甲子園前半を振り返る
甲子園前半を振り返る2011年08月10日
14日をもって2回戦が終了した。いよいよ3回戦に突入する。ここまでの総括を行っていきたい。
【個人編】
甲子園初日には好投手が登場。金沢の剛腕・釜田 佳直は投手として大きく成長した。変化球の切れが向上し、攻めの幅が広がった。そしてペース配分を意識し、フルに150キロを狙うのではなく、常時140キロ前半と抑えて、展開次第で力を入れる投球を披露。今年のセンバツ時に比べて、ペース配分ができるようになり、一試合安定した投球が出来るまでに成長した。
そして、大会7日目にその釜田と投げ合い敗れた聖光学院の歳内 宏明も、昨年よりも成長した姿を見せてくれた。ウエイトトレーニングにより体つきが逞しくなり、ストレートのスピードが常時140キロ~145キロまでスピードアップ。得意のスプリットを織り交ぜたコンビネーションはとても高校生では打ち崩せるものではなく、2試合で30奪三振。エラーになっても折れず、投げることができるメンタルの強さも魅力的だった。
大会3日目には唐津商の北方悠誠が登場。北方悠は2回戦で作新学院に敗れたが、1回戦ではいきなり最速152キロを計測する豪速球を披露し、さらに140キロを超える高速スライダーを見せるなど、その能力を大舞台で存分に発揮した。歳内、釜田に比べると、終盤になると打ちこまれやすい粗さはあったが、将来が楽しみな剛腕だった。
大会4日目は、英明の松本竜也が登場した。193センチの長身から角度・キレを兼ね備えた140キロ台のストレートと落差のあるフォークのコンビネーションで糸満打線を1失点に抑え完投。制球力も高く、評価は一段と高まってきているが、2回戦では能代商業に敗退。それでも、ドラフト上位が噂される逸材だ。
智弁和歌山は、山本隆大が今春のセンバツから成長を示した。昨年の西川 遙輝を模倣した打撃フォームから長打・巧打を兼ね備えた選手に。1回戦の花咲徳栄戦で放ったバックスクリーンは見事。強肩も披露し、走攻守三拍子揃った外野手として3回戦以降も注目していきたい。
第5日目は日大三が日本文理の波多野陽平、田村勇磨の二枚看板を打ち崩した。エース吉永健太朗も13奪三振。この日の第2試合には開星の白根尚貴が登場。昨夏の甲子園よりもストレートのキレ・制球力が格段に向上し、完封勝利を収めた。2回戦では日大三と激突。激しい打撃戦となったが、11対8で日大三が競り合いを制した。先発した白根は序盤に失点を許し、一時はマウンドを下りた。しかし、バッティングで5打数4安打の活躍をみせチームに貢献した。緒戦では投手として、2回戦では打者としての存在感を示した白根は今秋のドラフト候補でも注目選手の一人だ。
西武で活躍する銀仁朗の再来といわれた龍谷大平安の高橋大樹は、初戦の新湊戦でレフトへ大ホームラン。荒削りだが、スイングスピード、長打力は今大会でも随一。惜しくも負けてしまったが、今後が楽しみなスラッガーだった。
第6日目に登場したのは、東洋大姫路の原樹理。本来の調子ではないと思うが、投手としての完成度の高さは今大会随一。上背はない投手だが、それを補うほどのセンス・完成度・メンタルの強さがあった。そしてスラッガーとして芽が出たのが光星学院の川上竜平だ。強烈なヘッドスピードから放物線を描いた本塁打は見事であった。投手としてのセンスも良いが、野手としての将来性も高い。3回戦以降の活躍も楽しみだ。また、徳島商業の龍田祐貴は最速148キロを計測した本格派右腕だった。
第7日目は智弁学園の青山大紀に目を惹いた。投手としては140キロ台の速球に多彩な変化球を投げ分けるセンス、そして野手としては抜群のバットコントロールが光った。そのパフォーマンスだけではなく、何か他の選手にはない落ち着きと雰囲気がある。今後の野球界を盛り上げてくれるほど、楽しみな逸材であることは間違いない。
【チーム編】
チームとしては、ここ最近甲子園で白星から遠ざかっていた県の活躍が目立った。破壊力を秘めた作新学院。そして、おらが町の代表・新湊。臥薪嘗胆の能代商業だ。
2007年以来の文星芸大付属以来の勝利がなかった栃木県。今年は作新学院が2勝を挙げる活躍を残している。今年の作新学院の売りは打力だ。上位下位切れ目なく長打が打てる打線は強力で、投手力のある福井商業から9点を奪う猛攻をみせた。さらに2回戦では、最速153キロ右腕・北方(唐津商業)を攻略。逆転勝利で3回戦に進出を決めた。その積極的な打撃だけではなく、2年生右腕・大谷樹弘、抑えの飯野徹也の二枚看板も安定感をみせた。
新湊は、初戦で龍谷大平安に4対1で勝利し、大金星を挙げた。新湊はなんといっても大応援団だ。打つたびに大歓声、守ってベンチに戻るたびに大歓声。甲子園の雰囲気を支配した応援だった。
能代商業は「臥薪嘗胆」という言葉が似合うチーム。昨年は初戦で鹿児島実業に0対15の大敗。しかし、その雪辱を果たすために秋田に戻ってからは練習メニューから見直し。そして、あれから一年。今年は同じ鹿児島代表である神村学園に逆転勝利を果たした。さらに2回戦では、大型チーム・英明を2対0で完封。見違えるほど立派なチームに成長した。
また、ここまで安定した試合運びを見せる習志野や、2戦連続で延長戦を経験している如水館といった強豪校の活躍も見逃せない。県大会から粘り強く勝ち続けている横浜、九州国際大付属に勝利し、まずはセンバツ準Vの壁を破った関西といった甲子園常連校も、虎視眈々と優勝を狙っている。
いよいよ15日から3回戦に突入。これからも激しい戦いが繰り広げられていく。