勉強嫌いな球児でも文武両道で東大野球部に入るための4つの法則 東京大野球部 前監督・浜田一志さん
2013年春から7年間、監督として東京大学野球部を率いた浜田一志氏。
強豪がひしめく東京六大学野球で、2016年に年間4勝、2017年には日本ハム入りした宮台康平投手を擁して、秋季リーグ戦で15年ぶりの勝ち点を挙げるなど大きな足跡を残した。
練習に参加した高校生には受験テクニックを伝授し、また退任した現在も学習塾を運営して、文武両道の秘訣を高校生に伝え続けている浜田氏だが、そこには独自のノウハウが隠されている。
文武両道で「東大野球部」に入部するため秘訣を、今回は浜田氏に語っていただいた。
成績の良い生徒のノートの取り方
元東京大野球部監督・浜田一志さん
7年間、東京大野球部の選手たち、そして厳しい受験を勝ち抜いてきた新入生を見続けてきた浜田氏。彼らには、1日24時間という限られた時間を効率よく使い、文武両道を続けるための明らかな共通点があると語る。
例えば、ノートの取り方だ。
ノートを取る際に、色をたくさん使うかどうかのアンケート調査を行ったところ、色をあまり使わない、もしくは全く使わない生徒ほど成績が良く、また色をよく使う生徒ほどそれほど成績が良くないという結果が出た。
これはノートが綺麗な生徒ほど、「綺麗にノートを取ること」が目的になっており、そこから記憶に繋がっていないためだ。
このように、成績が良い生徒と良くない生徒、文武両道ができる選手とできない選手には、明確な理由があると浜田氏は語る。
その上で、文武両道を実践する選手だけが持つ、4つの大きな要素を語っていただいた。
【1】モチベーションを保つ環境
「まず、一番大事なものがモチベーションです。
お手本になる先輩や監督、応援してくれる両親やチームメイトなど、同じ目標の仲間がいるということが一番のモチベーションです。
瞬間的に、グッとモチベーションを上げることはできます。例えば、『ノーサイドゲーム』を見て感動して、『俺もがんばるぞ』といった具合に。しかし、そういったモチベーションには賞味期限があります。
仲間同士でモチベーションを高め合うことが大事です」
【2】身近に手本を見つける
「皆さんも、大きな目標を目指す時や進路を考える時など、先輩の影響を受けると思います。
『あの先輩の真似すれば、甲子園で活躍できる』、これは大阪桐蔭が典型ですね。
『あの先輩の真似をすれば、東大に受かる』、開成であればそうなると思います。
身近なところでお手本を見つけていくことが大事ですし、そしてお手本がいない時はこれを探してくるのが指導者の役目だと思います」
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東京大野球部監督時代の浜田一志さん
【3】得意技を作る
「自分が向いているものをどんどん探してください。
部活動をやっている間は、時間が無いからそんなにたくさん勉強ができない。でもその時に、疲れていても勉強できる科目を1つ作ることが大事です。これが非常に文武両道を進める上で大事で、勉強も野球もそうですが習慣化しないとダメなのです。
練習して疲れて帰ってきて、苦手な科目をさぁやるぞ。
これだと30秒で終わりです。1時間でも好きな科目を勉強して、夜の時間を有効に使いましょう。
では、得意な科目をどうやって見つけるのか。
これは授業に集中したり、現在は学校も休校中だと思うので、ネットの授業などを集中して聞いてみてください。スーと耳に入ってくる教科と、全然頭に入らない教科が必ずあるはずです。
スーと耳に入ってくるものが、得意になれる科目だと思います」
【4】7:5:3の法則で日常を過ごす
「これは東大野球部の多くの選手たちが、高校時代に実践していた時間の使い方です。
1日24時間のうちにも、睡眠や食事、お風呂などの生理的時間が必要です。この生理的時間にだいたい9時間を使い、残りの時間は15時間になります。
この15時間の内訳を表したものが、『7:5:3』です。
7時間が勉強、5時間が野球、3時間がその他の自由な時間です。勉強の7時間には、学校の授業も含まれていて、家庭学習がだいたい2時間くらいです。
野球の5時間は、グランドでの練習が3時間位で、あとは体の手入れなどとにかく野球に関わる時間です。
現在は、野球の時間が5時間も取れないと思うので、この時期には自分の得意技を探す時間にして欲しいなと思います」
いかがだっただろうか。
中には、ほんのちょっとしたコツのようにも感じるものもあるが、その小さな積み重ねが点数での大きな差に広がると浜田氏は話す。
そしてここまで、文武両道を行うための具体的な要素を紹介してきたが、最後に浜田氏は「なぜ文武両道が必要なのか」という、学生が抱きがちな素朴な疑問について語った。
浜田氏が語る文武両道の本質とは、すばり「多様性の中で努力を続けること」だ。
「なぜ文武両道が必要なのか。
それは10代、20代は自分のアイデンティティを獲得しようとしてもがいている時期だからです。アイデンティティとは、『自分は何に向いてるのか』ということです。
そのためには、色々やってみて向いてるものを見つければいい。勉強も芸術も野球も、色々やってみる、これが文武両道の原点です。
甲子園に出て東京大にも合格となると、非常にキャッチーでわかりやすいですが、それだけではなくて、多様性の中で本気で努力を続けることに意味があると思っています」
現在、部活が活動休止となり、これまでよりも勉強に充てる時間が多くなった球児も少なくないだろう。
時間があることを活かして、是非実践してみてはいかがだろうか。
(取材:栗崎 祐太朗)
次回は、具体的に英語と数学の勉強法について浜田さんに解説していただいた記事を配信いたします!どうぞお楽しみに!
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