大手前高松vs高松西
藤川(大手前高松)
勝負の秋に挑む大手前高松、「想定内の」辛勝
5回終了時点で大量7点をリードするもリリーフ陣が高松西の気迫に押され、最後は2点差の辛勝へと変化した大手前高松。それでも試合後の山下裕監督は穏やかな表情で報道陣の前に現れた。
「5回で先発の藤川(将・2年)を交代させたのは、序盤で点も取れていたし、連戦でも彼も疲れていたから。ウチは総合力で行くことに決めていますし、その中で敗れてしまったら監督の責任ですから」。
そんな指揮官の発言が全く強がりに見えなかったのは、7回裏における彼らが仕掛けた一連の攻撃が正に「総合力」を示すものだったからだ。
順を追ってみると、先頭の1番・林太一(1年)は死球で出塁。さらに林は2番・西本拓哉(2年)のショートゴロで「仕掛けることができる」(山下監督・談)50メートル走6秒0の俊足を活かし、悠々2塁に到達。
続く3番・藤川も四球を選び、1死1・2塁となったところで山下監督が4番に入っていた守備固めの選手に代わり代打に送り出したのは「夏の練習の時点で代打の役割を告げて、そのための練習をさせていた」藤村克(1年)であった。
藤村(大手前高松)
そして藤村は指揮官の期待に見事応える左中間適時二塁打。敵失も絡み2点を追加したこの回の攻撃が、終わってみれば勝敗を分けるポイントとなったのでる。
さらに大手前高松にとって大きいのは当の選手たちが、この内容を前向きに受け止めているところだ。5回で6奪三振無失点、2試合で12イニング無失点ながら、6回からはショートへと回った最速140キロ右腕の藤川主将ですら、全く不満を見せることなく、さらなる抱負を述べている。
「この大会を通じて成長することがチームの目標です。今日は自分たちの欠けている部分が見えたし、次の高松商戦では自信を持って戦って、四国大会に行きたいです」。
昨年4月に満を持して47年ぶりに硬式野球部を復活させ、戦力整備を着実に進め、今大会では結果を出せる状況にまで達してきた大手前高松。もし優勝候補の呼び声高い高松商との決戦を制することができれば…。彼らの「願い」は、「現実」という文字になることだろう。
(文=寺下友徳)