佼成学園vs世田谷学園
溝口(佼成学園)
浮足立った世田谷学園
4月6日、帝京高校に6-0で完封勝利を挙げた世田谷学園。
背番号12のアンダースロー相沢が完封し、持ち前の機動力を絡めた野球で大物喰いをした。
対するは昨秋ベスト8で順当に勝ち上がっている佼成学園。
勢いに乗っている世田谷学園はいきなり攻撃を仕掛ける。ツーアウト一塁から4番大内が甘く入った直球をフルスイングし、レフトスタンドへ飛び込む先制ツーランで2対0とする。
1回の裏、4番山下を見逃し三振に打ち取り、良いスタートで試合に入ることができていた。
しかし2回裏、佼成学園が反撃する。
5番黒澤がショートの強襲ヒットで出塁すると、6番三輪は三塁前へバント。しかし三塁手がこれをお手玉にし、オールセーフ!ノーアウト1,2塁に。7番五木田のセンターフライで黒澤は三塁へ。8番溝口のスクイズで1点を返すと9番藤井の左中間を破る二塁打で同点に追いつく。
そして3回裏にはワンアウト一塁から3番吉田がレフトフェンス直撃の三塁打で勝ち越しに成功。
更にツーアウトから世田谷学園守備陣のエラーもあり、最後は7番五木田のタイムリーで4点目を追加。
こうなると、勢いは佼成学園に。
4回の裏には2番中川のスクイズで1点を追加し、ツーアウト二塁から4番山下のタイムリーヒットで小刻みに点を追加していき6対2とする。6回の裏には3番吉田が弾丸ライナーでライトスタンドへ持っていき、7回の裏には1番磯部の犠牲フライ8対2。
なんとか反撃したい世田谷学園は8回の表、ツーアウト1,2塁から5番具志堅が放ったファーストゴロを一塁手の磯部が弾き、ライトへ。二塁ランナーがホームインし、8対3にしたが、後続を抑えられてゲームセット。佼成学園が8対3で勝利し、準々決勝進出を決めた。
吉田 大成(佼成学園)
世田谷学園はプレーが軽かった。2,3回の内野手のエラーは完全に準備不足のミスであり、しっかりと心構えができていれば確実に捌くことができている打球。
そしてこのエラーにより世田谷学園ナインに重苦しい空気が伝わってきた。持ち前の機動力も出塁することができれば仕掛けることができていない。やることすべてに後手に回ってしまった。
だが初回までの攻撃は世田谷学園らしさを出した速攻であり、この試合では4人登板。いずれも素質が高い投手が多く、切磋琢磨しあえば面白い投手陣だ。とにかくこのチームに求められるのは落ち着いた試合運びをすること。それができれば再び強豪校を脅かすチームになっていくだろう。
浮き足立った世田谷学園の隙を逃さず淡々と得点を積み重ねていった佼成学園は強かった。
4打数3安打2打点1盗塁と大活躍を見せた。スタンスはスクエアスタンス。グリップを下げてバットを水平に立てて構えている。投手の足が着地する寸前に始動を仕掛け、足を小さく上げて真っ直ぐ踏み込んでいき、トップを小さく取って振り出すスタイル。スイングの弧が大きく、打球は伸びていく。ややヘッドが投手方向に向ける無駄な動作が目立つが、打てる時はヘッドを向けることなく、スムーズにトップに入ることができているので、それを貫いてほしい。2本塁打を打っているが、打球はライナー性で中距離打者タイプだ。
ショートの守備では動きの良い守備を披露。足の運びは軽快で、捕ってからすぐ投げるクイックスローや、地肩の強さもある。攻守においてレベルが高い選手であり、今後も西東京で注目を集める存在になっていくだろう。
荻田 大樹(世田谷学園)
世田谷学園は4投手が登板。今回は3人をピックアップする。
荻田 大樹(右/右 170センチ64キロ)はマックス143キロを計測するといわれている速球派サイドハンド。この試合でも偵察校の部員のガンで常時135キロ前後・マックス140キロを計測しており、馬力のあるところを見せた。主にスライダー、シンカーを投げ分けて横の揺さぶりで勝負していくタイプだ。
ただ開きが早いだけに、球離れも早く、140キロ近い速球を投げていても佼成学園は打ち易さを感じたのではないだろうか。4回の裏に降板するまで9本打たれており、しかもしっかりとしたスイングで振り抜かれていた。ただ140キロを投げられる馬力はあることが十分に証明しているだけに、夏までの大化けに期待したい。
三番手で登板した関 勇吾(右/右 173センチ70キロ 3年生)は右オーバーからマックス134キロのストレート、115キロ前後のスライダーをコンビネーションで勝負していく。体つきは華奢で、投球フォームも膝の割れが気になるので、体重移動が良くなっていくと球速が伸びていくタイプではないだろうか。
四番手で登板した工藤 力三郎(右/右 180センチ76キロ 3年生)は手足が長く、スラッとした投手体型。恵まれた体格をしているのに球速は120キロ後半とあまりスピードは出ていない。それは腰が横回転で投げているのに、腕はオーバーで振っているアンバランスな投球フォームが動きを阻害し、恵まれた体格を十分に活かすことができていないと考えられる。もう少し横回転を抑えていけると球速はアップしていくタイプだろう。
帝京戦でホームスチールを決めた石川 諒(右/左 165センチ56キロ 遊撃手)は野球センスと感性の良さが光るショートストップ。
打撃は癖のないスクエアスタンスから浅くトップを取っていき、ミート中心の打撃を心がける。今後しっかりと体作りをしていけば更に力強さは増していきそうだ。ショートの守備を見ていくとフットワークの良さが光る。塁間タイムは4.3秒前後と左打者としては速くはないが、それでも身のこなしが良さそうに見えるのは感性の良さだろう。周りに気配りができており、視野の広さを感じる。観察力もあり、隙さえあれば先の塁を盗むことができているし、ホームスチールを成功させたのも感性の良さが役立っているだろう。
あとは本人が上のレベルで強くやりたいという気持ちを持ち続けることができれば、ぐっと伸びていくタイプではないだろうか。
(文=編集部:河嶋宗一)