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常勝軍団への第一歩は小さな家族、そして授業への取り組み方から始まる 迫田守昭監督(広島新庄)

2020.01.03

 広島商時代には2回、そして現在指揮する広島新庄では3回と、春夏合わせて5回の甲子園出場へチームを導いた迫田守昭監督。今秋は広島県大会を制して、中国地区大会でベスト4進出。選抜出場が有力視されており、出場が決まれば自身6度目の甲子園出場となる。

 広島にとどまらず、全国でも屈指の名将という立ち位置にいる迫田監督。しかし、毎年結果を残すために、チームをどのように作れば常勝軍団が作れるのか。今回はチーム作りをテーマに話を聞いてみた。

団結力の始まりは寮部屋から

常勝軍団への第一歩は小さな家族、そして授業への取り組み方から始まる 迫田守昭監督(広島新庄) | 高校野球ドットコム
迫田守昭監督(広島新庄)

 チーム作りおいて、『団結力』というキーワードはよく使われる。それは国際大会など代表チームでも使われる大事なファクターだが、迫田監督はいかにして作り上げているのか。
 「普段のミーティングでの教育も大事でしょう。しかしそういった指導は常日頃から寮生活でも作れるようにしています」

 広島新庄には寮があり、そこで生活をすることが出来る。迫田監督はそこ寮生活が大事だと考えている。
 「ウチは3学年で4人1部屋にしています。3年生を部屋長にして、下級生が3人、4人1部屋を小さな家族として考えていて、それが1つずつ繋がっていくことでチームが1つになるんだと思います」

 小さな家族を広げて、チームという大きな家族を作る。こうすることで団結力を作るのが広島新庄流。では、まずは小さな家族、部屋ごとでどのようにして団結力を深めていくのか。迫田監督はこのような話を出す。

 「サインや守備のフォーメーションは私からは教えません。部屋長である3年生が下級生へ教えます。もし下級生が理解できなければ、怒られるのは部屋長です。『しっかり教えていないじゃないか』って。だから3年生は怒られないように、下級生にしっかり全部教えるんです。そうすることで団結していくんです」

 たとえ下級生がレギュラーでサインを理解できていなくても、部屋長は例外なく叱られる。部屋長は怒られないよう、しっかり下級生に教え、逆に下級生は先輩にために必死に覚える。こうした仕組みをつくることで、団結力が作られているのだ。

 ちなみにこの部屋長、レギュラーであるかないかに関係ない。つまり試合に出られなくても、チームの一役を担うということになり責任感が出てくるのだ。

[page_break:一番大事なのは継続することであり、授業への取り組み方]

一番大事なのは継続することであり、授業への取り組み方

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ランメニューに取り組む広島新庄の選手たち

 各部屋でサインを教えることで団結力を磨いている広島新庄。決め事として、5分10分程度の短い時間でも毎日サインを確認させている。これは「毎日やることが大事」だと迫田監督が考えて徹底させていることだ。

 「毎日5分、10分でも1年間やれば覚えられるはずだからです。さすがにいっぺんにやっても全部は覚えられないです。ただ忘れてもいいから明日やり直して、覚え直せばいい。そうすれば1年経てば覚えられるはずなので」

 野球と同じで、サインも反復して頭の中にインプットすればいい。その代わり、毎日コツコツ努力して覚えることが迫田監督にとって大事なのだ。そして継続するために必要なものこそ、普段の授業からしっかり聞くことなのだ。

 なぜなら、地道な努力をできる選手は自分を律して生活することが出来るから。そして、少しの量でもコツコツ毎日やれば凄い量になることがわかっているからだ。逆に普段の授業から寝ている、態度が悪い選手は自分に対して甘くなる。だから長続きせず、いっぺんにやってしまう。だから成長速度は遅くなってしまう。

 「急には上手くならないですよ。すぐには成果が出ないので、とにかく続けていくことです。そうすれば3か月、半年後に成果が出ることがわかってくる。そうなってくれれば、あとは楽ですよね」

 チームという大きな枠組みからではなく、小さな枠組みから団結力を強めていき、チームに還元する。こうしてチーム全体の団結力を固めていく。その第一歩が広島新庄であれば寮生活であり、普段の授業態度から始まる。

 こうした小さな積み重ねを疎かにしないからこそ、広島新庄は広島県内で強豪と呼ばれているのであり、迫田守昭監督は毎年常勝軍団を作り上げることが出来るのだろう。

文=田中 裕毅

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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