福井工大福井vs金沢学院東
最後はスライダーで三振に取り完投、上野投手(福井工大福井)
左腕・上野3安打完投!
福井工大福井の左腕・上野幸己(2年)が金沢学院東を相手に3安打1失点と好投。打線は6回に逆転すると、終盤はコツコツと得点を積み重ねて快勝。ベスト4進出を決めた。
前日の1回戦(上田西戦)で136球を投げて完投した上野。2日連続のマウンドだったが、大須賀康浩監督は「彼は連投の方が良い」と送り出した。ただ、その上野は「ブルペンでは調子が悪かった」と振り返る。
立ち上がり、金沢学院東の1番尾崎太河(2年)への第1球が死球となった。「力んでしまった」という上野は、委縮したのか、2番の東裕樹(2年)にストレートの四球を与える。
バタバタしたスタートに控え投手が準備を始めるなどベンチは少し慌てた。
だが、3番の盤戸大樹(2年)が送りバントを試みるが3バント失敗となった。少し気持ちにゆとりが出た上野は、4番の玉城大樹(2年)を空振り三振に取る。
2死1、2塁となって5番の梶竜太(2年)。1ボール1ストライクとなった3球目の前、上野は一塁に牽制球を投じた。走者の東は完全に意表を突かれてタッチアウトに。バタバタした立ち上がりを何とか凌ぎ、「大きかった」と上野は笑顔でベンチに戻った。
2回以降、少しずつリズムに乗り始めた上野だが、4回に先制点を失う。次の5回も先頭に四球与えた上野に野手陣が声をかけた。
「マウンドでの態度は課題でした。成長してきているけど、今日は周りに声をかけてもらって助けられた」と話した上野。無死1、2塁のピンチから三者連続三振を奪って、バックの檄に応えた。
馬場稔樹(福井工大福井)
5回が終わりグランド整備を挟む。
6回表、福井工大福井は1死から3番の菅野真史(2年)が三塁前へバントヒットを放った。4番上田哲平(2年)がレフト線へ二塁打を放ってチャンスを広げる。そして5番の馬場稔樹(2年)がレフトへ弾き返し二者が生還。試合をひっくり返すことに成功した。
「菅野のバントは本人の判断。彼は3番ですが、3番だけではなく1番の役割もできる」と話した大須賀監督。ゲームが動きやすい6回に講じた菅野自身の策が見事に決まった。
一度繋がり始めた打線は、後半にも機能する。四球の走者をヒット一本で返した7回、2死から下位打線の連打で2点を追加した8回と、得点の積み重ね方も上手かった。
打線の援護をもらった上野は三者連続三振を取った5回と打って変わり、内野ゴロの山を築いた。9回2死から内野安打を浴びた以外、後半は完璧なピッチング。最後はスライダーで狙い通り三振を取って締めくくった。
「今日はスライダーが良く、フォークも生きた」と話した上野。同県1位の敦賀気比との準決勝へ向けては、「投げる機会があれば頑張りますが、まだ良いピッチャーも二人いるので」と全員で挑むことを強調した。
一方、逆転負けを喫しベスト4進出がならなかった金沢学院東。ゲームの内容だけを見ると、福井工大福井打線と左腕・上野の前に完敗だったのかもしれない。ただ、1点を先に取っただけに少しもったいない印象を受けた。
「前半、攻撃が淡々とした感じだった」という冨田俊明監督は、5回終了後のミーティングでグランド整備が終わるころまで長く話していた。
気になったのは選手が長い時間立って話を聞いていたこと。結果論かもしれないが、6回は守りから入ることを考えれば、選手がベンチで座った状態でミーティングをやっても良かったのではないかと思える光景だった。
(文=松倉雄太)