Column

負けないために必要な守備力とファーストの強化 迫田守昭監督

2020.01.05

 広島商時代には2回、そして現在指揮する広島新庄では3回と、春夏合わせて5回の甲子園出場へチームを導いた迫田守昭監督。今秋は広島県大会を制して、中国地区大会でベスト4進出。選抜出場が有力視されており、出場が決まれば自身6度目の甲子園出場となる。

 広島にとどまらず、全国でも屈指の名将という立ち位置にいる迫田監督。しかし、毎年結果を残すために、チームをどのように作れば常勝軍団が作れるのか。今回はファーストをテーマに話を聞いてみた。

バッティングではなく、守備。負けないチームを作ることが大事

負けないために必要な守備力とファーストの強化 迫田守昭監督 | 高校野球ドットコム
ファースト守備につく広島新庄の選手

 広島県で常に上位に入り続ける広島新庄。現在チームを指揮する迫田監督が一番優先するのは守備だ。
 「守備でミスしないところから始めます。負けないチームを作るために選手の起用もメンバー決めも守備ができる選手が中心です。それで選んだ選手たちを打てるようにしていくのがウチのやり方です」

 よく聞くのが、バッティングはいいけど守備が課題。だからコンバートして、何とか守れるポジションで起用するケース。しかし、迫田監督はそのような起用方法をしない。その理由は負けないチームを作るためでもあるが、迫田監督なりの持論があるからだ。

 「ハンドリングや打球を合わせるリズム感みたいなものは先手的なものだと思うんです。なので、鍛えて良くなるといっても限界があります。けどバッティングなら鍛えれば何とかなると思っています」

 迫田監督は自身の方針を「他のチームとは逆だと思います」と自負している。それでも守備が大事なのだ。だからこそ、守備に困った選手を安易にファーストや外野にコンバートすることを「致命傷になる」と考えている。

 「打てる選手、走れる選手に注目して、ポジションをどうするか。それを考えてファースト、外野にコンバートするのは致命傷になると思うんです。ショートやセカンドやたしかに大事だとよく言いますが、ファーストほど大事なポジションはないです」

[page_break:ファーストは専門職]

ファーストは専門職

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迫田守昭監督

 だからこそ、ファーストを専門職だと迫田監督は考える。
 「内野手全員が良いボールを投げられるわけではないです。高いボールやワンバウンドもあるので、それをいかにアウトにできるかがファーストの守備です。あと、ランナーがいるときに、どれだけ機敏に動けるのが大事です」

 捕球は確かに大事だが、どうして機敏に動けることもポイントに挙げられるのか。その理由を迫田監督に詳しく聞いてみた。

 「右のファーストだと、二塁に送球する時はランナーと被ることがあります。上手く内側に入れれば投げられますが、そう動けるようにするためには訓練が必要です。逆にその訓練がされていないと、ランナーにぶつけたり、ワンバウンドさせたりしてしまい、二塁セーフの可能性があるんです」

 だからこそファーストを経験したことない選手を広島新庄では起用することはない。その代わり、サウスポーの秋田駿樹(2年)と秋山恭平(1年)の2人はファーストができるように練習をさせて、現在は守らせることが出来るようになった。
 「左だと送球する際にランナーを被ることがあまりないので、比較的守りやすい。それもあって2人はやらせていて、今では完全にできます」

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秋田駿樹(広島新庄)

 今の秋田と秋山の2人では全試合の完投は難しいが、その代わりに調子が悪い時にベンチに下げるのではなく一度守備に就かせられる。その間に落ち着かせて、頃合いを見てマウンドに戻すという選択肢を持たせられるという。幅を持たせた起用方法が可能になったのだ。

 しかし、その大前提には練習でファーストの動きをマスターしている必要がある。それを練習で重ねていく、このチーム作りが広島新庄の強さの秘密なのかもしれない。

 そんな迫田監督が掲げている理想のファーストは「動ける左の大柄の選手」だ。
 「どうしても小さいと的が小さくなってしまうので、大きい方が良いです。しかし、大きいと機敏に動けない。もしくは臨機応変に動けないことが多いんです。だから試合をするときに相手にチームに大型で動ける左のファーストがいたら『このチームは一味違うな』と思って、気を付けますね」

 センターラインを固めるのは定石。だが、昨夏のU-18をきっかけにファーストの重要性も理解されつつある。ファーストは専門職、このことを理解したうえでオフシーズンを過ごせば春には見違えるチームも現れても不思議ではない。

文=田中 裕毅

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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