小野田vs下関中央工
ホームイン
流れ
雲が大きく流れていく-。
この日、[stadium]下関球場[/stadium]のセンタースコアボード上の旗が、いつも以上に大きくなびいていた。
ライト方向からレフト方向へ。関門海峡から吹き付ける大きな風は何かを予感させるようだった。
「初回は投げにくかったですが、後半は慣れてきました」
風について小野田のエース・樫山淳が残したコメントである。
だが、その言葉とは裏腹に、まるで風を味方につけたかのような樫山のピッチングは、この試合も冴え渡った。
持ち味である巧みなコーナーワークでカウントを稼ぎ、追いこんでからは思い切って腕を振り、130キロ台のストレートで相手打者をねじ伏せるなど緩急自在のピッチング。下関中央工打線を5安打、9奪三振でシャットアウト。
四球もわずか1つだった。
3回に2番・大庭真聖の右前適時打で先制した小野田は、6回にもチャンスを迎えていた。
2死二塁。この場面で4番・藤田佳大が右中間へ適時三塁打を放ち、小野田が2点をリードした。
“2-0”
そのスコアに小野田ナインは、こんなことが脳裏をよぎった。
昨秋、3回戦の山口鴻城戦で、2-0と2点リードしていた8回裏、一挙に4点を奪われて逆転負けを喫していたことである。
だが、そんなことを吹き飛ばすかのように5番・縄田博樹が放った打球はセンター方向へ飛んでいった。
下関中央工のセンター・徳永剛士が前進し、精一杯飛びつくが、わずかに届かず。打球は後方へ転々とし、打った縄田は一気にホームまで駆け抜けた。
ランニングホームランだ。
「縄田のホームランが大きかった。4点差がついたので、あれで楽に投げられた」(樫山)
この試合、唯一のピンチであった8回も樫山の思いっ切りがよかった。
1死二、三塁で9番・谷川祐太に対して「三振を取りにいった」というストレートで投ゴロ、続く1番・小川仁も左飛に仕留めた。
エースは、試合後のインタビューでこんなコメントを残してくれた。
「1回戦、2回戦も1点差で勝ってきたので、流れがありました」
そう、小野田には“流れ”がある。
(文=編集部:PNアストロ)