Column

これは冷やす?温める?

2011.08.30

第27回 これは冷やす?温める?2011年08月30日

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

もうすぐ夏休みも終わり、新学期が始まりますね。秋の公式戦がすでに始まっているところ、これから始まるところと様々あると思いますが、試合となるとついついケガをおして出場する選手も多いのではないでしょうか。病院での診察を受けた後に痛みのある部位をどのようにケアをしていけばいいのか、「冷やす」「温める」の違いについてお話をしたいと思います。

病院で診察を受けたときに「患部を冷やしましょう」とか「練習前にしっかり温めてから参加しましょう」と言われることがあると思います。冷やすことと温めることはまったく逆の対応なので、戸惑った経験のある選手もいるかもしれません。これはケガの程度や炎症状態によって使い分けをしているのです。ケガには大きく二つに分けて考えます。一つは「スポーツ外傷」ともう一つは「スポーツ障害」です。

《スポーツ外傷》
突発的なケガのことをさし、デッドボールによる打撲やベースを踏み損ねて捻挫をした、相手選手と交錯してスパイク等で出血したといった、原因の特定できる突然起こるケガのことです。この場合ケガをすると痛みが出る、患部が腫れてくる、内出血がみられる等の炎症症状が起こります。急性期の炎症症状はおよそ48時間~72時間程度(2、3日)続くといわれ、この状態を少しでも軽くするために患部をアイシングすることが必要となります(第3回 投げた後に氷で冷やすのはなぜ?を参照)。

《スポーツ障害》
突然起こるケガとは違い、投球動作の繰り返しによる疲労や柔軟性、筋力の低下などが原因となって起こってくるもので、明らかな原因が特定しにくいもののことを言います。以前からずっと肘が痛い、バッティングをすると手首が痛いなど、普段の生活の中で感じる痛みよりも、スポーツ動作を行うことでその痛みが増します。痛みのある場合はアイシングを行いますが、練習前などには患部を温めて周囲の筋肉や腱などの動きを高めるようにすると良いでしょう。練習後に痛みがある場合はアイシングを行うようにします。


患部を温めることは血流を良くし、組織が再生して早く回復するための手助けとなります。冷やしっぱなしではケガの回復は遅くなりますので、炎症状態がおさまった段階で温めるほうへと移行していくことになります。その目安が48時間~72時間ということですが、これはケガの程度や部位、状態などによって違ってきます。およその目安としては、患部に熱感がないこと、腫れや内出血の程度がおさまってきていること、運動をしていない状態では痛みがないことなどが挙げられますが、あくまでも参考程度にとどめ、医師とよく相談の上、指示を仰ぐようにしましょう。

患部を温める方法としては入浴や蒸しタオルなどを使って体の外から温める方法と、ウォーミングアップ等を十分に行って体の中から温める方法があります。練習前であれば入浴することはなかなかむずかしいと思いますので、しっかりウォーミングアップを行って汗をかき、体温や筋温を上げるように心がけましょう。また患部周辺の筋肉などを軽くほぐす、ストレッチを行うことは筋肉の柔軟性が高まるだけでなく、血流も良くなりますのでオススメです。練習後、痛みをあまり感じないようでしたら入浴や蒸しタオルなどで患部を温めましょう。蒸しタオルは濡らしたタオルをしぼり、電子レンジで1分~2分程度温めると素早く準備できますよ。

「冷やす」と「温める」の境界線がなかなかわからずに悩んでいた人もいると思いますが、ケガの状態にあわせてうまく使い分けるようにしてみてくださいね。

【冷やすと温めるの使い分け】
●急にケガした「スポーツ外傷」はまず冷やす
●急性期の炎症症状は48時間~72時間程度続くので、その間は冷やす
●慢性的な「スポーツ障害」は練習前に患部を温め、血流を良くする
●温める方法は体の外から(入浴・蒸しタオル等)と体の中から(ウォームアップ等)がある
●冷やしっぱなしではケガからの回復は遅くなる

(文=西村 典子

次回、第28回公開は09月15日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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