3年生座談会 大冠高等学校(大阪)「27年ぶりの公立校Vに挑んだ夏」【前編】
今夏の大阪大会を振り返った際、公立校の大冠(おおかんむり)高校の躍進を思い浮かべる高校野球ファンはきっと多いに違いない。力強い打撃を軸にしたチームカラーで強豪私学を次々と撃破。公立校としては実に19年ぶりの決勝進出を果たした。甲子園切符をかけた一戦では大阪桐蔭と壮絶な打撃戦を演じた末の惜敗。センバツ王者をあと一歩のところまで追いつめた戦いざまは強烈なインパクトを残した。
今回は決勝戦のスターティングメンバーに名を連ねた7名の大冠戦士が恒例の3年生座談会企画に登場。2017年の熱い夏を中心に振り返ってもらった。
「今日はよろしくお願いします!」
座談会の会場となった放課後の教室。元気な挨拶と共に登場した7人の大冠戦士。その顔ぶれは以下の通り。
飯隈亮太(1番・セカンド)
寺地広翔(2番・ショート)
冨山翔也(3番・サード)
辻晃志(4番・ファースト)
猪原隆雅主将(5番・キャッチャー)
金栄健(7番・センター)
丸山惇(9番・ピッチャー)
※カッコ内は決勝戦時の打順及びポジション
大阪準優勝を果たした大冠戦士たちとの対面
猪原 隆雅主将(大冠)
――まず最初に大冠高校を高校野球の舞台に選んだ理由を教えていただけますか?
飯隈亮太(以下、飯隈):自分が中3の時に大阪春季大会で3位に入ったことを知り、ここでやりたいなと思いました。
丸山惇(以下、丸山):ぼくも大阪で3位になったと聞いて、気になっていたところに大冠の事情に詳しい先輩にいろいろ話を聞かせてもらい、決めました。
――大商大堺、PL学園、上宮太子といった強豪私学を撃破し、創部初の3位入賞を果たした2014年春のことですね。
一同:そうです!
冨山翔也(以下、冨山):ぼくも大阪で3位入賞を果たしたと聞いて、興味が沸きました。当初は地方の高校に野球留学しようと思っていたのですが、公立で強豪校を倒すのもやりがいがあっていいなと思い、ここでやりたいと思うようになりました。
金栄健(以下、金):ぼくは最初は高校の名前すら知らなかったのですが、大冠に進学した少年野球時代の先輩の薦めで体験練習に参加したらすごくぴしっとしていて、いいなと。元々公立の強いところでやりたかったので、迷わず決めました。
猪原隆雅(以下、猪原):3歳上の兄が大冠だったことをきっかけに体験練習を何回か受けたのですが、本気で甲子園を目指している公立校だと感じたのでここで頑張ろうと思いました。
辻晃志(以下、辻):父の薦めで体験に参加して、決めました。野球部の熱さが気に入ったし、家も近かったのでここしかないなと。
寺地広翔(以下、寺地):ぼくは2歳上の兄が野球部に在籍していたので、当然の流れのような感じで兄の後を追って入部しました。
ラストサマーに向けて
飯隈 亮太(大冠)
今夏、準優勝を果たしたチームは、昨年秋は5回戦、今春は3回戦敗退。本来の実力を出し切れないまま、姿を消してしまった印象が残った。最後の夏に臨む心境はどのようなものだったのだろうか。
丸山:ぼくは故障や不調などで秋、春とすごく迷惑をかけてしまったので。エースナンバーを背負う者として、最後の夏はいい結果を残したいという一心でした。
金:春のケガから復帰した丸山の調子が上がるごとにチームの勝率はよくなり、最後は連勝街道を突っ走ったまま、いい流れで夏の大会に入っていけたよね。
寺地:相手がどこであろうと、今まで通りにやれば大丈夫という気持ちで夏を迎えられたのは大きかった。
――夏の組み合わせが決まった時点では3回戦の東海大仰星戦が最初の大きなヤマになると見る向きが強かった。
冨山:個人的には秋、春と相手にスキを見せた部分があった。夏にそんな中途半端な気持ちで負けたら悔いが残る。とにかく相手がどこであろうと、一戦必勝で戦おうと思いました。
猪原:秋、春とトーナメントの先を見すぎてしまい、そこに辿り着く前に負けてしまった感じがあった。
飯隈:目の前の試合に全力でいくのみという雰囲気がチームにありましたね。
――この夏は全ての試合で先攻でしたが、とれるものなら先攻をとろうと決めていたのですか?
猪原:どちらを取るかは監督に委ねられていたのですが、守り勝つというチームカラーでもないですし、やはり自分たちは先に攻めるスタイルのほうがいいのかなと。じゃんけんに負けても相手が後攻をとってくれるので、結果的にすべての試合で望む先攻をとれました。
東海大仰星を退け4回戦進出!
丸山 惇(大冠)
――1回戦(桜塚)、2回戦(緑風冠)で2試合連続コールド勝利を収め、最初のヤマと言われた東海大仰星との3回戦に辿り着きました。
猪原:春の近畿大会準優勝を果たしただけあって力のあるチーム。ぼくらの特長である打撃力を発揮して打ち勝つんだという気持ちで試合に入っていきましたね。
――試合は序盤に2点を先制するもその後、逆転され7回終了時点で2対4。しかし8回表に一挙6点を奪い、最終的には8対4。見事な逆転勝利で春近畿2位のチームを下しました。
丸山:ぼくはリードされた状態で7回にマウンドを降りたんですけど、よかったです、逆転してくれて…。ぼくの後にマウンドに上がった宮内竜也、村上遼成がしっかりと抑えてくれたことが勝利を呼び込んだ。
――リードされている時のベンチの雰囲気はどのようなものだったのですか?
飯隈:負ける気はなかったし、悲壮感もなかった。さぁ引っくり返すぞ!という雰囲気でしたね。
冨山:逆転した後も浮かれることなく、「向こうは近畿2位。なにが起こるかわからないのが高校野球」という引き締まった気持ちで最後まで戦えた。
猪原:自分たちが目指している打ち勝つ野球で逆転勝利を収めることができたことは自信になりましたし、大きなはずみになりましたね。
――7月23日、4回戦の相手は昨年の秋に敗れた北野でした。
金:秋は「勝てるだろう」という油断がどこかにあった。敵の強さをしっかりと認めた上で、普段通りにやればきっと大丈夫という気持ちで臨みました。
――結果的には8対2の快勝。丸山投手は完投勝利を収めました。
丸山:秋は北野にもてあそばれたような格好になったので。絶対にやり返したかったです。
(構成/服部 健太郎)
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