ベストコンディションをもたらす試合前日の過ごし方
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
寒かった冬も過ぎ去り、野球をするのにいい季節がやってきました。高校野球をはじめ、さまざまなスポーツが本格的なシーズンを迎えます。今月下旬からはセンバツ大会が始まりますし、地区大会が始まる地域もあるでしょう。さて今回は公式戦を想定し、自分のコンディションを良い状態で迎えるために心がけたい試合前日の過ごし方についてお話をしたいと思います。
試合前日は短距離中心。食事で気を付けるべきことは?
試合前日は短いダッシュを繰り返し、身体のキレを意識する
【普段どおりの練習と短ダッシュでキレを出す】
試合前の練習では普段どおりのセルフコンディショニングを行いましょう。特にまだまだ肌寒い日もありますので、入念なウォームアップを行ってからメインの練習を行い、練習後はクールダウンを兼ねてストレッチを行います。夕方などで身体が冷えやすい場合であれば屋内に移動することも構いませんし、時間が短いようなら帰宅後に行っても構いません。疲労がたまって翌日のプレーに影響を及ぼさないように、身体のケアは入念に行うようにしましょう。
前日の練習でランニングを行う際には、試合を想定して短いダッシュを行うようにします。スタートの反応は笛など音によるものではなく、視覚を意識し、目からの情報判断でスタートを切る練習を繰り返しておくと良いでしょう。ランナーを想定する場合はキャリオカなどの腰切り動作などで上半身と下半身の動きを分ける意識づけを行うことも大切です。ただし短いダッシュは運動負荷が高くなりがちなので、トレーニング量が多くなりすぎないように短時間で行い、納得のいく動作で終わるようにします。
【試合前日の食事はここに気をつける】
普段から栄養バランスの良い食事をとることが理想的ですが、翌日の試合にベストコンディションで臨むためにはいくつか意識しておきたいことがあります。確認しておきましょう。
《たくさん食べておきたいもの》
・エネルギー源となる炭水化物(ご飯・パン・うどん・餅・パスタなど)
・果物類(みかん・りんご・バナナ・キウイなど)
身体の中に蓄えておきたいエネルギー源として炭水化物を多めにとっておくようにします。またこれと並行してビタミンやミネラル分・水分を多く含む果物類もぜひ付け加えておきましょう。あとはおかずや野菜類、乳製品などですが、こちらは人によっては胃腸に負担がかかったり、お腹がゆるくなりやすかったりするので、いつも食べている量よりも少なめにしておく方が良いでしょう。また食事時間も寝る3時間くらい前までには済ませておくようにすると睡眠の妨げにもなりません。
《避けておいたほうがよいもの》
・脂質が多く消化に時間のかかるもの(揚げ物や生クリーム・バターなどを多く使ったものなど)
・生もの(お刺身やお寿司など)
・食物繊維を多く含む根菜類(たけのこ、ごぼう、サツマイモなど)
・普段食べ慣れていないもの
試合前日に限っていえばこうしたものはなるべく避けるようにしましょう。翌日に腹痛などを起こすリスクをなるべく減らすためです。また普段食べ慣れていない豪華な食事を食べたい気持ちは理解できますが、これは試合が終わった日などにご褒美として食べるようにしましょう。
[page_break:試合前のメンタルコントロール法と睡眠法]試合前のメンタルコントロール法と睡眠法
特に公式戦の初戦は緊張してしまうもの。普段どおりのパフォーマンスができるよう前日から準備しておこう。
【緊張をコントロールする】
試合前日となるとどうしても身体に力が入って緊張してしまうことが考えられます。「緊張しているかな」と感じたら、ホットココアやホットミルクなど温かい飲み物を飲むと身体の中から温まってリラックス効果が期待できます。いろいろと考えてしまう場合は、試合前の準備としてさまざまな場面を想定し、シミュレーションをしておくことも良いですね。ただし考えごとをするときは布団に入ってからではなく、身体が起きている時間帯にしましょう。布団の中で考えてしまうと今度はなかなか寝つけないといったことが起こります。入浴後にストレッチを行うことも筋肉がゆるむので、緊張感を和らげることにつながります。試合前は誰でも多かれ少なかれ緊張するものであり、今まで積み上げてきた練習に自信をもって臨みましょう。
【試合から逆算して睡眠時間を確保する】
睡眠不足は身体のコンディションを崩してしまう大きな原因の一つと考えて良いでしょう。ベストコンディションで試合に臨むためには十分な睡眠は欠かせません。翌日の試合開始3時間前には食事をとっておきたいので、逆算して起床時間を設定しましょう。9時から試合開始の場合は6時頃には朝食をとっておくことが望ましく(その後も補食などでつなぎますが)、6時に食事をとるためには何時に起きなければならないのかを想定して起床時間を決めておきます。また起床時間から睡眠時間を差し引くと、前日の就寝時間を決めることが出来ます。このように試合前日は自分自身の「時間割」をつくってしまうと良いですね。
また寝るまでの準備として入浴後にストレッチを行って副交感神経を優位に働かせ、就寝前にはスマホやパソコン、テレビなどの明るい画面は避けるようにすることも大切です。寝つきが悪いと感じている選手はぜひこうしたことも心がけるようにしてくださいね。
(文=西村 典子)