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なぜスーパー中学生は大阪桐蔭を選ぶのか?圧倒的な出口の強さは育成システムと指導者の信念の強さが生んでいる

2022.04.03

 今年のセンバツで圧倒的な大差で優勝した大阪桐蔭。この優勝に大阪桐蔭の特集が多く組まれているが、改めて大阪桐蔭について特集したい。

スーパー中学生が選ぶ大阪桐蔭 なぜ人気が続くのか?

なぜスーパー中学生は大阪桐蔭を選ぶのか?圧倒的な出口の強さは育成システムと指導者の信念の強さが生んでいる | 高校野球ドットコム
伊藤櫂人、別所孝亮、海老根優大、松尾汐恩、星子天真

 大阪桐蔭については「選手が集まりすぎる」との声が多い。確かに選手の経歴が凄いのは事実だ。今春ベンチ入りした選手の中で、代表歴があるのは以下の通り。

【硬式U-15代表】
海老根 優大(東都京葉ボーイズ)

【ボーイズ代表】
伊藤 櫂人(西濃ボーイズ)
松尾 汐恩(京田辺ボーイズ)
星子 天真 (熊本泗水ボーイズ)

【NOMOジャパン】
別所 孝亮(岐阜中濃ボーイズ)

 その他にも各地方で実績のある選手が多く、全国のエリート中学生が門を叩いている。大阪桐蔭は選手が希望して入れるチームではなく、大阪桐蔭側が入部選手を選ぶ。そのため年間20人程度が入部する。経歴が素晴らしい選手は多い。ただ大阪桐蔭だけが独占しているかといえば、違うと断言したい。

 また、全国クラスの名門校にも日本代表の経歴を持った選手が入部しており、この媒体でも多くの学校のドラフト候補を紹介しているように、人材は多くいる。

 

 大阪桐蔭は少数精鋭のシステムを取っているのも、強さやブランド力を維持している1つの要因といえる。例年、1学年20人程度。少数精鋭システムの利点は選手の進路のケアをしやすいことだろう。大阪桐蔭の卒業生を追っていくと、ほぼ全員が硬式野球継続。プロの世界や大学、社会人で第一線で活躍するレギュラーはもちろん、高校時代、ベンチ外だった選手が大学球界で活躍するケースが多い。これは大阪桐蔭の特徴だといえる。圧倒的な出口の強さが魅力的だ。

 なぜこのように控え選手が活躍できるかというと、個々の能力を伸ばす機会をしっかりと設けられている点が挙げられる。今では有名となったが、大阪桐蔭は秋季大会の公式戦を終えると、これまで出場がなかった控え選手の練習試合が多く組まれる。

 西谷監督は「生駒フェニックスリーグですね」と笑う。打者は50~60打席が与えられ、投手も複数イニングを投げ、多くの経験を積む。さらに冬場の練習は組織的な練習から離れ、個人のレベルアップに取り組む。実戦経験+冬の練習で多くの選手の能力が引き上げられ、秋と春でメンバーが入れ替わることが多い。ベンチ入りができなくても多くの選手が豊富な実戦経験で技量を伸ばすことができており、次のステージで活躍できる土台が出来上がっている。これは1学年20人程度の少数精鋭の運営だからこそできているといえる。


 システム面でも優れているが、中学生が大阪桐蔭を選ぶ理由の1つが、純粋に甲子園で活躍する姿を見て憧れることが多いのもあるだろう。大阪桐蔭はただ勝っているのではなくて、スケールの大きい選手が完成度の高い野球を実現して圧倒的な強さを魅せる。甲子園の活躍を見て大阪桐蔭の門を叩いた選手も多い。

 たとえば中日のホープである根尾昂外野手は、「グラウンドに立っている姿から他の高校と違って、存在感が違いましたし本当にかっこよかったですね。僕もこうなれるのかなと思いました」

 日本ハムの柿木蓮投手は「自分が高校進学を決める上での基準は『自分を高められる』学校だったんです。最初から投げられる学校ではなく、一からスタートして、競争できるようなレベルが高い学校でプレーしたいと思っていました。

 その点で大阪桐蔭はまさに『自分を高められる学校』と思い入学を決意しました」

 今年の大学生を代表する大型二塁手・大阪桐蔭山田健太内野手(立教大)も「全国制覇をしたかった気持ちが強かったので、そこに近いのは大阪桐蔭だと思って入学を決めました」など全国制覇をしたい思いや、自分を高めたい、プロに行きたいという思いを持って大阪桐蔭の門を叩く選手が多い。

 ただ、その中でも大阪桐蔭に進むのは相当な覚悟の表れだ。ハイレベルな選手との争い、練習量の絶対的な多さがある。練習も非常に緻密で、投手が投げる実戦練習では、西谷監督から矢継ぎ早に指示が飛び、状況判断を徹底的に磨く。さらにトレーニング量も多い。また携帯電話も禁止で、情報も遮断されている。相当な覚悟がなければやり通すことはできない。今は携帯電話を使ったり、選手の連絡ツールにLINEを使う野球部もある中でだ。

 そういう環境でも親元を離れ、覚悟を持って大阪桐蔭を選ぶ選手は本当に凄い。西谷監督をはじめとしたスタッフ陣が本気で選手に向き合っていることが強さを生んでいる。大学に進んだ選手の野球ノートを見ると、西谷監督の叱咤激励の一言が選手の心に響く内容となっている。

 今年のセンバツに関しては大阪桐蔭の練習の成果がしっかりと表現された大会だったのだろう。西谷監督も「こんなに打てるチームではない」と語るように、選手のポテンシャルは歴代トップクラスかというとそうでもなく、去年のチームのほうが上だと思う。

 ただ、選手の能力の高さが試合の結果に反映するわけではないのが野球の難しさ。今年に関しては練習の成果を最大限に発揮できた稀有な世代であることは間違いない。

 今回の優勝でさらに憧れを持つ中学球児は多くなることだろう。これからも誰もが絶賛するスター、誰からも尊敬されるヒーローは出てくるはずだ。

(文=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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