試合レポート

都立片倉vs都立文京

2012.04.06

都立片倉vs都立文京 | 高校野球ドットコム 

都立片倉・金井貴之投手

秘密兵器が上々のデビュー

 昨秋2回戦の再戦となった都立の実力校同士の戦い。昨秋は同じ[stadium]江戸川区球場[/stadium]で、都立文京5対0で勝利を収めている。
 ネット裏には4~5球団のスカウトが顔をそろえていた。お目当ては、都立片倉のエース金井貴之だ。「最速145キロ」とのウワサの本格派右腕。ウワサと書いたのは、この春が公式戦デビューだったからだ。
 1年秋までは神奈川県の私立高校でプレーしていたが、事情があって退部。2年春から、片倉に転校した。1年間は公式戦に出られない規定があるため、昨秋の文京戦はスタンドから声援を送っていた。
 初回、金井はストレートで勝負を挑んだ。投じた11球はすべてストレート。スカウト陣のスピードガンでは最速142キロを記録。ヒット1本打たれたが、2つの空振り三振を奪い、笑顔でベンチに戻ってきた。
 文京のエース古枝真之介も負けてはいない。こちらは縦の緩いカーブ、スライダー、落ちる変化球を駆使する対照的なピッチングで三者凡退。
 初回を見る限り、ロースコアの接戦が予想された。
 

 金井は余裕がでてきた3回からカーブ、スライダーを使い始めた。2回までストレートで4三振を奪ったが、3回から6回までの三振は一つ。打たせて取るピッチングにチェンジした。
 文京の古枝は、5回まで4安打を浴びるも、要所を締めて無失点。5回裏には1死満塁のピンチを招くが、9番・峯尾竜二をカウント3ボール1ストライクから得意のカーブで打ち取り、二死満塁。1番・鳥巣裕太もサードフライに仕留め、この試合初めてのピンチを脱した。


都立片倉vs都立文京 | 高校野球ドットコム 

都立文京・古枝真之介投手

 ゼロ行進の試合が動いたのが6回裏。
 片倉の先頭、2番・今岡謙がレフト前ヒットで出塁すると、3番にはキャプテンの小林章。金井とは日野シニア時代からのチームメイトで、「また、片倉で一緒にやろうぜ」と誘ったのが小林だ。
 小林は、「連打を打てるとしたら、いまのうちでは小林しかいない」という宮本秀樹監督の期待に応え、ライト前ヒット。無死一、二塁とチャンスを広げた。このあと、今井雄太の送りバントが、文京のファースト小野澤貴仁の好守にあい、三塁封殺。チャンスはついえたと思われたが、5番・小田嶋冶真人が一、二塁間をしぶとく破り、二塁ランナーの小林が生還した。
 小田嶋は金井が来るまではエースを務めていた左腕だ。「いまは小田嶋も調子が良い。先発させるかどうかは、迷った」と宮本監督が話していたが、この日はバットでチームに貢献した。
 さらに、片倉は6番・長谷川太良がライト前にポトリと落ちるヒットで続き、さらに加点。2対0とリードを奪った。

 金井は7回以降も安定していた。緩いカーブでうまくカウントを取り、ストレート狙いのバッターを戸惑わせた。
 9回に、文京の4番・宮本隼佑にレフトオーバーの2ベース、さらに代打・鈴木達朗に内野安打を浴び1点を失うが、最後は知久勤をアウトコースのストレートで空振り三振。その1球前に緩いカーブでファウルを打たせたあとのストレートだけに、バッターにとってはより速く見えたであろう。
 「クジが決まってからこの試合のことだけを考えていました」と片倉の宮本監督。秋に戦ったときも[stadium]江戸川区球場[/stadium]。しかも時間こそ違うが、今回と同じ第2試合だった。
 同じ結果にならないように、駅から球場までの道を変えたり、違うお店でコーヒーを飲んだり、「いろんなことをしましたよ」と笑う。
 公式戦初登板の金井は「緊張はなかった。すごく楽しく投げられました」と笑顔。右手にはウイニングボールがあった。
 「片倉に来て、楽しく野球ができています。章(小林)が声をかけてくれたおかげです」
日野シニアでは、西東京の選抜チームにも選ばれている。そこで一緒だったのが、現・日大鶴ヶ丘のエース大高光だ。大高と投げ勝つのが、高校でのひとつの目標という。
 「一番の武器はストレート。澤村(拓一)投手(現・巨人)のようにストレートで打ち取れるピッチャーになりたいです」。
 大器が上々のデビューを果たした。

(文=大利実)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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