Column

夏バテに負けない身体

2011.08.15

第26回 夏バテに負けない身体2011年08月15日

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

8月も中盤となり暑さがこたえる時期ですね。夏になると食欲が落ちる、体重が落ちるといった悩みを抱える選手も多いのではないでしょうか。

その原因の一つが夏ばて。暑さによって自律神経系が乱れ、身体の様々なところにその影響が及ぶといわれています。野球選手はそれに加えて日々の練習による肉体的・精神的疲労も考慮に入れなければなりません。今回は夏ばてに負けない身体作りについて考えてみたいと思います。

現代のように空調設備が整っていなかった時代には、暑さによって食欲不振に陥ったり、そこから体力低下や体重減少が見られることが主な夏ばての症状でした。今ではクーラーなどの使用により、外気温と室温の急激な変化による自律神経系の乱れや、暑さによる睡眠不足、冷房による冷え性など様々な症状が見られます。環境に適応できる身体作りとしては「冷房対策」「食欲増進のための食事」「睡眠不足解消」などを考えることが必要になります。

【冷房対策】

グランドで練習を終えた後、汗をかいたまま空調の効いた室内へと直行することはありませんか?

涼しみたい気持ちはよくわかりますが、汗が急激に冷えて夏風邪の原因になったり、体温調節がうまくいかなくなったりして、結果的に夏ばてを起こすことになってしまいます。外気温と室温の差が5℃以上あると身体の温度調節機構はうまく働かないといわれていますので、冷房の温度設定は28℃程度にしておきましょう。

また扇風機などを使用して空気を循環させると、体の表面から熱が発散されて涼しくなるのでオススメです。ただし直接冷たい風が身体にあたると、体の表面の熱が奪われつづけ体が疲労します。冷房の向きは直接当たらない方向、特に天井方向に設定をし、扇風機についても首振り機能を利用しましょう。


【食欲増進のための食事】

夏ばて防止に効果的な食事としては、疲労回復に役立つといわれているビタミンB群を積極的に取るようにすると良いでしょう。豚肉やウナギ、豆類などを意識して食事の中に取り入れるようにしてみてください。

さらに夏だからこそ、鍋料理、温かい料理というのも夏ばて対策の一つ。発汗作用を促し、疲労に負けない身体作りに一役買ってくれそうです。食欲を刺激する香辛料や香味野菜、辛いものなども食事量が増えるのでオススメ。

カレーに入っている香辛料は、実は胃腸薬とほぼ同じ成分が入っているともいわれ、胃腸にとっても非常にいい食事になるのです。ただし、辛いものをたくさん食べ過ぎると胃腸に負担をかけてしまいますので、バランスよく取るよう心がけましょう。

また水分補給はこまめに行うことが大切ですが、冷たい飲み物を一度にたくさん取る過ぎると、胃液が薄まり消化機能が低下するといわれています。常温か、少し冷たいかなと感じる程度の飲み物を少量ずつこまめに取ることが水分補給としては理想的。食事の時にあえて温かい飲み物を飲むことも一つです。温かい飲み物は一気に飲むことがむずかしいため、自然とこまめな水分補給につながります。

【睡眠不足解消】

毎日練習を行う野球選手にとって、睡眠不足は身体に大きな負担をかけてしまいます。なるべくいつもどおりの睡眠時間を確保するように心がけましょう。朝まで冷房をつけっぱなしにしていると身体がだるくなったり、風邪を引いたりするので注意が必要です。

暑くて眠れないという場合は、クーラーのタイマー機能や除湿モード、扇風機などと組み合わせて身体に負担のない程度の室温に設定して過ごすようにします。また身体を一度温めて、だんだんと冷えていくときに眠くなるといわれていますので、寝る前にぬるめのお湯で入浴を行う、寝る前には間接照明などを使って部屋を少し暗くしてリラックスしやすい雰囲気を作るなどの工夫もしてみてください。

睡眠不足は体調不良を起こすだけでなく、暑い時期での熱中症を引き起こす原因ともなります。身体の疲労をとるためにもしっかりと眠るようにしてくださいね。

【夏ばてに負けない身体作り】
●外気温と室温の差は5℃以内が理想。冷えすぎる部屋に練習後すぐに入らないこと
●扇風機などを上手に利用する
●温かいもの、辛いものなど食事にも工夫を
●冷たい水のがぶ飲みはやめて、常温に近いものをこまめに取ろう
●睡眠不足は熱中症のもと。熟睡出来る環境を整えよう

(文=西村 典子

次回、第27回公開は08月30日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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