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第96回全国高等学校野球選手権茨城大会 展望

2014.06.10

優勝候補・霞ヶ浦と常総学院の2強を中心に展開!

上野 拓真(霞ヶ浦)

 現状の茨城の高校野球を一言で表すと、『2強時代』である。
 春季茨城県大会決勝戦は、またしても常総学院vs霞ヶ浦というカードとなり、2012年秋から始まった決勝戦の同一カードはこれで5季連続となった。
 常総学院霞ヶ浦は他チームの追随を許さず、この5度の決勝戦で、サヨナラホームランで幕を閉じた試合や、延長15回決勝戦引き分け再試合など、2強の名に恥じない名勝負を繰り広げている。

 5度の対戦は、常総学院の3勝、霞ヶ浦の2勝と、互角。果たして、今夏は6季連続の決勝戦同一カードとなるのか、はたまた2強の牙城を崩すチームが現れ、6季振りに異なる決勝カードとなるのか、その展望を見ていきたい。

 霞ヶ浦は、1年夏から主戦で登板している左腕エース・上野拓真(3年)が大黒柱だ。166センチと小柄で、球速こそ130キロ中盤だが、切れ味鋭いスライダーとチェンジアップを駆使して打者を翻弄する。さらに今春から修得したツーシームは、春季関東大会でも冴えわたり、初戦の二回戦で名門・横浜に被安打5、9対2と7回コールドで撃破した。また、巧みな牽制技術も併せ持つ。上野はこれまでに3度、あと一勝で甲子園という試合で先発を任されるも敗戦。憧れの聖地へ、最後の夏にかける想いは誰よりも強い。

 この他に、昨秋決勝引き分け再試合で常総学院から9回1失点完投勝利を上げた左腕・安高颯希(2年)や、同じく左腕の浅賀 蒼太(2年)も控えており、投手陣は豊富に揃う。

 打線は1年春から中軸を打つ主将で3番の菅原直輝(3年)と、チャンスに強い4番・平瀬翔梧(3年)が牽引する。戸部 将希(3年)、清水 達希(2年)は初球からガンガン振ってくる怖い1番打者候補だ。また今春から早速起用されている小川 翔平(1年)、飯村 将太(1年)、根本 将汰(1年)の1年生トリオも能力が高く将来性がある。

 一方、常総学院は昨夏甲子園の前橋育英戦で登板した右腕・金子 雄太(3年)が軸となる。
 怪我から復帰し、ストレートは最速143キロを計測するようになった。変化球も5種類と多岐に渡り、打者に的を絞らせない。金子は甲子園に出て去年敗戦投手となった借りを返したいと意気込む。
 右アンダースローの高畑 悠太(3年)は、テンポの良さとストライク先行のピッチングが持ち味で、初見で捉えるのは難しい。先発・中継ぎ・抑えとどこでも器用にこなす。また、中学時代に15U侍ジャパンを経験した左腕・鈴木 昭汰(1年)も控える。
 打線は昨夏甲子園を経験した主将の進藤 逸(3年)、石井 大貴(2年)、眼龍達矢(3年)らが上位に並ぶ。他にも瞬足好打の宇草 孔基(2年)、高打率を残す高瀬 将太郎(2年)、打撃センス抜群の岡田 幹生(3年)らがおり、二死無走者からでも得点できる怖さがある。

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[page_break対抗・牙城崩す筆頭に水戸工と明秀学園日立]

対抗・牙城崩す筆頭に水戸工と明秀学園日立

後藤 凌太 (水戸工)

 2強の牙城を崩す有力候補の筆頭として、水戸工と明秀学園日立が挙げられる。

 水戸工エースの左腕・後藤凌太(3年)は身長163センチながらも、ムチのようにしなる腕の振りから投じるストレートは最速140キロに迫る。今春からは新球種のチェンジアップも習得し、春季県大会では30イニングを投げ30個の三振を奪った。

 また2番手・鈴木智之(2年)の成長が著しく、最速135キロを計測するストレートとスライダーで試合を作る能力がある。打線は一発のある郡司 祐稀(3年)、赤沼 健太(3年)や、好打者・生田目忍(2年)らが揃う。

 明秀日立エースの左腕・月沢一樹(3年)は縦に落ちる変化球が武器。得点圏に走者を背負ってからいかに勝負してくるかを見て欲しい。後ろには剛球右腕・孫大怜也(2年)が控え、ロングリリーフもあり得る。レギュラーメンバーの半数を下級生が占めるなか、宮川 広大(3年)、高木 飛雄馬(3年)、綾部 蓮(3年)ら右打者の3年生が中軸に座る。金沢 成奉監督は、昨夏準々決勝・霞ヶ浦戦にて、直前のメンバー変更でベンチ入りした、当時1年で他校にまだデータが全くない大友喬太(2年)をサプライズ先発させた。今年も有力な1年生が多数入部しており、ライバル校にとっては金沢采配も脅威の一つであることは間違いない。

 続く有力校は土浦湖北鹿島学園科学技術学園日立つくば秀英の4校だ。

 土浦湖北はエースの大型左腕・大関 友久(2年)のスタミナ次第。球速は秋から春にかけて10キロ近く速くなったが、春は連戦の疲れから準決勝・霞ヶ浦戦で自滅。大敗を喫した。しかし、この試合で4番・鈴木 竜平霞ヶ浦・上野から本塁打を放つなど手応えもあった。遊撃手の八角 光太郎(3年)は脚を使った守備で魅せる。鹿島学園は右腕・高木 寿(3年)、左腕・神田 湧冬の両エースが共に140キロ近い速球を武器とする。どちらも先発完投できる能力があり、近年では最高の投手力を備える。打線は中国人留学生の韓嘯(3年)、中軸の浅賀 大輔(3年)、神田 湧冬など強打者が揃う。
 科学技術学園日立はエースで4番の山名 淳希(3年)が投打の中心。投げては同じ腕の振りから力感あふれるストレートとスライダーを駆使する。3番・吉久保 裕紀(3年)も非凡な打撃技術を持つ。県外強豪校との練習試合では互角以上の結果を残しており、投打が噛み合えば大物食いもあり得る。

 つくば秀英は大型右腕・7026(3年)を擁す。春季県大会では鈴木を目当てにプロスカウト7人が[stadium]日立市民球場[/stadium]に集った。まだ荒削りではあるが、ツボにハマれば手が付けられない将来性十分の投手だ。
 第3グループに位置するのは藤代下館一水城水戸桜ノ牧石岡一土浦日大の6校だ。

 藤代は俊足捕手の古谷 勇斗(3年)、1年夏から中軸を担う根本 文弥(3年)、4番・飯塚 幸大(2年)と好打者が並ぶ。エース左腕・竹内 悠(3年)はスリークォーターで、昨夏も登板経験がある。奪三振こそ少ないものの、走者を出した後の粘りの投球を信条とする。下館一はトップバッターで長打も魅力の・廣瀬 貴礼(3年)が出塁してペースをつかみたい。エース左腕・森山 優介(3年)が復調すれば、勝ち上がる可能性はさらに増す。

 水城林 涼介林 優希(3年)の双子の兄弟を中心として昨夏の4強以上の成績を目指す。エース右腕・大和田 蓮(2年)は打たせて取る投球スタイルだ。
 水戸桜ノ牧は高打率をマークしている相馬 和司(3年)の前に走者を出したい。エース右腕・長友 辰樹(3年)はこちらもスリークォーターだが、腕のしなりは県内随一の美しさだ。
 石岡一は右腕・浅尾 奎介(3年)、左腕・木村 怜央(2年)と投手の駒が揃う。と県大会一回戦で敗れたが、投打共に地力のあるチームだ。
 土浦日大の中軸をになう筧 竜太郎(3年)、宮林 諒輔(3年)には長打力がある。右腕・大森 亮輔(2年)は低めに集めて打たせて取る。

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その他の有力校・存在感放つ下館工に注目集まる

谷中 規彦 (下館工)

 下館工エース・谷中規彦(3年)は最速140キロと今年の茨城で指折りの好投手だ。打っては4番と投打の中心選手である。
 水海道一坂本真瑚(3年)は常時130キロを超えるストレートが武器。つくば国際大の福田 海人(2年)は2年生ながらエースで4番と秋以降も楽しみな選手。

 取手松陽は左サイド・海老原 太一(3年)と右上手・内村 悠斗(2年)のタイプが異なるダブルエースを擁す。牛久松川 海人(3年)、小野 智明(3年)のダブルエースであり投手陣には非常に安定感がある。江戸川学園取手増田 圭佑(3年)は最速140キロに迫るストレートが武器。下妻二加園 叶(2年)は俊足好打の1番打者。打撃もさることながら走塁も優れている。竜ヶ崎一4番・風見 修平(3年)は大きな体格から逆方向にも一発が打てる。水戸啓明元西 世資也(3年)は遊撃の守備が光る。

 水戸商波崎柳川日立一は好選手が揃う。少ない部員数で秋・春連続して県大会に出場したつくば工科は経験豊富な3年生が主体のチーム。下級生の部員が少なく、秋以降は部員不足による出場辞退も危惧されるため、今夏の戦いには例年以上に熱い視線が注がれる。

(文:伊達 康)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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