鎮西vsルーテル学院
濱投手(鎮西)
変貌を遂げようとする藤崎台に現れた“ニュー鎮西”
近年の熊本市1年生大会では、一昨年、昨年と九州学院が連覇している。九州学院は、その各世代が最上級生になった今夏の甲子園、さらに今秋の九州大会ベスト4とその1年生大会優勝という過程が“聖地”に繋がっているようにも思われる。それは“経験”という大事な意味合いもさることながら将来を嘱望する実力試しの大会であるとも言えるだろう。
先攻の鎮西は、初回から積極的に攻めた。初球もしくは2球目に来たストライクをどんどん振っていった。
その積極的な攻めは、次第に勢いへと変わっていった。
3回、1番・諸永が左翼線へ巧く運ぶ二塁打で出塁すると3番・井手は強烈なライナーを放つ。結果、中前安打となったが、その勢いある強烈な打球に相手中堅手が後逸。その間に諸永はもとより打った井手までも一気にホームインし、鎮西が2点を先制した。さらに6回には7番・田川の右前適時打、8番・重松のスクイズなど積極的な攻めの中にもしっかりと小技を織り交ぜた。
3回、8回、9回ともに2死から2点ずつをもぎ取るなど確実なプレーが得点に繋がっていったことも大きい。
そして昨日の準決勝(2010年11月6日)に続き、連投となったエース・濱のピッチングにも視線が注がれた。
初回から気迫溢れるピッチングをみせ、「特に三振は意識しなかった(濱)」というが、6回1/3を投げ、被安打4、奪三振6と球の切れは勿論のこと、丁寧に低目を突き、ゲームメイクするピッチングテクニックは1年生とは思えない貫禄を感じさせてくれた。
7回からは、サイド気味の右腕・坂田裕、187センチの大型左腕・前田、本格派右腕・中山、技巧派左腕・唐田とバリエーション豊富な投手陣が多彩なハーモニーを奏でた。そして9回2死から再びエースの濱がマウンドに立ち、試合を締め括った。
2年生にお礼をいう1年生(鎮西)
熊本市1年生大会の優勝投手となった濱は「絶対優勝するんだという気持ちで、常に声を切らさないように心掛けた」というようにキャプテンとしてもチームを牽引した。そして「1年生大会に向けて、(2年生の)柿原さんや林さんなどがバッティングピッチャーをしてくれたり、先輩達が準備や応援をしてくれて助かりました」と上級生に対する感謝の気持ちも忘れなかった。
入学直後から鎮西の4番に座る2年生の柿原翔樹は「自分たちが勝てなかったので、(1年生には)絶対勝ってほしいと思っていました。そして(2年生にとっても)いい刺激になります」と慣れないスタンドから声援を送っていた。
また、5回終了後のグラウンド整備では、2年生のキャプテン・村上熙明を先頭に2年生全員が掛け声を出して勢いよくグラウンドに飛び出し、丁寧に整備を行うなど2年生の行った精力的なサポート役も際立っていた。
試合後、鎮西の江上寛恭監督は「濱を中心にコツコツとしっかりやれた。目指そうとしていることにようやく近づいてきた」とチームの成長に目を細めた。
そして「今まで“繋ぎ”という部分が欠けていたので、この1年生をみて、上級生にも発奮してもらいたい。今大会のように繋いでいくチーム作りを目指し“ニュー鎮西”を確立させたい」と冬場の課題もしっかりとあげた。
秋季九州地区大会終了後、[stadium]藤崎台県営野球場[/stadium]のスコアボードは、老朽化のため、32年間の役目を終えた。
今大会中は、そのスコアボードのリニューアルに向け、足場が組まれるなどすでに工事が開始されている。
そんな変貌を遂げようとする藤崎台に現れた“ニュー鎮西”。 熊本の聖地・藤崎台のように今までの伝統に加え、新しい歴史を確実に築き上げていくつもりだ。
そして今大会を経験したすべての1年生にとっては、高校野球で初めての冬を迎えることになる。課題と向き合い、花が咲かない冬の間、しっかりと根を伸ばし、土台を強くしてもらいたい。
来年3月下旬、ちょうど熊本で桜の開花宣言がある頃、藤崎台で花咲かせる舞台が待っている。
(文=PN アストロ)