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県立中村高等学校(高知)「効率性・発想力・実行からの『ホップ・ステップ・ジャンプ』打撃力強化」【前編】

2016.11.26

 この秋、準々決勝で高知東、準決勝で土佐、そして決勝戦では夏の甲子園ベスト4の明徳義塾を破り40年ぶり2度目の秋季高知県大会優勝を成し遂げた高知県立高知中村高校。優勝が山沖 之彦投手(元阪急ブレーブスなど)がエース、選手12人で1977年にセンバツ初出場準優勝を果たした代から40年ぶり。今回も選手16人(他に女子マネジャー4人)と少人数での栄冠を獲得したことで大きな話題を集めた。

 一方で、はベスト4・は準優勝・は優勝と着実にステップアップした高知中村。今回はその原動力となった打撃力強化について、練習法も交えながら紹介していきたい。

■昨シーズンの高知中村高校のトレーニングに迫った記事は以下から!
冬が僕らを強くする:第47回 県立中村高等学校

私学にひけを取らない打撃力の源流は?

県立中村高等学校(高知)「効率性・発想力・実行からの『ホップ・ステップ・ジャンプ』打撃力強化」【前編】 | 高校野球ドットコム

秋季高知県大会で明徳義塾を6安打完封した北原 野空(2年)(県立中村高等学校)

 2016年、高知県の野球界に新風を吹き込んだのは間違いなくこの野球部である。「高知県立高知中村高等学校」。

 春の県大会安芸梼原を破って準決勝に歩を進めると、5月の県総体初戦では明徳義塾に8回表まで4対4と互角の戦い(結果は4対6)。さらに夏の高知大会では高知東工高知高専に快勝すると、準々決勝ではの準決勝でコールド負けした高知に6対4、準決勝では高知中央に12対4(7回コールド)。明徳義塾に2対4で敗れた決勝戦も9回に2点を奪った集中打で大会を盛り上げた。

 旧チームからレギュラー3人が残るも、選手16人となった新チームでも勢いは止まらなかった。「故障者・病人が多数出てしまった」(横山 真哉監督)県新人戦は初戦で高知追手前にサヨナラ負けを喫したが、戦力を整えた秋季県大会では2回戦で高知に6対5で勝利すると、準々決勝は高知東に4対1・準決勝でも土佐に5対1。そして3大会連続の対戦となった明徳義塾との決勝戦でも2対0。30年ぶり5度目の秋季四国大会出場ばかりか、40年ぶり2度目の秋季高知県大会優勝も達成。四国大会では初戦で英明(香川)の前に延長13回で屈したが、旋風を一過性に終わらせなかった点は大きく評価できる。

 さらに見逃せないのは高知土佐高知中央明徳義塾といった私学勢にもひけをとらない「打撃力」である。夏の高知戦13安打・高知中央戦19安打。秋も高知戦13安打・土佐戦9安打。明徳義塾戦も夏の5安打から秋は7安打と着実に安打数を増やし、四国大会も9安打を放った。

 では、彼らはいかにしてこの打撃力を熟成し、着実なる成長へとつなげてきたのか?その源流は、四万十川の支流を眼下に望む高知中村高校・新グラウンドにあった。

[page_break:グラウンドでの「効率性」を高め、編み出した「ネット打ち」]

グラウンドでの「効率性」を高め、編み出した「ネット打ち」

県立中村高等学校(高知)「効率性・発想力・実行からの『ホップ・ステップ・ジャンプ』打撃力強化」【前編】 | 高校野球ドットコム

練習バットは1人1本のマイバット・横山 真哉監督から支給される(県立中村高等学校)

 内野には黒土が入り、練習試合も行うに十分な広さを有するグラウンド。が、しかし「平日に全面を使えるのは週2回です」
23年前の新グラウンド開設時には明治大卒業後の初任地として野球部部長・監督を歴任。その後、高知南岡豊宿毛高知工を経て昨年4月より母校に帰ってきた横山監督が意外な事実を語った。

 そこでもう一度グラウンドを見ると……外野後方には陸上トラックが。そしてレフト後方の一角には「高知県立中村中学校野球部」の看板。高知中村は2002年度より併設型中高一貫校となっているため、放課後は中学・高校の陸上部・中学軟式野球部と高校硬式野球部がお互いに融通しながら使っているのが現状である。さらに言えば部活生であっても完全下校は19時半。専用グラウンドを常に使用できる他校に比べても、ハンディキャップは明らかである。

 ただ、高知中村高校野球部の指導者・選手たちはそんなマイナスの環境を全てプラスに転じてしまった。アップではボールを2個使って走りながらのキャッチボールなど、野球の動きにつながる複合的要素を入れながら1時間かけて身体と頭の柔軟性を醸成。グラウンドが使えない日を中心に12ヶ月フルシーズンで筋力トレーニングを入れ、3年生のスタメンはスクワット100㎏以上を上げられるように。

 また、食事トレーニングやメンタルトレーニングも導入。週末も土曜日は13時半まで補習があるために練習試合は日曜のみに留めて、土曜日の「戦略練習」で練習試合でのテーマをより明確に。よって平日のグラウンド使用日の練習が雨天、日曜の練習試合が雨天中止になっても必ず練習を行なうなど、すべての効率性を高めることで課題を克服してきた。さらに昨冬からは「打てるチームを作ろう」と旗印を立て、選手たちは指揮官からプレゼントされた1100グラムの赤バットを手に、進学校ゆえに自宅に帰ってからも1時間程度の予習復習が必須となる学業の傍らで素振りを続けた。

「5月には強制的に言わなくても一日1000本振るようになりました」(横山監督)。これが「春を超えてから徐々に個々が調整できるようになったことで調子が上がり、5月後半、県体育大会くらいから試合でも打てるようになった」と旧チームから4番を張る北原 野空(2年・投手・右投右打・168センチ71キロ・高知県立中村中出身)も振り返る覚醒につながったのである。

 そういったスイング力を正しい軌道で具現化するメニューにも怠りはない。旧チームから3番を張り、18打数13安打10打点。夏の高知大会では明徳義塾からも「最も警戒すべき選手」としてマークされた一圓 優太(2年・三塁手・右投左打・171センチ72キロ・四万十市立八束中出身)が言う。「近くから打つ『ネット打ち』という練習をよくしています」

 これぞ高知中村高校野球部ならではの打撃強化練習。後編では、実際の映像と写真でご覧頂くとしよう。

(取材・文=寺下 友徳

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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