県立中部商業高等学校(沖縄)【後編】
「勝つための」ルーティンから11年の扉を開ける
6月9日(火)に行われた第97回全国高校野球選手権沖縄大会抽選会において、初戦は27日(土)に[stadium]北谷公園野球場[/stadium]・第2試合で沖縄向陽と対戦することが決まった[team]中部商[/team]。彼らにとっては沖縄大会初参加から50年目のメモリアルイヤーでもある。
過去に2002・2004年と2度、夏の甲子園出場を果たし、4名のプロ野球選手も輩出している名門は、昨秋九州大会ベスト8、春の県大会準々決勝敗退を糧に、どのような気持ちで日々の練習を取り組んでいるのか?4人の選手と宮城 隼人監督にお話を伺ってきました。
後編では勝利に結びつけるための「ルーティン」と11年ぶりの甲子園出場へかける意気込みを語って頂きます。
「勝つための」ルーティン
前田 敬太選手(県立中部商業高等学校)
前編で触れたように、着々と弱点を克服している中部商。では、最後の夏に勝ち切るために意識していることとは?彼らからは「ルーティン」という思わぬ答えが返ってきた。
前田 敬太(投手・3年)
「例えばロージンバックも自分の左側に置くようにするとか。ゲン担ぎだとしても、それが自分の中でスイッチが入れば良いと思います」
稲福 祐志郎(遊撃手・3年)
「自分は1番を打っていますので、とにかく塁に出て足でかき回すことを意識しています。あとは先頭打者だと緊張するので、打席に入る前に2回ジャンプして、5回強くスイングして打席に入るようにしています」
稲福 祐志郎選手(県立中部商業高等学校)
知念 琢朗(左翼手・3年)
「自分も体がすぐに動けるように準備をしっかりしておくことを意識しています」
選手一人一人が、パフォーマンス前の動作から気を遣うことで、良いパフォーマンスを発揮することができる。さらに、それらのルーティーンを行わないときは、パフォーマンスの質が落ちることまで語ってくれた。
となると、これは単なる「ゲン担ぎ」や「運頼み」の領域ではない。勝ちへのイメージを一人一人が持つために、一つ一つの小さなパフォーマンスまで気を遣う「徹底」の1つと言えるだろう。
その徹底ぶりは、野球以外の部分でも見られる。前田が朝練や授業中における「ルーティン」を明かしてくれた。
「朝練のときは、自分たちのチームはユニホームではなく軽装なのですが、だからこそ、その日の朝の練習シャツは同じもので揃えています。それと授業中では、居眠りしようとする部員がいたら、やはり同じ野球部の仲間で気づいて注意しあうとか。生活面でもしっかりしないと甲子園は自分たちを呼んでくれないと思っています」
気持ちをそろえ、整える。野球だけではなく、生活面でも隙を作らないことを意識する。練習前には、その練習の目的を再確認するなど、徹底した意識をもって日々を送っている彼ら。これこそが中部商の「ルーティン」であり、勝敗を分ける一致団結度を高める礎となっている。
11年ぶりの聖地へ向けて
知念 琢朗選手(県立中部商業高等学校)
目前に迫った夏。最後に11年ぶりの聖地へ向けた意気込みを知念 琢朗と宮城 隼人監督に語ってもらった。
まずは知念。
「秋に比べて自分たちの体も一回り大きくなりましたが、春で結果が出なかった。準々決勝で豊見城に負けた次の日から、自分たちはまだ弱いと受け入れて、夏へ向けてしっかりいこうと。監督やスタッフ陣も甲子園出場はまだないし、もちろん自分たちの目標も甲子園。みんなで叶えようと前よりも気持ちが強く、ハードなトレーニングになってもこなしていけるようになりました。精神面で強くなっています」
ミーティングをする宮城 隼人監督(県立中部商業高等学校)
確かな自信と想いがそこにはある。その想いを最も感じているのが宮城監督だ。
「例えば僕が練習量を100に設定したとするじゃないですか。手を抜いて80くらいで終わるのが普通の高校生。だけど彼らは110、120までやりましょうと言ってきた。そしたら秋の大会は優勝。彼らが頑張っているのが僕には凄く伝わる」
だからこそ、ベンチも準備に怠りはない。
「僕も他の試合の映像などを見て、戦局や状況など、どこでスクイズが成功するか、どうやったらエンドランが成功するかなど、より勉強しています。僕が生徒たちに対して、偉いな、凄いなと思ったのは久し振り。僕の目標でもある甲子園出場の初切符は、彼らと一緒に成し遂げたいですね」
その第一歩は6月27日(土)[stadium]北谷公園野球場[/stadium]。そして中部商の気持ちが6つ連なった先には7月19日(日)[stadium]沖縄セルラースタジアム那覇[/stadium]での11年ぶりの歓喜、そして聖地甲子園が待っている。
(取材・文=當山 雅通)