものであり、事故を防ぐための予防策を講じること、目そのものを守ることに重点をおいて対応する必要があります。

突然の外力により、目に強い衝撃があった場合は目の異常(出血や腫れ、強い痛み、視力の低下など)を確認し、氷などで患部を冷やしながらすみやかに眼科医を受診するようにします。氷などをあまり強く目に当てて押さえつけると、視界がぼやけてしまったり、さらに見えにくくなったりということが起こりますので、軽く当てる程度にすることが望ましいです。また目や鼻の周辺部は小さな骨がたくさんあり、少しの外力でも骨折してしまうことがあります。大丈夫かなと思っても、時間がたつにつれて症状が悪化することがありますので、様子がおかしいなと思ったらすぐに眼科医を受診するようにしましょう。石灰や砂が入ったときは水道水でよく洗い流し、眼をこすらないようにして安静にします。

目はプレーをする上でも情報をキャッチする重要な器官です。目のトラブルには細心の注意を払い、おかしいなと思ったら適切な対応を行いながら医療機関を受診するようにしましょう。

【目のトラブルに注意しよう】
●コンタクトレンズを使用する選手はレンズの取り扱いに注意すること
●コンタクトレンズは使用期間を守り、清潔な手で装着すること
●角膜の炎症症状 → 目の充血、痛み、異物感、目が渇く、涙が止まらない等
●ものもらいには抗菌剤の点眼薬、軟膏等を眼科医・薬剤師等に処方してもらう
●目の外傷を引き起こすリスク = ライナー、イレギュラーバウンド、デッドボール、自打球等
●アイシングを目に対して行うときは、ぎゅっと押しつけないで軽く当てる程度にする

(文=西村 典子

次回、第45回公開は05月30日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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