済々黌vsルーテル学院
左越えのサヨナラ打を放った背番号12の安藤(済々)
元チームメイトだという“絆”
息詰まる投手戦に終止符を打ったのは、お互いを知り尽くした元女房役だった。
延長12回裏、2死二、三塁。代打に送られた背番号12の安藤太一(2年)が、インコース低めのストレートを振り抜くと打球はレフトの頭上を越え、三塁走者の西口貴大がサヨナラのホームイン。済々黌が第1シード・ルーテル学院を破り、ベスト8一番乗りを決めた瞬間だった。
試合後、安藤は「あいつだけには負けたくなかったので、いつでも打席に立てるように準備をしていました」と興奮冷めやらない様子。
そう、安藤の発する“あいつ”とは、ルーテル学院の先発・平島啓大(2年)である。安藤と平島は、小学、中学ともに白球を追った元チームメイト。さらに進学した高校が隣同士だけに一緒に通うこともあるという、まさに幼馴染。もっというと済々黌の先発・大竹耕太郎(2年)も同じ中学の出身である。
彼らは、熊本市立託麻中学時代に野球部(軟式)に所属していた。中学3年の夏には、全中(第32回全国中学校軟式野球大会)に出場するなど、県内でも名を馳せていた存在だった。当時の打順は3番・平島、4番・大竹、5番・安藤と三人がクリーンアップを形成。そして、当時も捕手の経験のある安藤は、ともにサウスポーの大竹と平島を受けていた元バッテリーでもある。
そんな彼らのことを済々黌の池田満頼監督に問うと「大竹もいつもより力が入っていたように思います」とベンチ内でも、いい意味でいつもと違う何かが漂っていたようだ。
試合後、それぞれ12回を投げ抜いた両左腕は、ともに大粒の涙を流していた。「負けたくなかった」という安藤の言葉に表されているように元チームメイトである彼らの胸中には、いろんな思いが交錯したことだろう。
勝負の結果こそ分けたが、その前後に横たわるライバル心。これも、元チームメイトだという“絆”ではないだろうか。
(文=編集部)