Column

プールエクササイズを有効活用

2012.08.15

アクティブレストの一つとしてプールを利用する

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

まだまだ暑い日が続きますが、選手の皆さんは暑さに負けず元気に練習していることと思います。夏休みなど練習時間、日数が長くなると気になるのが疲労の蓄積です。運動後にクールダウンが必要であるのと同様に、身体を休ませる時にもなるべく動きのある動作を取り入れながら、疲労回復をはかるアクティブレストという方法があります(参考コラム「アクティブレストで疲労回復」)。今回はこういったアクティブレストの中でも夏場に特に取り入れやすいプールエクササイズについてお話をしたいと思います。

水中で行うプールエクササイズは水の特性を活かし、身体の疲労回復を促進する効果が高いと言われています。さまざまな効果について、水の特性とあわせながら説明します。

《血流促進効果》
陸上での運動と違って、プールエクササイズは身体に水圧がかかります。どこまで身体を水中につけるかによって受ける圧力は変わってきますが、身体の表面近くにある静脈は水圧によって適度なポンプ作用を受けることになります。練習や試合後の静脈血は疲労物質を多く含むため、水圧によって血流が促進され、疲労物質の運搬、分解、排出という一連の流れがよりスムーズになることが期待できます。疲れたときに起こりがちな足のむくみなどにも水圧によって改善されやすくなります。

《リラクゼーション効果》
水による浮力によって、普段体重を支えている筋肉や関節は重力によるストレスから開放されて負担が少なくなります。特に腰背部の筋肉は身体を支えるために常に緊張した状態にあるため、浮力によってこういった緊張を解きほぐすことでリラクゼーション効果をもたらします。同じく体重がかかる関節部分(荷重関節)についても、浮力によって普段の物理的ストレスから解放されるので負担が少ない中で運動をすることが出来ます。

《優れた有酸素運動》
水は空気の約20倍も熱を伝えやすい性質を持っており、水中にいると人間は体温が奪われやすくなります。水中で体温を一定に保つためにはより多くのエネルギーを消費するため、少ない労力でより大きな運動効果が得られます。また首まで水中につかった状態は水圧の影響を受けるため、通常に比べて肺活量が約9%減少すると言われています。陸上と同じ量の酸素を吸うためには、呼吸に関わる筋肉を活発に動かすことになり、こういった作用は心肺機能の強化につながります。

《痛みに対する感覚の低下》
水は痛みを感じる部位の痛覚を、別の刺激(例えば温冷感覚)によって低下させることが出来ます。また浮力などによって痛みの部分を重力によるストレスから解放し、筋肉の緊張を和らげるためリハビリテーションなどにも用いられます。


歩く、泳ぐだけではなくただ浮くこともリラックス効果あり

実際のプールエクササイズを行う際には、運動前のウォームアップを必ず行ってから始めるようにしましょう。突然、水の中に飛び込んでしまうと身体が温度変化にビックリして、筋肉が収縮し、思わぬケガなどにつながってしまうので注意が必要です。

ウォームアップ後は軽くウォーキングを行ったり、ストレッチを行ったりしながら筋肉の緊張を和らげ、疲労回復に努めます。ウォーキングでは普通に前歩きだけではなく、横歩きをしたり、後ろ歩きをしたりと、普段あまり使っていない筋肉なども意識して動かすようにすると、水の抵抗によるトレーニング効果も期待出来ます。歩幅もいつもより大きくランジ動作を意識して行うようにすると、運動負荷も高まります。

また筋肉がゆるみリラクゼーション効果が高まると、関節の可動域(関節の動く範囲)もより広がりやすくなるので、股関節を軸とした足のスイングや、肩関節のスイング動作を行うと関節そのものの柔軟性も高まります。ビート板などを使って身体を横たえて力を抜き、浮遊した状態をつくり出すこともまた疲労回復には効果的です。

このようにプールエクササイズは単に泳ぐだけではなく、さまざまな運動を通して疲労回復を促すことが出来るので特に夏場にはオススメのアクティブレストです。ただし発熱している状態や睡眠不足等、あまり体調が優れない状態でプールに入ってしまうと、体内の熱が奪われて風邪をひいてしまう、さらに体調が悪化してしまうということにもなりかねません。少しでも体調が思わしくないときは陸上での軽めの運動で切り上げて、十分な栄養と睡眠をとるようにしてくださいね。

【プールエクササイズ】
●プールエクササイズは水の特性を活かし、身体の疲労回復を促進する
●水圧による血流促進効果、足のむくみなどにもよい
●浮力によるリラクゼーション効果で筋肉の緊張をほぐす
●水の熱伝導、水圧によって心肺機能が強化される
●プールエクササイズの前には必ずウォームアップを行うこと
●ウォーキングも歩き方、歩幅の工夫次第でトレーニングにもなる
●体調が思わしくないときはプールエクササイズは控えましょう

(文=西村 典子

次回、第51回公開は08月30日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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