失敗を繰り返さないのがいい選手
2015年をスタートして1ヶ月が経過しようとしています。北海道や東北は雪が深くなかなか外でできない環境にあることでしょう。関東から西にかけてはグラウンドに雪がないものの、寒い環境で鍛えていることと思います。
今年こそは・・・
すべての選手が思う1月です。意氣込みはいいのですが、今夏に向かって「何をどのように」という具体的意識は大切です。
ミスをした時こそ、自分が大きく変わる時
今冬、全国10箇所で選手向け講演会をしましたが、参加した選手には2014年の振り返りをしてもらいました。「どんな1年だったか」の問いに、9割以上の選手が「もっとできた」と後悔しています。
ミスをした時こそ、自分が大きく変わる時。
「2014年1番の失敗は?」
全員それぞれの失敗を思い浮かべます。最終回二死満塁、逆転のチャンスで凡打した打席。ピンチで2番手として登板して火消しを求められていたのに炎上。あの時の失策、この時の失策。
悔しい経験はいつまでも覚えているものです。その日の天候は・・・、●●学校との試合であの場面・・・。誰にでも苦い経験はありますが、重要なのはミスをしたその後です。
「その悔しい経験をした夜、何をした?」
10箇所の講演で何千人の野球選手に問いかけましたが、その夜に悔しくて練習したのはたった5%程度の選手しかいません。ミスをした瞬間は、誰でも悔しいという感情が湧き出てきます。チームに迷惑をかけたという事実、申し訳ないという心になります。
時には涙を浮かべ、自分を責める選手もいますがその感情もその時だけ。悔しいという感情が継続できません。ある指導者は「次に向かってすぐに忘れろ」と言います。私の考え方は真逆です。
ミスをした時こそ、自分が大きく変わる時です。この瞬間を逃しては、同じミスを繰り返す選手になってしまいます。ミスと向き合うのは辛いことです。しかし、乗り越えなければいけないものは、自分の意思で乗り越えるべきです。
プラス思考という言葉で「次」を考えるのは弱い考え方です。正面からミスと向き合い、次リベンジできるように己の意思で乗り越えなければいけません。
最終回二死満塁で凡打した選手は、悔しいという感情を持ちながら、その日の夜に何度も同じ状況をイメージしながらスイングするべきです。実際に打ち取られた投手を思い浮かべ、繰り返しスイングします。
何を考え、どう振れば良かったのか・・・
投手目線で相手の考えていることを想像して、ピンチだからかわす配球を考える投手に対しては「外の逃げ球」を選択しやすい。もし自分はチャンスとばかり速球を狙っていたならばその思考を反省し、相手目線で冷静に球種を読まなければいけないのです。初球はどのように考えるのか、カウントを整えるときには何を選択してくるのか、追い込んだらどう仕留めにくるのか。
チャンス(もしくはピンチ)のときは、打者としての自分の心も揺れます。打たなくては・・・という結果思考から、「考えるべきことを考えられなくなる」傾向は誰にでもあります。エントモイズムは氣合い根性で何とかしようというものではありません。相手の考えることを読みながら、冷静に自分がどうするのかを決めていきます。矢印は自分からではなく、相手に向けてから自分が考えるという野球です。
[page_break:ミスを克服して強みに変える方法とは]ミスを克服して強みに変える方法とは
第10回BFA 18Uアジア選手権で一人黙々とバットを振り、己自身と向き合う姿が印象的だった脇本直人選手(健大高崎)
あの時を振り返ると冷静に考えられていなかった・・・
単純な技術論ではなく、試合で自分の力を発揮するためには「その時に何を考えていたのか」は重要です。よって、その日の夜にスイングをしながら「何が最善だったのか」をしっかりと振り返りまとめておくことが大切です。
投手が打たれた時も同じです・・・
2番手としての準備はどうだったのか、ブルペンで何を考えどのように肩を作っていたのか、登板したときのシミュレーションはどうだったのか。登板した後に、打者目線で考えて投げる球を選択できたか。カウントが進むごとに考えるべきことを考えられていたのか。次の機会にリベンジできるように詳しく整理しておく必要があります。
心と身体の動きは連動しています。考えるべきことの整理ができていないと、同じようにミスを繰り返します。私のコラムでは「成果に繋がる考え方」をたくさんの人が勉強していることでしょう。質を無視した量を求める練習は、本番で力を発揮できません。
ミスをした後、徹底的にその場面を正しい考え方で練習していけば「その場面に強い選手」に変身します。次にその場面が来れば「あれだけ繰り返し準備をしてきた」と心が安定します。何もしていない選手は同じような場面がくれば「嫌な予感」「またうまくいかないかも」とマイナスの結果が浮かびます。
どんな選手にも「ミス」は必ずあります。いい選手は、そのミスを克服して強みに変えていきます。ミスを放置していけば、どんどん課題が山積みになっていきます。
勉強のテストで解答用紙が戻ってきて点数が悪かったとします。ほとんどの人は、テスト直後に勉強しません。「あー、悪かったな」で終わります。大事なのは、テスト後にできなかったところを勉強できるかどうかです。
次に同じような問題が出題されたときにリベンジするためには、解けなかったところにしっかり向き合ってできるようにすることです。テストは現状把握にしか過ぎません。解らなかったところを未来のために、理解することが大切です。
「繰り返しミスをする選手」にならないためには
いつも自分がうまくいかない場面は…?
野球も同じで、ミスをした(うまくいかなかった)現状を未来に生かすためには、「直ぐに修正する」という心が必要です。ミスは誰でもするもの、そこからの行動でいい選手になるのか繰り返しミスをしていく選手になるのかが決まります。
選手向け野球講演で95%の選手が「繰り返しミスをする選手」の行動を無意識にとっています。ミスをした後に放置しているのです。
講演会に参加した選手たちは、「ミスをしたときがチャンス」「それ以降の行動が大切」ということを知りました。ミスと向き合い、次リベンジできるように準備することを知ったのです。
本格的シーズンを目の前にして、昨年のミスを振り返り「今、何をするのか」を考えたほうがいいでしょう。私が全国の野球選手に伝えているのは、自主練習の精度を上げるということです。ここに、次リベンジするための自主練習も意識してやればいいと思います。
いつも自分がうまくいかない場面はどんな場面なのか・・・
打者であれば、走者がいると弱い、走者がいない時に弱い、という様々な状況で自分の傾向もあると思います。状況だけじゃなくカウントも考えると良いでしょう。初球にスイングが大きくなりミス、追い込まれてからボール球を振る・・・様々なカウント傾向が選手にはあります。
自分は何に強くて、何に弱いのか・・・心と身体の動きはセットになっている。
そのときに考えるべきことがズレているかもしれません。本格的シーズン前に自分の考え方の癖を深く考えていけば、修正の糸口が見えてくるかもしれません。
エントモ流「考える野球」、このコラムをもう一度最初から読み直し「成果に繋がる考え方」を理解して欲しいと思います。
(文=遠藤 友彦)