試合レポート

立教池袋vs早大学院

2012.04.03

立教池袋vs早大学院 | 高校野球ドットコム 

エース・西野貴之(立教池袋)

立教池袋、投手戦を制す

立教池袋早大学院の「東京六大学対決」は、ロースコアの投手戦となった。

立教池袋の先発は昨夏2年生エースとして、チームの4回戦進出に貢献した西野貴之。高めに伸びるストレートと変化球のコンビネーションで攻めるのが得意パターンだ。
早大学院は背番号10の若松俊樹。「技巧派」という表現がぴたりと合う、変化球が主体の左腕である。

2回、早々と先制したのは立教池袋。先頭の4番・星野孝輔が、早大学院のショート藤岡知也のエラーで出塁すると、西野がバントで送り、高柴秀がレフト前ヒットで一、三塁。そして、7番・竹下知輝がカウントノーワンからスクイズを見事に決めて、1点を挙げた。
早大学院・木田茂監督は試合前から、「うちは守備が不安で…」と漏らしていた。その守備のミスがいきなり失点につながった。


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若林(早大学院)

 一方、立教池袋・古賀賢之監督は「うちはそんなに打てませんからね。あそこはスクイズと決めていました」とにんまり。
この1点が早大学院には重くのしかかる展開となった。

試合は立教池袋が1対0とリードしたまま、7回まで進んだ。
先発の西野は7回終了時まで、被安打わずかに4。そのうち3本はライトの前にポトリと落ちるポテンヒット。会心の当たりは、初回に3番・若林滉が放ったライトオーバーの三塁打だけだった。

威力を発揮していたのが高めのストレートだ。追い込んでから、キャッチャー星野が中腰に構え、釣り球を要求する場面が何度かあった。それに手を出してしまう早大学院の打線。「打線には自信があったので、打てると思って振りにいっていましたね…」と、木田監督。

試合中、高めの見極めを指示したそうだが、バッティングに自信があったこともあり、積極的に振りにいっていた。その結果、外野までいい角度の飛球を放つも、外野オーバーにまでいたらず。

とにかく、立教池袋の外野が深い。クリーンアップに対しては、フェンス近くにまで下がるほど。「後ろだけは抜かれないように。前には打球が落ちてもいいから、という指示でした」と、立教池袋・古賀監督がその狙いを明かしてくれた。

8回表、早大学院は無死二塁のピンチを迎えると、エースの田中健吾を投入。直前の練習試合で足を痛め、この日はマウンドに上がらない予定だった。それが急遽、登板。本調子でない田中はその後、2アウト満塁のピンチを招くも、西野を空振り三振に打ち取った。
「田中まで投入して、負けるわけにはいかないぞ!」と、8回裏を迎える前に檄を飛ばした早大学院・木田監督。あえて、はっぱをかけたが、8回、9回とチャンスすら作れずに三者凡退。
立教池袋が1対0で逃げ切り、2回戦進出を決めた。


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勝利を掴んだ立教池袋ナイン

 立教池袋は2000年に新設された高校である。それまでは立教中(2000年から立教池袋中に改称)しかなかったが、2000年から中高一貫校として新たなスタートを切った。
基本的に90パーセント以上の生徒が、立教池袋中の出身だ。高校入試の合格枠は「若干名」。今日のスタメンで見ると、2番ショートの柿澤健太、4番の星野、6番の高柴が外部入学組である。星野はこの日、早大学院の2つともに刺し、西野を助けた。
そのほかの選手は立教池袋中からともに戦ってきた選手。「チームワークは抜群です」と、完投した西野が笑顔で話す。
この西野は立教小の出身だ。3番の野尻修平も小学校から立教で、「立教歴」は10年近くになる。

中高一貫のメリットに、中学3年夏の部活動が終わったあとに、高校と一緒に練習できることがある。
「ほかの高校よりも早く、中学3年生が体を動かせるのは大きい。中学の指導者も頑張っていますし、中高一貫で上を目指していきたいです」(古賀監督)

つい先日行われた中学軟式野球の「下町杯」では、立教池袋中が全国大会常連の修徳中に勝利。古賀監督は1999年まで立教中の監督を務めており、修徳中の強さも知っている。「この間、修徳中に勝ったんだってね」と嬉しさ半分、驚き半分の表情で話していた。

近年、早稲田実、慶応義塾など、甲子園を沸かす「東京六大学」の高校が増えている。そんな話を西野に振ると、「立教が負けているとは思っていません」とはっきりと言った。
春、夏の東東京に「立教池袋」旋風を巻き起こすことはできるか。今後の戦いぶりに期待だ。

(文=大利実)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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