試合レポート

白河vs光南

2010.07.23

2010年07月22日 開成山球場

白河vs光南

2010年夏の大会 第92回福島大会 準決勝

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雄たけびをあげる柏村(光南)

143球目のストレート

最後、投げるボールは決まっていた。
アウトコース低目へのストレート――。

光南は1回裏、1死からヒットと四球で1、2塁とチャンスを作った。4番・菊池拓斗(3年)はセンターフライに倒れたが、5番・遠藤健太(2年)が右中間へ2点タイムリー三塁打を放ち、先制した。2回には2番・鈴木郁也(3年)のレフトオーバーの三塁打で2得点。光南は3回に1点を失ったが、5回終了のグランド整備までは4-1でリードしていた。3、4、5回と三者凡退に終わり、嫌な流れはあったが、6回に田野裕樹(3年)のタイムリーで1点を追加。リードを広げた。

だが、そこは準決勝の舞台。白河も諦めるわけがない。7回表、光南は反撃をくらう。

1死から8番・邊見直也(2年)がレフト前ヒットで出塁。9番・山田裕太(2年)のバントはサード内野安打になり、1死1、2塁。1番・深谷凌平(3年)の打球は三塁線へ転がった。

2人が還り、点差は2点。2番・緑川賢(2年)は三振に倒れたが、3番・渡邊高章(3年)がレフト線へ1点差に迫るタイムリー2塁打。暴投で3塁に進み、4番・佐藤克哉(3年)が四球で歩くと、5番・小松雅人(2年)の内野安打で渡邊が同点のホームイン。白河が打者一巡の猛攻で5-5の同点に追いついた。

長い、長い守備を追え、ベンチに戻る光南ナイン。菅波智之監督は言った。

「逆転されたわけじゃない。流れはあっちにいったけど、今を見ろ。負けているわけじゃない」

また、振り出しに戻っただけじゃないか。試合は、こっからだ――。

7回裏、この回先頭の鈴木崇浩(3年)が四球で出塁。しかし、1番・鈴木雅土(3年)、2番・鈴木郁也(3年)が連続三振。ここで打席に立ったのは3番・相田将大(3年)。2ボールからの3球目、バットを振りぬくと、低い弾道の打球はグングン伸びて、センターの頭を越えた。盗塁で2塁に進塁していた鈴木崇は悠々ホームイン。勝ち越しに成功した。

8回はどちらも得点ならず。1点差のまま9回表になった。ここで白河が1点を奪えなければ、ゲームセット。

白河実との“白河ダービー”で幕開けした白河の今夏。ここまで勝ち上がってきた底力で1番・深谷がセンター前ヒットで出塁する。当然、2番の緑川は犠打。1死2塁。3番・渡邊のライトフライで深谷は3塁へタッチアップ。2死3塁。打席には4番・佐藤。第1打席ではセンター前ヒットを放っている。一打同点の場面で、光南は4番を迎えた。

ボール、ストライク、ストライク。あっという間に、2ストライク1ボールと追い込んだ。全球ストレートで。

光南の捕手・菊池は初球のボールの時点で「ここはストレート1本でいこう」と決めていた。だから、最後も投げさせるボールは決まっていた。だが、ポンポンと追い込んだことで、わずかだが、間を取った。

「ストレートでいって、抑えるっていうことは頭の中に入っていた。でも、打たれる可能性もある。2ストライクとって、すぐにいって打たれるより、何が起きても混乱しないように、自分に言い聞かせるためにも間を取りました」(菊池)

勝利は目の前。絶対、抑えるという熱い気持ちの中で、頭の中では冷静に状況を見極めた。

「ズバン!」

2年生エース・柏村雄二が無我夢中で投げたという143球目。ボールは迷うことなく、菊池の構えたミットに納まった。佐藤のバットは動かない。主審の手が上がる。見逃し、三振――。

菊池はガッツポーズを繰り返し、笑顔。柏村は歯をくいしばりながら顔をくしゃくしゃにしている。そこに、セカンドの鈴木郁が笑顔で走ってくる。グラウンドの各ポジションから、ベンチから、接戦をものにした光南ナインが駆け寄る。最後に、レフトの主将・鈴木雅がちょっと遅れて列に加わり、ゲームセットが告げられた。

最後までどちらに勝敗がゆくのか手に汗を握る展開だった準決勝2試合目。光南が4年ぶりに決勝進出を決めた。1試合目で勝ち上がったのは夏3連覇中の王者・聖光学院

「決勝の舞台に立てるのは率直に嬉しい。甲子園に行くには、聖光を倒さないと県民のみなさんは納得しない。舞台は整った。最高の舞台。(決勝の相手が)聖光でよかった。自分たちのやってきたことを信じて、気持ちを充実させて。心を込めて、堂々と戦いたいです」(菅波監督)

「明日も今日と同じ気持ちで1試合に集中して、甲子園は考えないでがんばりたい」(柏村)
「相手バッターをしっかり見て、(柏村)雄二と今まで通りコミュニケーションをとって、呼吸を合わせていきたい」(菊池)
「相手を気にしないで、いつもの野球をやって、みんなで1つになって甲子園に行きたい」(鈴木雅)

4年ぶり2回目の甲子園出場をかけて、光南が決勝を戦う。

(文=高橋 昌江


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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