Column

オーバートレーニング症候群について

2012.01.15

皆さん、あけましておめでとうございます。アスレティックトレーナーの西村典子です。

2010年から始めた「セルフコンディショニングのススメ」も早いもので3年目に突入いたします。今年も野球選手にとって役に立つ情報、話題などをお伝えできればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

さて2012年最初のコラムはオフシーズンの練習の中で、自覚のないままおちいりやすいオーバートレーニング症候群(慢性疲労症候群)とその予防などについてお話をしたいと思います。

ボールを使った練習を行っているチームもあると思いますが、寒い時期は思うように野球の技術練習ができないことも多いものです。トレーニングやランニング中心の基礎体力作りの練習は、量をこなすことやタイム設定などによる体力的なストレスによって通常練習よりもオーバーワークになりやすく、この状態がしばらく続くといくら休んでも身体が疲れているといったことが起こります。この状態はオーバートレーニング症候群と呼ばれ、合宿時や新入生が新チームに合流するといった環境の変化や、単調な練習の繰り返しによるストレスなどによっても引き起こされることがあります。

オーバートレーニング症候群を引き起こす原因はいろいろと考えられます。

・能力以上の過大なトレーニング負荷
・急激なトレーニング負荷の増大
・過密な試合や練習スケジュール
・休養不足、睡眠不足
・栄養やエネルギー不足
・競技以外での日常生活における過剰なストレス
・風邪などの内科的疾患の回復時における不適切なトレーニング

オーバートレーニング症候群の特徴としては、疲れやすい、全身倦怠感、不眠などの睡眠障害、食欲不振、体重減少、集中力の欠如などがみられます。また症状が進行するとうつ病に類似した兆候がみられることがあります。これらの傾向がみられる場合には、原因と思われる要因を取り除く一方で、疲労を軽減させるために栄養面・休養面・コンディショニング面からさまざまなアプローチを行う必要があります。


正しい脈の取り方

「トレーニングやランニングの記録が良くない、伸びない」
「睡眠を十分にとっているのに、朝起きると身体がだるい」
「早朝の脈拍が普段に比べて早い」
「運動すればするほど体重が減る」

といったことがみられる場合は、トレーニングやランニングの頻度を落としたり、負荷を軽くしたりするなどして、体調の回復に努めるようにしましょう。練習を休むことに抵抗を覚える選手もいると思いますが、オーバートレーニングの症状をそのままにして悪化させてしまうと、回復にも時間がかかってしまうことになります。

栄養面においてはバランスのいい食事を取るようにすること(特にビタミンB群、ビタミンC等)を心がけること、休養面では疲労回復のための入浴(第14回コラム参照)やストレッチ等、身体に負担のない範囲で血流をよくすることなどを意識すると良いでしょう。

またオーバートレーニング症候群と間違えやすいものに風邪や貧血、うつ病などがあります。症状によっては見分けがつかないものもありますので、体調がよくないと感じる場合は早めに医療機関を受診するようにしましょう。

オーバートレーニング症候群は日頃のセルフチェックで早期発見が可能です。特に起床時の心拍数が増大するといわれているため、起床時には心拍数をチェックする習慣をつけるとよいでしょう。測定を行う指は人差し指と中指の2本を使って親指側の動脈にあてて行います。強く押しすぎると反射で脈が落ちてしまうので注意しましょう。その他には体重の減少、食欲低下、以前には楽にこなせた練習がきつく感じるなどの自覚症状などもみられるようになります。また性格的に几帳面であったり、完璧主義を求める傾向の強い選手はオーバートレーニングになりやすいと言われていますので、ストレスなどをうまく発散しながら過ごすことも大切です。

ハードな練習をこなすことは大切ですが、疲労が抜けない状態で続けるとケガや体調不良、ひいてはオーバートレーニング症候群におちいってしまうことがあります。適切な休養・栄養をとりながら、野球が上達するための練習を続けていくようにしてくださいね。

【オーバートレーニング症候群におちいらないために】
・疲労が抜けない状態で練習を続けるとオーバートレーニング症候群を引き起こすことがある
・起床時の脈拍増大、体重減少、食欲不振、不眠などはオーバートレーニング症候群の予兆
・普段の練習量や内容が単調になっていないか、負荷は適切か等を確認する
・起床時の心拍数を測定することはオーバートレーニング症候群の早期発見につながる
・練習などでの体力的・精神的な疲労を取り除く工夫を行うこと

(文=西村 典子

次回、第37回公開は01月30日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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