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【第97回長野大会展望】ノーシードの実力校が偏った混戦必至の長野大会!

2015.06.29

 第97回全国高校野球選手権大会長野大会の組み合わせが27日、決まった。参加は2つの連合を含む86チーム。8つのシード校のブロックに、ノーシードの実力校が偏った形で入ったとも言える抽選結果。春の北信越大会を制し(試合レポート)、2連覇を視角にとらえた佐久長聖か、春夏連続の甲子園を狙う松商学園か。第1~4シードのブロックごとに長野大会の展望を紹介する。

【第1シード・佐久長聖ブロック】

榎 海人(佐久長聖)

 昨年秋の大会では地区予選で敗れ、県大会進出を逃している佐久長聖。しかしこのは県大会を制すと、地元開催の北信越大会でも決勝でセンバツ覇者・敦賀気比に4対3で競り勝ち優勝(試合レポート)。一気に本命に躍り出た。
不安視されていた投手陣の踏ん張りが浮上の大きな要因。主に5人の右腕で公式戦11試合を乗り切ってきた。中でも軸となりそうなのが、3年生の榎 海人北原 大雅、2年生の小林 玲雄の3人。速球は130キロ前後と決して速くはないが、丁寧に低めに集め、スライダーなどキレのある変化球とのコンビネーションが生命線になっている。

 野手陣は、昨夏の甲子園レギュラー組4人が残る。森井 鴻太朗(3年)、元山 飛優(2年)の二遊間コンビは、非力だった打撃も力強さが加わり中軸に成長。甲子園では4番だった田辺 直輝(3年)が不振で下位に回ることもあったが、代わった宮川 海斗(3年)が広角に打ち分けるセンスの高い打撃で埋め合わせた。甲子園経験者のマッカーシー龍海鳩(3年)も調子を上げており、ここに田辺に本来の強打が戻ってくると相当打線に厚みが増してくる。
PL学園監督でもある藤原 弘介監督が就任して以来、3年連続で決勝進出し、うち2度優勝。夏への合わせ方を熟知した指揮官の下、やはりこの夏も上昇気流に乗ってきた。

 準々決勝までの枠には、平林 俊太(3年)擁する東海大三が入った。昨年のセンバツでも登板した県内屈指の速球左腕は、その爆発力が驚異。課題の打線がつながると面白い。
春の県大会に進んだ上田染谷丘富士見には右腕エースを軸に能力の高い選手もいて安定した戦いができる。昨秋は県大会に進んでいる松本蟻ヶ崎は、右横手の技巧派・大村 真郷(3年)が制球に優れ、強振してくる打線にはその緩急交えた投球が厄介になりそう。

 対抗となるのが第8シードの長野日大ブロック。その長野日大はプロも注目する185センチ右腕・川上 清敬(3年)はじめ個の能力の高さは県内屈指。川上は春先からの出遅れが響き、春季大会は本来の体調に戻っていなかったが、随所に大器の片りんを見せるキレのあるボールを放っていた。ほかにも183センチ左腕の藤澤 光希(3年)、右の快速右腕・大島 世己(3年)が控え投手陣は充実している。
攻撃も右の橋爪 高彬(3年)を4番に、服部 健也(3年)、川上が前後を固める打線は非常に強力。ただ、このは好投手に対してはもろさも見えただけに、いかに個の力を組織力にできるかが鍵になる。

 同じブロックには、好投手石黒 裕也擁する長野西、古豪丸子修学館、さらに投手陣の成長著しい岡谷南と難敵が入った。また高校再編で須坂商業と須坂園芸、さらに統合による新校・須坂創成による連合チームが初めて夏に挑むことになる。

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第97回全国高等学校野球選手権大会
僕らの熱い夏 2015
【ひとまとめ】2015年の全国各地の高校野球を占う!
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【第4シード・松本第一ブロック】

足助 章(松本第一)

 公立校のしぶといチームが固まったが、投手陣充実の松本第一が一歩リードの状況。松本第一は3年右腕の立石 潤足助 章の2枚看板が故障で登板が少なかった分、2年生投手が経験を積み急成長。左の吉原 快は、右打者のインコースに投げ切る独特の角度を持ち、190センチ右腕の若林 洸は角度を生かして相手打線を苦しめた。プロ注目の立石も順調に回復しており、3年生が戻ってきた投手陣は県内トップクラス。
打線も故障していた主砲・牧 秀悟(2年)が戻ってくるのが好材料。ここ10年間で準優勝2回など上位常連校に名を連ねるようになった松本第一だが、今季は投打が充実した布陣となった。

 同じブロックには春の県大会に出場するなどした好投手のいる公立校がまとまった。松川島崎 健斗(3年)、松本工川上 泰寛(3年)、飯田風越・橋本 渉、岩村田酒井 亮多(3年)の右腕に注目したい。

 対抗となるのは第5シードの長野商ブロック。最激戦区となった。一昨年4強、昨年準優勝と公立勢では抜き出た安定感を誇る長野商。今年も塚田 優斗(3年)、中野 太輔(2年)の左2枚看板を軸にしたしぶとい戦いぶりは健在。ただ故障の中野の状態がどこまで戻るか。一方で2年生右腕・宮崎優介の成長も著しく、投手陣は計算できそうだ。

野手陣は県大会で中軸を任された栗木 捷人栗林 勇人の2年生コンビはじめ流動的な要素を残す。それだけチーム内の競争は最後まで活発。母校を率いて3回目の夏になる池田 剛幸監督がどんなオーダーを組んでくるか。

 長野商のすぐ隣には、昨秋北信越大会に進んだ小諸商が入った。この春は地区大会佐久長聖に3対4で競り負けたものの(試合レポート)、ノーシードとしてはこの上ない難敵。矢嶋 航大(3年)、山口 玄(3年)の左右2本柱が安定し、中軸の吾妻 光一朗(3年)はじめしっかり振れる打者をそろえる。
さらに、春は地区予選松商学園に3対4でサヨナラ負けした東京都市大塩尻も名を連ねた。エース・石田 航大(2年)が本来のキレのあるボールを投げてくると手ごわい。シード校の長野商にとっては初戦からトップギアに入れた戦いを強いられることになる。

 このほか、春高校再編で3校(1校は1学科)が統合し、あの新たに開校した佐久平総合技術が初めての夏に挑む。

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【第2シード・上田西】

草海 光貴(上田西)

 ノーシードの実力校がいくつか入ったが、総合力では春県準優勝の上田西が抜けている。上田西は2年生エース・草海 光貴が投げた試合はとにかく強い。167センチの小柄な体格を感じさせない威力のある速球とキレのあるスライダーに加え、打者に応じた投球は天性のセンスとも言える。2番手以降の柳沢 奨太(3年)や左の坂本 貫太(2年)らがいかに草海の負担を減らせるか。打線はスラッガータイプはいないが、好調の1番・河野 誠也(3年)、中軸を打つ三井 崇平(3年)、大藪 将也(3年)など勝負強い打者が並ぶ。機動力を使えるのも強みだ。

 上田西にとって最大の難関は、両チームが勝ち進めば3回戦で対戦する長野工。182センチの長身横手・片塩 響介(3年)は130キロ後半のストレートと切れ味抜群のスライダーで〝信州のドクターK〟的な奪三振を誇る。
昨秋県8強の飯山北・飯山連合、1年生の入部で底上げを図った創造学園なども実力を秘める。

 対抗となる第7シードの伊那弥生ケ丘ブロック。伊那弥生ケ丘はこの
今春、絶対エース・金田 裕亮(3年)が本調子でない中、2番手以降の投手陣をやりくりし、成長した攻撃力できっちりシードを獲得。もともとバランスのいい投球をする金田の状態が戻ってくるとさらに崩れにくい。北原 凛太郎(3年)、北條 玄(3年)の1、2番コンビの足にも注目したい。

 同ブロックには地球環境が入った。春は不安定だった投手力がどこまで上げられるか。春の大会で大けがをした主砲・本木 優太(3年)は間に合いそう。長野東は右エース・堀内 綜一郎(3年)を軸に攻守にバランスがいい。

【第3シード・松商学園】

 1991年にセンバツ準優勝、夏ベスト8に入った松商学園以来、県勢としても春夏連続の甲子園出場が懸かる松商学園のブロックは、比較的戦いやすい顔ぶれとなった。

 センバツでは県岐阜商の高橋 純平の前に2安打、1対4で敗れた松商学園試合レポート)。上位陣の打撃、走力は県内でも随一の迫力があるが、春の大会では軸となる投手が不在のままだった。右の小澤 駿にめどが立ったが、やはりエース・恩田 佑哉(3年)の復調は不可欠。力みから制球に苦しんだが、意識の面から立て直せるか。攻撃陣は50メートル6秒を切る、1番・百瀬 雅也(3年)と3番・船崎 星矢、長打も出るようになった4番・新倉 健太と甲子園組は健在で、下位打線のつなぎが好投手攻略の鍵になる。

 同じブロックには、春の県大会出場校はいないが、には出場している屋代松本県ヶ丘、さらに打線に力を付けてきた野沢南篠ノ井などが食らいつけるか。創部100周年の岡谷工も節目の年に躍進したい。

 対抗するのは第6シードの田川ブロック。田川は走者を出してから強い左腕・西牧 勇希(3年)が軸。春の大会後は、打撃強化に力を注いできており、攻撃陣は西牧を援護したい。
このブロックは、ほかに秋春で県大会出場校がいない珍しい顔ぶれ。ただ、長野吉田須坂東上田千曲、さらに昨夏4強の上伊那農とあなどれないチームが入ってはいる。

 本命不在の混戦が予想されている長野大会。昨年もベスト4にノーシードから2校が入り、その一つの佐久長聖が優勝している。今大会もどんなドラマが待っているのか―。

(文=小池 剛

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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