関東一vs帝京
関東一、4年ぶり2度目の優勝
緊張感の続いた我慢の仕合い
関東一が粘り勝ちで4年ぶり優勝
この夏の東東京大会決勝と同じ顔合わせになった。ちなみに夏は、帝京が6対1で快勝している。返り討ちしたい帝京と、リベンジしたい関東一、両校の力と力のがっぷり四つの戦いとなった。
強豪校同士の対決に、試合開始1時間前から、多くのファンが足を運んできて、スタンドは早々に2階席も開放していっぱいになった。決勝戦という、独特の緊張感に包まれて、両校の応援団も、シートノック以前から大いに盛り上がっていた。
帝京は準決勝に続いて左腕石倉君、関東一は背番号10の1年生中村君が先発のマウンドに立った。石倉君は、連投の疲れも感じさせず、独特のやや反り返るようなフォームから、キレのいい球をクロス気味に投げ込んでくる。
中村君は、オーソドックスな右腕という感じだが、見た目以上に球に力があるのだろう。力のある帝京各打者が刺し込まれていたというのは、それだけボールの回転もよく伸びているという証拠でもあろうか。
こうして、投手戦の展開で試合は進んでいった。
6回を終わって、0対0。ここまで、帝京は2番堤君の左前打一本のみ。やや押し気味に試合を進める関東一は、3回には1死満塁としながら遊直併殺で好機を逸し、5回も1死二塁から、暴投もあって三塁まで進めたものの、あと一本が出なかった。
関東一、嬉しい応援席への優勝報告
どちらに、どういう形で得点が入るのか…、試合展開からしても、1点勝負という感じになってきた。そして迎えた7回、関東一は先頭の6番伊藤君が中前打で出ると、思い切って二塁盗塁を決めて、その後バントで送って1死三塁とした。ここで8番中村君だが、元々打撃は悪くないという選手だけに、スクイズを仕掛けるというよりは、外野飛球でOKというつもりで打たせていった。その打球は左翼手の頭上を破る二塁打となって、ついに均衡を破った。
さらに、死球を与えたことで、帝京ベンチは思い切って石倉君を外野へ下げ、力のある投球をする渡邊隆君が一塁からマウンドに登った。ところが、その初球が力んで暴投となり、二三塁となってしまう。さらに、磯部君の強い当たりの内野ゴロが失策を誘発して関東一は2点目が入った。
結局、この回の2点が試合を決することになるのだが、中村投手はリードしてからも、それまでと変わることなく、度胸よくストレートで内側を突いていきながら、相手打者を詰まらせていくという力の投球だった。7回以降も、1四球は与えたものの、危なげなく投げ切って、終わってみたら帝京を1安打完封である。
関東一は、4年ぶり2度目の秋季東京都大会優勝となったが、これで、11月末の明治神宮大会出場を決めるとともに、来春のセンバツ4度目の出場をほぼ確実とした。
目標でもあった、夏のリベンジを果たすことができた関東一の米澤貴光監督は、「帝京さんはいつも目標としているチームでもありますし、東東京で甲子園出場を目指すのであれば、必ず越えなくてはならない壁でもあります。今日は、前半は我慢していって、終盤勝負だと思っていたのですが、その通りになりました」と、思惑通りの戦いには満足の表情だった。また、投げて打ってと大活躍だった中村君に関しては、「必ずしも調子そのものはいいというものではなかったかもしれませんが、強気で行くといういい面が出ました。1安打ピッチングは出来過ぎですね。冬の間には、変化球をマスターさせたい」と、次へのテーマも見つけていた。前日好投した醍醐君と合わせて左右の2本柱として、来春への期待は膨らんでいく。
その中村君は、「先輩たちが夏に負けているので、2季連続で同じ相手に負けるわけにはいきませんから、嬉しいです」と、素直に喜びを表していた。
閉会式を終えて、ベンチ裏に戻ってきた帝京の前田三夫監督は開口一番、「打てなかったなぁ、1安打ではねぇ」と嘆いた。「真っすぐだけなんだからね…、それを打てなかったということは、それだけ相手のボールがよかったんでしょうけどね。それに、7回の盗塁、あれを刺せなかったのも痛かったなぁ。1点取られた後のエラーも痛い。力負けですね」と、完敗を認めざるを得ないという表情だった。
(文=手束仁)