オリックス一軍投手コーチ・平井正史コーチに訊く。スタンダードな投手練習法に質を高める考え方
まず投手指導はいろいろなコーチングがある。最近は動作解析、回転数など科学的な要素も加わり、指導内容も高度なものとなった。ただ、科学的な要素を取り入れた練習というのは、まずそれができる機械があっての話になってしまう。
そこで、キャッチボール、遠投などスタンダードとなっている投手練習の考え方を突き詰めるために、今回はオリックス一軍投手コーチの平井正史コーチに話を聞いた。
現役時代は剛腕投手としてだけではなく、制球重視の投球でマルチな役割で活躍。現役引退後は プエルトリコに赴くなどコーチングを学んだ平井コーチが語る投手指導法とは。
なるべく何も考えずに体で覚える
解説してくださった平井正史投手コーチ
——— まず基本となるキャッチボールについてなのですが、プロの方はどういったことに気を付けながらされているのでしょうか。
平井正史投手コーチ(以下、平井) プロであってもアマチュアであっても言うことは同じです。基本的に相手の捕りやすいところに投げることを大事にさせています。
——— ボールの質や投球フォームよりも第一に相手の捕りやすいところに投げることが大事なんですね。
平井 そうですね、まずそれが大事です。160キロとかいくら速いボールを投げられたとしても、ストライクが入らなければ全く意味がないです。ですので、コントロールは良い投手の条件だと思っています。
その上でボールの質を上げたいのであれば、距離を取って投げる。またフォームに関しては上体ばかりで投げずに、下半身主導のフォームで相手に向かって真っすぐに足を踏み出して、シュート回転のボールを投げないようにする。ただ、フォームばかりを気にしてキャッチボールのテンポを悪くしないようにしてほしいです。とにかく考えて投げるのではなく、体で覚えて欲しいです
——— 体で覚えることを大事にされるのはどうしてですか?
平井 考えて野球ができる選手というのは本当に少ないと思っているのですが、投げるたびに考えてしまうと、投球そのものに支障が出てしまいます。ですので、なるべく何も考えずに体で覚えていた方が良いと思っています。
——— ではどんな投球フォームを体に覚えさせれば、ケガしにくいフォームが身につくと考えていられますか?
平井 それは体に無理のないフォームだと思います。投球フォームには個人差がありますが、ただ100球でも200球でも投げて疲れないフォームは、体に無駄の力がかからない。つまり、無理のないフォームだと思っています。そのフォームができるように、僕らは選手と話し合っています。
ブルペンでは試合のつもりで集中して欲しい
澤田圭佑投手に指導をする平井正史投手コーチ
——— 次にブルペンについてですが、どういった意識で投手はブルペンで練習をすればいいでしょうか?
平井 基本的には試合を想定して投げて欲しいです。その中で、球数を投げ込むのか。それとも質を大事にするのかはその日のコンディションで判断していいと思います。とにかく集中して投げて欲しいと思います。
——— 体で覚えることを大事にされるのはどうしてですか?
平井 考えて野球ができる選手というのは本当に少ないと思っているのですが、投げるたびに考えてしまうと、投球そのものに支障が出てしまいます。ですので、なるべく何も考えずに体で覚えていた方が良いと思っています。
——— やはり体力をつけるためには、投げ込むのが一番なんでしょうか?
平井 投げ込むことで体力がつくかどうかは分かりません。しかし、球数が投げられるということは体へのストレスが少ない、無理のないフォームだと思うんです。ですので、ストレスの少ない、疲れにくいフォームが見つかると思います。
——— ちなみにプロのブルペンはどんな感じなんでしょうか?
平井 リリーフの投手であれば「試合のつもりで投げるので、2、30球で終わります」という投手もいます。そういう時は1球1球集中して投げて欲しいと思っています。
先発で120、130球投げるのであれば、メリハリを付けながらもどうやって同じようなボールを投げ続けられるか。再現性を求めてやってほしいと考えています。
——— 常に全力で投げるのではなく、バランスを見ながら投げている時もあるんですね?
平井 時と場合によりますが、とにかく大事なのは目的です。「今日は何をやりたいか」によってその日の取り組み方も変わっていきます。
マウンドで投げていく中で、様々なことを感じて欲しい
平井正史投手コーチ
——— 様々な選手にご指導されていますが、平井コーチは選手それぞれに指示を出すのでしょうか。それとも選手から意見を聞いて話し合いながら指示を出されるのでしょうか?
平井 ウチは基本的に選手主導です。選手にはやりたいことをやってもらいますが、その中で「こうした方が良い、こういう目的をやってみた方が良い」と提案はします。それが違えば、また考え直します。
そもそもプロの世界に入る選手はこれまでの結果が認められているので、選手それぞれが持つ個性を伸ばしてやりたいと思って指導しています。
——— 平井コーチはプエルトリコへ行かれた経験があると思いますが、そこで学んだことはありますか?
平井 まず感じたのは低めへの意識です。プロだけではなく少年野球のレベルから、低めへの意識が徹底されていました。ですので、キャッチボールでは高めへ暴投する選手はほとんどいませんでした。でも、日本は高めに暴投を投げる選手は意外といます。そういったところで向こうの低めの意識の高さを感じましたね。
——— 現在はウエイトトレーニングに取り組む高校が増えてきましたが、投手にとって大事なメニューはありますか?
平井 どれというものではなく、全部が大事だと思っています。特に冬場は寒くて球数は減りがちなので、その間に基礎体力を一段階上げておいてほしいです。それで思い通りに動ければ自然とレベルは上がりますので。
ただ、思い通りに動かせなければどうしようもないので、ブルペンや試合といった実戦でのマウンドで投げていく方が大事だと考えています。
(取材=久保聖也、田中裕毅、編集=河嶋 宗一)
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