日大鶴ヶ丘vs明大中野八王子
日大鶴ケ丘・伊地知君
見ごたえのある投手戦、延長11回日大鶴ケ丘が制す
タイプはいくらか異なるが、お互いの投手が持ち味を十分に出し合い、見ごたえのある好投手戦だった。
日大鶴ヶ丘が12安打に対して、明大中野八王子は3安打。この数字が両投手のタイプを物語っている。
日大鶴ヶ丘の大高君は187㎝78㎏という長身の投げ下ろしで、角度のある鋭いストレートを武器に、スライダーもタテに変化していく。ここぞという時には三振を獲りに行く力の投球もできる。下半身がさらに強化されてもう一回り大きくなれば、ドラフト候補になれる逸材といってもいいであろう。
これに対して明中八の篠原君は173㎝で58㎏という普通の高校生だ。それでも、小気味のいい投球で巧みに四隅を突いていくことを意識した投球は見ごたえ十分だ。球のキレ味もよく、見ていて心地いい投手である。
大高君がナタだとすれば篠原君は職人がしっかりと砥いだ刺身包丁といった感じだろうか。それに、篠原君は安打をされても、連打を許さないという粘り強さも持ち合わせていた。
日大鶴ヶ丘は初回、伊地知君が右線三塁打すると1死後茂呂君が中前打してあっさりと先制。あまりにも簡単に1点が入ってしまったということもあったが、この時点ではまさかこんな展開の試合になるとは思えなかった。
日大鶴ケ丘・大高君
大高君を打ちあぐんでいた明中八は何とかして1点を追いつきたいところだったのだ。それが5回、1死から1番野崎君が中越二塁打すると内野ゴロで三塁へ進み、暴投で本塁を陥れた。ラッキーな得点の入り方だったが、これで明中八としては気持ちを作り直すことが出来た。
6回以降は投手戦の様相がより強くなってきた。
篠原君は巧みにコースを突いてくる心憎い投球で好投。それに、4回、9回は石崎君が中堅からの好返球で2度までも本塁で走者を刺している。こうした、バックの好プレーにも支えられて篠原君は好投を続けていた。
試合はそのまま延長に突入したが、何となく長い延長戦になるのではないかという気配もあった。それくらいに、両投手にスキがないというか崩しきれないだろうという印象があったのだ。
ところが11回、日大鶴ヶ丘は1死後9番佐藤健君が左線へ二塁打すると、伊地知君の内野ゴロの間に三進し、好機を作る。ここで2番幡野君はボテボテながら中前へ運ぶ渋いタイムリー打で日大鶴ヶ丘は、初回以来10イニング目でついに追加点を奪った。
その裏も大高君はきっちりと抑えて、日大鶴ヶ丘はこの1点が決勝点となった。
(文=手束仁)