試合レポート

天理vs登美ヶ丘

2011.05.15

天理vs登美ヶ丘 | 高校野球ドットコム

エース、西口投手(天理)

登美ヶ丘、夏に向けて手ごたえの敗戦

天理が4-1で登美ヶ丘を破り、シード権を獲得した。

順当と言えば順当だが、登美ヶ丘・北野定雄監督は「差は詰まってきている」と手ごたえを口にする。

本番となる夏までの期間、奈良県で注目とされるのは5季連続出場中の天理をいかに止めるかだ。
県内の連勝は昨秋の決勝で智弁学園が止めたとはいえ、同近畿大会では天理が智弁学園を上回り、現状のところでは「天理の天下」という構図は変わってはいない。

 
その旗頭となるのが、ベテラン・北野監督率いる登美ヶ丘なのだ。
北野監督は斑鳩高校時代に、黄金時代の天理と互角に渡り合ってきた名監督である。
黄金期の天理を知り、さらに、今の天理の強さを熟知しているだけに、戦い方も分かるというものである。

天理と言うと、「豪打」「タレント性」ばかりが注目されるが、北野監督が注視しているのは違う部分なのである。1回戦の奈良大付戦後、北野監督はこう話している。
天理の走塁をなんとか止めなければいけない。それだけの守備力が必要と思って、中継プレーも含めて詰めていかんとアカン」。

指揮官の言うとおり、ここ数年の天理の強さは走塁の巧みさだ。脚の速い選手そろっているわけではないのだが、判断が素晴らしく、二塁から1本で生還できる走塁力を持つ。

例えば、今日の1日を取り上げてみると、第1試合で智弁学園が、1回表の高田商の本塁生還を止めている。それは中堅手・青山の好返球によるものだが、この際、バットがボールに当たってから、青山が処理してキャッチャーのミットに戻ってくるまでのタイムが6、97秒だった。


天理vs登美ヶ丘 | 高校野球ドットコム

登美ヶ丘のエース松尾

 一方、天理登美ヶ丘戦で4点目を奪った場面。5回裏二死・満塁で、8番・岡部が左翼前適時打を打った際に、二走・吉田が本塁へ生還したタイムは6、64秒だったのである。

単純比較はできないとはいえ、1試合目での青山の返球でも、吉田は生還できたということになる。
吉田は俊足ではない。スタートの速さとベースランニング、判断が速くて、上記のタイムを叩きだせるというわけである。

 北野監督はそこに目を付けている。
4点目を奪われる前の天理の攻撃は、2死・二塁から吉田が左翼前安打を放ったが、二走・森口は本塁へ還れなかった。これは登美ヶ丘守備陣の中継プレーの巧さがあったからである。北野監督は言う。

「あの後の場面ではやられたけど、しっかり止められていた。もし、この場面でも生還を許していたら、もっと畳みかけられていた展開だった。うちのやろうとしていることの一つの成果が出たと思う」。

 北野監督が差は埋まってきていると感じるのはその部分なのだ。

もっとも、守備面だけではない。昨秋、天理打線を前に交わすピッチングに終始したエースの松尾もしかり。この日は、ストレートを主体にした低目を突くピッチングで、要所を締めた。初回にタイムリーエラーが絡んだ2失点を除けば、さほど崩されたという印象ではなかったのだ。1-6からの1-4はスコア上では変わらないが、中身としては大きな進化が見えたというものだ。

 「先の塁を取られない守備にしても、攻撃面にしても、まだ細かい部分で甘さがある。そこを詰めていけば、(天理と)競ったゲームはできると思う。天理をもう止めやんとなぁ。それも、公立校が止めたい。僕はそう思っている」。
最後に強い決意を込めた北野監督。

2つの敗戦を糧に、この夏の登美ヶ丘の戦いが楽しみである。

(文=氏原英明

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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