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肉体改造増量プログラム/サプリメント編

2011.11.25

殖栗正登のベースボールトレーニング&リコンディショニング

第46回 肉体改造増量プログラム/栄養編2011年11月25日


まもなくオフシーズン到来!体重増量のために必要な知識とトレーニング方法を動画で解説!!

 こんにちは。(有)ベースボールトレーナーズの殖栗です。前回から体の増量方法について解説しています。今回は栄養編に続いてサプリメント編。いろんなサプリメントがスポーツ用品店に並んでいますが、どれをどのくらい、どのタイミングで摂ればよいのでしょうか?増量のための必要知識を含めて、詳しく解説していきます。

※一部動画はHD画質にてアップしております。動画下部[CC]の右隣の数値から1080pをお選びください。

殖栗正登のイップス克服プログラム


ビタミンの摂り方

私たちは生きるために必要な栄養素を食物から得ています。特に「三大栄養素」のたんぱく質、炭水化物、脂質は身体を動かすエネルギーになり、身体そのものになります。しかし、これらの物質が円滑に働くには、酵素が必要です。この数千もの酵素の化学反応を起こす触媒がビタミンです。スポーツ選手のビタミン所要量は一般成人男性の2倍は必要です。

■スポーツ選手のビタミン摂取量の目安

ビタミンA:5000IU
ビタミンB1:1.5mg
ビタミンB6:2.0mg
ナイアシン:20mg
パントテン酸:10mg
ビオチン:100μg
葉酸:200μg
ビタミンB12:2.0μg
ビタミンC:60mg
ビタミンD:400IU
ビタミンK:70μg
ビタミンE:10mg

1:ビタミンA

脂溶性(水に溶けにくく油(脂)に溶けやすい)のビタミンで、視覚機能や皮膚、粘膜の維持に使われます。レバーやうなぎ、にんじん、卵、ほうれん草などに多く含まれます。

2:ビタミンD

脂溶性ビタミンで、カルシウムとリンの吸収を高める。鮭、レバーなどに含まれます。

3:ビタミンE

活性酸素を抑えて細胞を守る、血管を拡張する、クレアチンを保持する、炎症を起こすホルモン性物質のロイコトリエンを抑えるなどの働きがあります。スポーツ選手であれば300μgとっても良いという資料も出ています。この物質は食事からは摂りにくいです。

4:ビタミンB群

4-1:ビタミンB1

アスリートには大切で、炭水化物をエネルギーに変える時に使います。

4-2:ビタミンB2

脂肪をエネルギーに変える時に使います。食事から摂りにくいのが特徴です。

4-3:ナイアシン

炭水化物、脂質をエネルギーに変え、血管拡張作用もあり、疲労回復に役立ちます。

4-4:パントテン酸

炭水化物、脂質の変換、BCAAの代謝、副腎の保護作用があり、疲労回復作用も。

4-5:ビタミンB6

たんぱく質の消化吸収に必要です。また、グリコーゲンとして炭水化物を蓄積する時にも使われます。

4-6:ビタミンB12

酸素運搬のヘモグロビンを作るのに不可欠です。また、核酸とたんぱく質の合成にも使われます。


4-7:ビタミンC

最も大切なビタミンです。アスリートなら1日1g、風邪の時は3gとっても大丈夫です。水溶性なので何度かに分けてとるのがポイントです。この物質は次のような働きがあります。

◎コラーゲンの合成

コラーゲンの3本の鎖というアミノ酸のアミ構造を作る

◎免疫増強

インターフェロン(動物体内で病原体(特にウイルス)や腫瘍細胞などの異物の侵入に反応して細胞が分泌する蛋白質のこと)の生成と促し、免疫をあげる

◎鉄分の吸収

食事から摂取した鉄分を、三価鉄という不溶性ものから二価鉄という吸収しやすい形にして、腸からの吸収を助ける。

◎抗酸化作用

活性酸素の炎症を防ぐ

◎抗ストレス

トレーニングには副腎ホルモンが多く出ますので、かなり負担がかかります。この物質はコルチゾールやカテコールアミンなど、ストレスを軽減する物質の生成に関わっています。

以上、ビタミンCは1つで多くの働きをします。そしてビタミンKもありますが、アスリートにとって特に大切なのは、「ビタミンB、C、E」です。これらの栄養素を摂るには、

◎ビタミンB
B1…玄米、豚肉、納豆、牛乳
B2…チーズ、サバ
ナイアシン…青魚、あさり、レバー
B6…鶏肉、さつまいも、バナナ、納豆、アーモンド
B12…レバー、牡蠣、サンマ、はまぐり

◎ビタミンC:オレンジ、レモン、ブロッコリー、キャベツ

◎ビタミンE:小麦胚芽、ほうれん草、植物油、アーモンド、うなぎ<

などを食べるようにしましょう。ビタミンB、Cは水溶性、ビタミンEは脂溶性ですが、胆汁にまじり排出されるので多くとっても大丈夫です。

ミネラルの摂り方

ミネラルは体の構成物質そのものなので、とても大切です。

◎マグネシウム

マグネシウムは大切な物質です。筋肉が収縮する時、Ca+が細胞内に入って筋が収縮するのですが、この作用(カルシウムポンプと言います)が働くのにマグネシウムが必要になります。筋を弛緩させるのに大切なミネラルなのです。このリラックス効果で睡眠を深くしたり、ビタミンB1の活性や心臓機能の維持にも働きます。1日300mgは摂りたいものです。バナナ、葉野菜、ナッツ類を摂り、サプリメントで補いましょう。

◎亜鉛

アスリートにとって大事な2つの作用があります。

1:成長ホルモン、テストステロン、インスリンなど、筋肉の発達のポイントになるホルモンを作るのに必要
2:筋肉が再合成がされる時、細胞分裂が起きる。その時の酵素ジンクフィンガーの材料になる。

亜鉛もサプリメントで補強したいところです。

アミノ酸について

アミノ酸とは、たんぱく質を作るもので20種類あります。この組み合わせで筋になったり、歯や骨になったりします。20種類の必須アミノ酸は体内で作れないので、食事から摂ります。摂りたいアミノ酸は、1:トリプトファン、2:ロイシン、3:バリン、4:イソロイシン、5:リジン、6:スレオニン、7:フェニルアラニン、8:メチオニンです。特に筋肉づくりに必要なのはBCAAです。

◎BCAA

BCAAはバリン、ロイシン、イソロイシンからなり、次のような作用があります。

1:たんぱく質合成を高める
2:覚醒作用

長時間トレーニングするとセロトニンが出てきますが、これは思考を穏やかにしてしまい多く出ると疲労感を感じます。セロトニンはトリプトファンから作られますが、そこでこのBCAAはトリプトファンを脳内に入るのを防ぐ効果があります。

3:スタミナアップ

BCAAはエネルギー源にもなってくれます。

このようにBCAAはトレーニングをハードにできて、筋たんぱくの合成を高め、新糖性を防ぐ作用を持っています。摂取の方法としては、

・トレーニング30分前に5-10g
・トレーニング中に5g

摂りましょう。


グルタミンについて

グルタミンは非必須アミノ酸ですが、トレーニングをしている選手には必要です。なぜかというと、筋肉の中の遊離アミノ酸(新しいタンパク質を作る為に体内にあるアミノ酸。 いわば体内のアミノ酸のストック)の60%はグルタミンだからです。

1:免疫力向上

免疫細胞にエネルギーを与えます。ハードにトレーニングするとストレスが体にかかり、免疫が落ちます。きちんと摂取すれば、これを防ぐこともできます。

2:インスリンの働きを高める

トレーニング後、インスリンを分泌して、筋にたんぱく質や糖質を多く入れ、筋の再合成や筋グリコーゲンの回復を早めるのに作用します。

3:成長ホルモンの分泌向上

4:胃の粘膜を強くする

5:筋のアナボリック※を高める

6:筋肉の維持

ストレスによるたんぱく質同化の時にもしグルタミンが不足していたら、筋のグルタミンを使うため筋が分解されてしまいます。せっかくトレーニングしても意味がなくなってしまいます。これを防ぐためにもグルタミンは必要と言えるでしょう。摂取の方法としては、

・トレーニング後に5-10g

摂りましょう。


アルギニン

アルギニンは身体で「一酸化炭素」を出します。そして、血管を拡張して血行を良くする作用があり、成長ホルモンをだしたりグリコーゲンをためたりする効果があります。摂取の方法としては、

・トレーニング前後に3gずつ

摂りましょう。

クレアチンについて

サプリメントは、基本的に足りないものを補うために使いますが、スポーツのパフォーマンスを100%から120%にあげるために摂るものもあります。その代表がクレアチンです。
クレアチンは体内アミノ酸から自然に出てきますが、人間の体には120gほど、ほとんど筋肉にあります。クレアチンは筋でリン酸と結びつき「クレアチン酸」となります。これが筋の収縮の無酸素運動(30秒以内の激しい運動)の時のATPの再合成で使われます。その他にも

・無酸素運動の回復が早まり、スタミナアップ
・ATPのスムーズな回復で、パワーアップ
・筋細胞に水分お引き込み、筋肥大をおこす。筋は水分を含むと筋肥大を起こしやすい。

といった作用があります。摂取の方法としては

・試合前に速攻で効果を出す時は、1日に除脂肪体重1kg×0.35を1日5回に分けて飲み、これを三日間続けてローディング。あとは毎日3gずつとりましょう。ゆっくり効果を出したい時は、5gずつを毎日とって1ヶ月でローディング。あとは3gずつで良いでしょう。


体を大きくするためのキーワード「アナボリック」

筋肉を大きくしていくためには、簡単に言えば、細胞が大きくなる「アナボリック」状態を作るということで、これは栄養素をどんどん細胞に取り込み、筋を大きくすることになります。

アナボリックステロイドという言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、これは栄養素を筋肉細胞の中に強力に取り込ませる薬です。

よくダイエットで筋肉をつけながら(アナボリック状態)、脂肪を落とす(カタボリック)というものがありますが、理論的にはとても難しい行為です。なので増量の時は、体脂肪は気にせずどんどん食べて、アナボリック状態を作ることが一番大切です。

増量とは、簡単に言えば、「体をアナボリックな状態にする」ということ。体にたんぱく質が増えればCHONSのタンパクのNの窒素が増えるので、アナボリックな状態になります。ある実験によると、摂取カロリーを30%増やすとNは4.5倍になります。しかし、この実験はたんぱく質はとっていません。増やしたのは炭水化物です。なのになぜNが増えたのでしょうか。

答えはインスリンです。炭水化物を多くとるとインスリンが出ます。するとたんぱく質も一緒に細胞の中に運ばれるのです。そこでサプリメント編の仕上げとして、インスリンの使い方をおさえていきましょう。

◎インスリンの分泌量を増やす

インスリンを増やす。これは、単純に言えば食事の炭水化物量を増やすということです。1日5000Kcalなら茶碗10杯のご飯、4000Kcalなら8杯は食べてください。一日10杯は食べたいところです。

◎サプリメント

サプリメントとしては、

1:ウコン
2:バナバ茶(インスリンと同じような働きをします)

を摂りましょう。摂取方法としては、

・トレーニング後、なるべく早く消化吸収の良いバナナや果汁+ホエイプロテイン、サプリメントではブドウ糖などを。

・トレーニング後2時間以内、胃に血液が戻ったタイミングの”ゴールデンタイム”に食事をしましょう。

◎インスリン受容体の感受性を高める

1:タウリン 1日3-5g、食後に2g。魚介類に多く含まれます。
2:アルギニン 1日3-5g
3:αリポ酸 1日2-5g。
4:EPA、PHA 1日2-5g 青魚に多く含まれます。

などが代表的です。他には

5:亜鉛 1日15mg

取ると良いでしょう。


理想的なサプリメント摂取例

・朝起きて

アルギニン 2g
BCAA 5g

・朝食後

マルチビタミン
消化剤
タウリン 2g
亜鉛 7.5mg

・間食

マルチデキストリン

・昼食後

マルチビタミン
消化剤

・間食

マルチデキストリン

・トレーニング前

ホエイプロテイン 30g
BCAA 5g

・トレーニング後

ホエイプロテイン 30g
マルチデキストリン50g
クレアチン 5g
αリポ酸 200mg

・夕食後

マルチビタミン
消化剤
αリポ酸 200mg
亜鉛 7.5mg

・寝る前

ホエイプロテイン 30g
タウリン 2g

これはかなり理想的な摂取例です。


増量に悩む球児必見!増量6か条

増量しにくい人は、次のことを念頭に入れてください。

1:食事量と回数を絶対増やす
2:インスリンの量と感受性をサプリメントで上げる
3:プロテインでたんぱく質を絶対キープする
4:アミノ酸サプリメントでトレーニングの質をあげる
5:クレアチンを摂り、筋の形質容量を増やす
6:胃腸が弱い人が多いので、胃の消化を助けるものを摂る

この6か条を必ず頭に入れてください。また、絶対に空腹の時間を作ってはだめです。

前回から2つに分けて、増量のための栄養の取り方を解説していきました。このことを頭に入れて、この冬のオフシーズンで理想の体を作っていきましょう。頑張りましょう!

殖栗正登のイップス克服プログラム

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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