Column

駒込高等学校(東京)【後編】

2015.06.06

「一隅照らした」春を超え、夏の明るさへ

 2013年秋の東京都大会を制し昨年のセンバツ出場。2回戦明徳義塾と互角の戦いを演じた関東一。が、秋の大会初戦となった[team]駒込[/team]戦は苦しい試合展開だった。7回までに1対3の2点ビハインド。8回の3得点で逆転を果たした関東一だったが、この試合をきっかけに「[team]駒込[/team]」の名は一躍注目を浴びるようになった。

 そんな[team]駒込[/team]は、その後も強豪・帝京と接戦を演じるなど強豪校相手に健闘を続ける。今回は昨秋から半年間の取り組みと、最後の夏へ向けての意気込みを語っていただいた。後編は今年2月、衝撃の「1年生主将就任まで」以後のお話を……。

待ち望んでいた「最上級生の反発」

大澤 諒主将(駒込高等学校)

「2年生たちからすれば「俺たちは信頼がないのか!」と思ったかもしれません。でもこれが、まとまる大事さに気付くきっかけになれば良いと思いました。まとまれば絶対に強くなるチームだと思っていましたので。そこで先頭として前に出てきたのが現在、主将の大澤 諒だったんです」

 その時、金丸 健太監督が待ち望んだ反発が生じた。では、当の2年生たちはどう思ったのだろうか。現在主将の大澤が語る。
「悔しいと思いましたが、1年生たちがキャプテンをやらざるを得ない状況にしたのは自分たちに責任があるわけで、それは悔しかったです。でもあれで、僕の心に火が付いて、自分が前に出て引っ張っていこうと思いました」

 その反応を待って2月中旬、金丸監督は改めて主将を変える。もちろん主将は最上級生の大澤。そして2年生17人全員が集まった。
「このままではいけないと話し合って、チームが決めたことに一つになって取り組んでいこうと気持ちを新たにしました」(大澤)。
かくして駒込は再び上昇気流に乗っていくことになる。

主将交代と150キロ打ち込みで出た成果

 このオフから始めたマシンを150キロに設定しての打撃練習。これは昨年12月、東京都高野連主催の指導者講習会のパネリストとして招かれた智辯和歌山高嶋 仁監督の影響だ。
智辯和歌山が強打を作り上げる練習法として、150キロ以上のマシンを打ち込んでいるという練習法に倣い、「練習試合で本格派といわれる投手でも、打てることが前よりも多くなりました」(金丸監督)。

 駒込の前に視界が開けた。

 春季大会。ブロック予選を勝ち抜き、都立府中西戦(試合レポート)でも4番牧 彪(3年)選手の本塁打が出るなど、打撃面でも手応えが。その中心には主将・大澤の姿があった。
「あの時、1年生をキャプテンにしたのは間違っていなかったと思います。大澤が先頭に出てくれたことはありがたいですし、今ではチームの精神的な支柱です」。金丸監督はその成長に目を細めている。

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[page_break:夏こそ4度目の挑戦で「帝京越え」を]

夏こそ4度目の挑戦で「帝京越え」を

関根 友太投手(駒込高等学校)

 しかし駒込の前に立ちはだかったのはまたも「Teikyo」だった。2回戦で2対7で敗退。主将の大澤 諒はこの試合をこう振り返る。「直球には対応ができたんですが、相手が変化球中心の攻めをしてきて、最後まで捉えきれませんでした。本気で勝とうと思っていた試合だったので、悔しいですね」

 夏までの課題は明確だ。投手陣は左腕・関根 友太以外の台頭。そして打線は「技で勝負する投手への対応」。

「強豪校が技巧派投手にてこずるように、うちも同じような現象がありました。今度はマシンでものすごく遅い球で打ったんですが、全く打てなかったですね。遅い球を打つのはこれほど難しいことなんだなと。逆にそれを見て投手は気付いてほしいですね」(金丸監督)

 その中心となるのは主将の大澤 諒、4番を打つ牧 彪。大澤は走攻守三拍子揃い、センターを守る右打ち野手。帝京戦後から本格的にウエイトトレーニングと食トレをはじめ、なんと5本も放ち、現在、通算10本塁打までに乗せた。4番を打つ牧は通算7本塁打だが、「飛ばす力はナンバーワンですよ」と金丸監督が語るように期待は高い。

 そして駒込の目標はもちろん甲子園出場。ただ、その前に倒さなければいけない相手がある。
帝京さんのような強豪校に勝たないと甲子園はないですし、ぜひこの夏で実現すれば良いかなと思います」
指揮官の狙いも選手たちの狙いも、1つである、

 その先には……。「一隅を照らす」駒込の教育方針が人間力につながるように、4度目の挑戦で打倒帝京が成された時、彼らには大願成就が待っていることだろう。

 駒込の現象は新鋭校の宿命ともいえる。かつて日大三小倉 全由監督が関東一を率いていた時、なかなか強豪校の壁を破ることができなかったが、1985年夏、前田監督率いる帝京を破り甲子園初出場を決め、いきなりベスト8入り。さらに1987年春にも甲子園準優勝を成し遂げるなど、全国区の強豪校として注目を浴びるようになった。強豪校を破ったことで、その地位を高めた学校は数多い。
2015年夏・東東京大会。駒込がどんな「人間力」を見せるか、大いに注目したい。

(取材・写真=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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