清宮に新たな刺客現る!ミスター完封・三浦銀二、クレバーな投球術で神宮4強入り
11月13日、明治神宮大会3日目。福岡大大濠の三浦銀二は明徳義塾相手に4安打完封。これで九州大会から公式戦完封は4つ目だ。投手優位な秋季大会とはいえ、そう簡単に抑えられるものではない。しかも完封した相手は大分商、鹿児島実、秀岳館、そして明徳義塾といずれも強打のチームとして注目される存在である。ミスター完封と称号を与えてもいい三浦の投球術に迫る。
その日の相手によって投球を組み立てることができる
昨年、福岡大大濠は阪神ドラフト4位指名を受けたエース・濱地真澄が注目されていた。その時、濱地に続く投手として、八木啓伸監督は、三浦の名前を挙げた。
三浦は、昨年秋の、第2回 福岡地区高等学校一年生野球大会で好投し優勝に貢献した。「球速はまだ135キロ前後ですが、ボールのキレ、コントロールが優れていて、コーナーへの出し入れが上手い投手」と八木監督から評された三浦は、そこから1年を経て、140キロを出せる投手に成長。コントロールがさらに磨かれ、よりピッチングが実戦的になった。
普段のストレートの球速は135キロ前後だが、ここぞというときに140キロ前後のストレートでねじ伏せる。力の入れ加減や、内外角、低めに投げ分けるだけではなく、さらに高めのつり球を使うなどピッチングの幅が広い。また、変化球も実に球種が多彩で、どのボールもストライクカウントが稼げるほどの精度の高さがあり、相手によってストレート中心なのか、変化球中心なのか、変化球でもどの球種が主体なのかを選択することができる。その日の試合で何を軸に投球を展開するのかは、秋から捕手に転向した古賀悠斗と話し合って決めていったという。
新チームスタートしてからそんなピッチングをしたいと常に考えていたが、なかなかできなかった。
「自分が目指すピッチングが形になってきたのは、九州大会開幕前なんです」とようやく選抜がかかった大会前に自分のピッチングを確立することができるようになったのだ。そして大会直前にはドラフトで指名された濱地から「腕を振っていけよ」と助言をもらった三浦は、九州大会で快投を見せる。
2回戦では、1回戦で7得点をあげた強打の大分商に完封。そして準々決勝では、鹿児島実業に完封。そして最も素晴らしかったのは、準決勝の秀岳館戦。2年連続の選抜を狙う秀岳館は、ここまでの全試合で本塁打が飛び出し、さらに機動力を絡めた戦いで、圧倒的な戦いぶりで勝ち上がってきた。優勝候補でもあった秀岳館に対し、なんと完封勝利。三浦は、決勝の東海大福岡戦の6回まで、計33イニング連続無失点の快投を見せ、7回表に同点に追いつかれるが、サヨナラ勝ちを収めた。36イニングで3失点と抜群の安定感でチームを九州大会優勝に導いたのであった。
明徳義塾戦も事前の分析が生きた
そして迎えた明徳義塾戦。明徳義塾とは九州大会前に一度練習試合をしている。結果は6対3で、三浦は3失点完投勝利を挙げていた。この試合の投球について振り返ってもらうと、「あの試合は外角中心にカット系統の変化球を中心に投げこんでいきましたので、今回の試合では配球の傾向を変えようと捕手の古賀と話していきました」
三浦は、明徳義塾の初戦を観戦。1人1人の打者を分析した結果、内角を強く攻めること、そしてカーブとチェンジアップを軸に緩急を使うことを決めた。
その配球が見事にはまった。ストレートは状況により強弱をつけつつ、カーブを織り交ぜて、ストレートをより速く見せる投球。この試合で一番マークしていたのは明徳義塾の4番打者・西浦颯大。練習試合で2安打を打たれていた打者で、この試合でも第1打席にチェンジアップを打たれて中前安打となったが、第2打席以降は一転して内角ストレートを軸に攻めていき、西浦は三浦のストレートに差し込まれ、第2打席以降は無安打に終わった。西浦は、「ストレートが手元でぴゅっと伸びてきていて打ちにくい。三浦投手の成長を実感しました」と試合後にコメント。また、明徳義塾の馬淵監督は、「うまい投球をするよね。前にうちと戦ったことを踏まえて投球をしている。今日はインコースのストレートに差し込まれていました」と敵将も三浦の投球をたたえた。
明徳義塾は四国大会4試合中、3試合が二桁得点という猛打で勝ち上がり、さらに神宮大会でも1回戦で7得点を挙げ、打ち勝っているチームである。その相手に対し、完封勝利を挙げるのだから、三浦の評価はますます高まっている。
準決勝の相手は早稲田実業と決まった。ここまで緻密な投球術で強豪校を抑えてきた三浦はこの相手に対して、どう抑えるのか。
一方、清宮にとっては新たな刺客が現れたといっていい。静岡の好左腕・池谷蒼大から2安打を打ち、復調を示した。この試合は2人の真価が問われる対決でもある。
明日14日の準決勝はハイレベルな戦いが期待できるのは間違いない。
(文=河嶋宗一)