専大玉名vs有明
高橋昂希(専大玉名)
何かある事に2年生エースのいるマウンドに駆け寄り、声を掛け、時には厳しく、時にはやさしく、まるで父親のような存在感でどっしりと一塁を守っている。
「自分は声掛けしかないんで」と謙虚さを忘れない高橋であるが、小学時代には、あまりにもマウンドに駆け寄り、声を掛け過ぎて審判の方からも注意されたというエピソードがあると笑うが、ある意味、それも自分の持ち味である。
そんな高橋が背負う役割は“4番打者”。3番・園道工也、5番・田中将平というタレントに、挟まれながら専大玉名、不動の4番を張ってきた男なのだ。
高橋昂希(専大玉名)
初回、2死二塁の場面でいきなり4番が、“らしさ”をみせつけた。まず、ゆったり足場をならすと、どっしりと構えた。その懐の深さからは威圧感が漂い、4番・高橋の存在をさらに際立たせている。
ファールを挟んでカウント2ボール2ストライクからの6球目。真ん中に入ってきたカーブをシャープに振り抜くと球足の速い打球は、レフトの前へと転がっていった。先制となるタイムリーだ。
3回、今度はしっかりとボールを見極めた。四球を選んで満塁というチャンスを広げ、次打者の5番・田中が左中間を深々と破るスリーベースヒットで一塁走者の高橋も一気にホームを踏んだ。
四球で出塁し、ホームイン。それは決して目立った活躍ではないが、4番の高橋がきっちりと四球を選んだことで、相手にも満塁というプレッシャーを与え、次打者の田中が思い切って打てたことにも繋がっていたに違いない。
もちろん、4番として大きいのを狙いたい気持ちもあるだろうと長打について問いかけると、彼はさらりとこういった。
「実は自分、本塁打を打ったことないんですよ。自分たちの持ち味は、つなぐ野球なんで、理想はセンター前です」
専大玉名の山本国臣監督が常に口にするこの言葉。
うちはつなぐ野球-。
それを徹底し、派手に活躍しなくてもチームを支える4番・高橋。謙虚さを忘れず、ひたむきにプレーする彼の男気には、チームメイトも絶大な信頼を寄せていることだろう。
この日もリリーフした園道が最速145キロをマークするなど常時140キロ台のスピードボールで観客を魅了したり、キャプテンで5番の田中が放った3点三塁打に比べると、4番・高橋の活躍は目立っていなかったかも知れない。
ただ、これだけは声を大にして言いたいことがある。高橋昂希は、4番打者でありながら、派手な活躍がなくても、目に見えないファインプレーでチームを支える真の強さを持っていることを。
専大玉名が勝ち続ける強さの理由は、こんなところにもあった。
(文=編集部:アストロ)