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甲子園3試合連続本塁打を放ったスラッガー・原島正光(日大三出身)が甲子園に辿り着くまで vol.1

2020.04.10

 21世紀が始まった2001年。この年の甲子園を騒がせたスラッガーがいる。それが日大三の4番として活躍した原島正光氏だ。センバツでは巨人などで活躍した真田 裕貴(姫路工)から本塁打を放ち、そして2001年夏の甲子園では1回戦から3回戦まで3試合連続で本塁打を放ち、甲子園のファンを沸かせた。20代後半~30代後半の野球ファンから「ヒーロー」という声が多い。そんな原島の軌跡を追った。

野球を始めたときから長打力には自信があった

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原島正光(日大三出身)

 東京都奥多摩町出身の原島氏。野球を始めたのは小学校6年生からだ。
「それまでは柔道をやっていたんですが、僕の同級生の大半が野球をやっていて、自分と仲の良い友達もその中にいたので、野球を始めることになりました」
 そして中学に進むと、羽村シニアに所属。ここから恵まれた長打力を発揮するようになり、チームメイトでも頭一つ抜けた存在へ成長。当時について原島氏は「遠くへ飛ばしたい思いで練習をしていたとおもいます」と振り返る。
 そして中学3年、日大三に進んでいた羽村シニアの先輩のすすめから日大三進学を決める。

「当時の自分は甲子園に進みたいからこの強豪校を目指そう!というのは特にありませんでした。
 自分たちのシニアは中学生の時に、近隣の東海大菅生が甲子園に出場していたこともあって、東海大菅生によく進んでいました。

 当時、小倉(全由)監督が就任されたばかりで、その先輩からよい監督だぞということを聞いており、日大三に進もうと思いました。日大三に進んだのは先輩の影響が大きいですね」

 入学すると、同じ東京都でも奥多摩から町田でもかなりの遠方。原島氏は入学から寮に入ることとなった。最初、先輩との寮生活に不安を覚えたものの、2,3年生が優しく、すぐに打ち解けた。また小倉全由監督に覚えてもらうために人一倍声を出して、アピールした原島氏は長打力なども買われて、1年夏からベンチ入り。甲子園出場の際はベンチから外れたが、いきなり貴重な経験を積んだ。

 そして1年秋もベンチ入りするが、一次予選で東亜学園と対戦し、1対3で敗退。当時の東京都の予選の枠組みは一次予選に敗退してしまうと、夏の大会まで公式戦がない。そんな中、原島氏に待ち受けていたのは、冬の強化合宿だった。

[page_break:苦しい冬と夏の猛練習を乗り越え、ついに掴んだ甲子園]

苦しい冬と夏の猛練習を乗り越え、ついに掴んだ甲子園

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日大三の練習風景

 今ではメディアにも取り上げられるようになり名物となった年末の長期合宿。この合宿について原島氏は「地獄でしたね(笑)」と苦笑いを浮かべる。
「まず朝5時前に起きて、走って、走って。2時間ぐらい走りぱなしでした。
その後、朝食をとって、10時前から練習が始まって、17時~18時までやって、夕食をとり、夜間練習で素振りがあるので、ミーティングやって就寝です。ほぼほぼ野球でしたね(笑)あれほど1日が長く、日数が減っていかない経験はなかなかないですね」

 

当時のタイムスケジュールは以下の通りである。

日大三の冬合宿スケジュール

4:30 起床
5:00 走り込み
 ↓
7:00
 朝食・掃除
10:00 練習
 ↓
17:00~18:00

夕食
夜間練習
ミーティング
23:00 就寝

 すべて4時半起床ではなく、3日に1回は朝練がない日があり、「すごいありがたいですね。7時まで寝れますから!」と笑い飛ばす。合宿を経験した日大三のOBは合宿終わりになると泣けてくると語っていたが原島氏もその1人だ。
「スコアボードに14日間のカウントダウンをやるんですけど、最初の5日間は全然減っていかなくて、残り4日、3日になると、先が見えてきます。毎日、必死にどう生き残ろうかと思うぐらいきつかったです。しんどかったです。」

 こうして地獄の合宿を乗り越えた後も、夏までも春の大会がないので、練習と練習試合の繰り返しでチームを作り上げ、そうした中で迎えた西東京大会。1学年上には、エース・栗山辰徳(立正大)、ショート・田中 啓嗣明治大-日本生命)、強打者・高橋忠臣の1999年春夏の甲子園経験者を中心とした強力なチームだったが、甲子園に進めず予選敗退となった。原島氏は新チームがスタートした時、かなり不安を感じたという。
「先輩たちのチームは、前年甲子園にいった時のレギュラーが3人もいて、技術的にも優れたチームでした。そういう先輩たちがいても勝てなかった現実を目の当たりにしてどうすればいいんだろうと思った記憶があります」
 夏休みの練習に入ったが、原島氏いわくそのキツさは「冬以上だった」と語る。
「あの暑い中、延々と練習と練習試合の繰り返しでしたから、本当にきつかったですね」

 不安を感じながらスタートした日大三ナインだったが、公式戦で勝ちを重ねるにつれて、バランスの良いチームとなっていた。

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原島正光(日大三出身)

 「夏の練習を乗り越えて、都大会を迎える前には体力的にも、技術的にも仕上がっていたと思います」
と語るように投打で投手ではプロ入りした近藤一樹(オリックス-東京ヤクルト)、千葉英貴(元横浜)の2本柱。打者では都築 克幸(元中日 現・都筑中央ボーイズ監督)、内田和也(東京ヤクルト-埼玉西武 立正大立正監督)とプロ入りした選手と原島氏が組み合わさった強力打線。

 投打ががっしりと噛み合った秋季東京都大会では決勝戦で桜美林を7対6で破り、見事に優勝。明治神宮大会にも出場した。

 もちろんこのオフも厳しい冬の合宿だったが、選抜が見えていることもあり、モチベーション高く練習に臨むことができた。原島氏はこのオフの課題として、「打ち損じが多かったので、確実性を高めることをテーマに打撃練習を行っていました」と打撃強化に臨んでいた。

 そして第73回選抜高等学校大会が3月25日に開幕。原島氏はレギュラー選手として初の甲子園を迎えた。

vol2では、選抜や全国制覇の活躍を振り返っていきます。お楽しみに!!

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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