Column

スタートダッシュを考える

2011.04.15

第18回 スタートダッシュを考える2011年04月15日

スタートダッシュを考える

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

日を追うごとに暖かさを増し、野球をするには絶好の気候となりましたね。これから公式戦が始まる地区やすでに開催されている地区など地域によってそれぞれですが、今回は試合期によく行われるランニング・プログラムでのスタートダッシュについて考えてみたいと思います。

第11回コラム「シーズンに合わせた練習計画」のところでも少し触れましたが、年間計画に合わせて体力トレーニングやランニングプログラムは変化させていく必要があります。

特に試合が続く時期においては、中距離のランニングやベースランニングとともに短距離のダッシュ、特にスタートを意識したものを反復することで、実際のプレーに結びつけられるようにしていきたいものです。短い距離をしっかり駆け抜けるシーンは数多くあり、特に攻撃面での打者が一塁まで駆け抜ける場面や盗塁など、守備面では打球に追いつくために走る場面などがあげられます。

こうしたことを踏まえて、試合期には数多くのダッシュを行うことが多いのですが、皆さんはランニングプログラムでのダッシュにおいて、何を合図にスタートを切りますか? 普段の練習では笛やかけ声などを合図にスタートすることが多いと思いますが、実は野球の競技特性を考えてみると、笛などの聴覚を刺激したものよりも視覚を意識したスタートがより野球のダッシュに近い状況を作り出すことが出来ます。盗塁の時に見るのは相手ピッチャーの足元であるとか、キャッチャーがボールを後方にはじいたら次の塁を狙うとか、打球のインパクトにあわせて守備を行うといったように、スタートを切る合図の多くは視覚に頼ったものだからです。また視覚をスタート合図にすることによってボールから目を切る、下を向いてしまうといった状態を防ぐことも出来ます。


スタートダッシュを考える

具体的なスタートダッシュの合図としては、誰か一人が前に立って何かを合図にスタートする方法です。何もない状態で行う場合は手を合図にしてグーからパーへと手を開いたらスタートであるとか、合図をする人が真ん中に立ち、両手を使って手の開いた側にスタートやその逆(開いた側と反対側にスタート)といったスタートといった、視覚情報をスタート合図にしてダッシュを行います。またボールを使って地面に落ちたらスタート(フェイントも入れると面白い)、カラーコーンを使って色で判断してスタートといった道具を使ったものなども有効的です。

さらに複雑になってくると視覚とともに判断力を問うようなスタートの合図を出すこともあります。野球は目で見て、判断して考えて動くという動作も要求されるからです。合図の出す人の指を使い、出た指の本数が偶数・奇数で判断してスタートをする(片手の場合)、両手の10本の指を使って左右の指の本数が偶数・奇数で判断してスタートをする、さらには両手の指での掛け算の合計で偶数・奇数でスタートをするといった具合です。また笛(聴覚)と手(視覚)を使い、どちらかの合図でスタートを切るということも行います。このようなスタートの合図は単なる視覚からの情報だけではなく、頭の回転力(すばやい判断)も要求されるようになります。余談ですが偶数・奇数を判断してスタートする場合、「0は偶数ですか、奇数ですか」と質問してくる選手が必ずいますが(笑)、一般的には0は偶数として扱われることが多いようです。

今回ここにご紹介したものはほんの一例ですので、視覚を意識した合図で面白いものがあればぜひ教えていただけると嬉しいです。いろんな場面を想定して、ぜひ笛の合図だけではない、視覚を意識したスタートダッシュも取り入れてみてくださいね。

【スタートダッシュの合図を工夫してみよう】
●野球は視覚に頼ったスタートや判断力を問われることが多い
●簡単なスタートの合図としては手や指を使ったもの
●少し複雑なスタートの合図としては指を使った足し算や掛け算など
●視覚をスタートダッシュの合図にすると下を向かずに集中できる
●視覚+聴覚を使ってスタートを切らせる
●野球で起こりうる場面を想定してスタートダッシュを切る

(文=西村 典子

次回、第19回公開は04月30日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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