磯子工vs城郷
磯子工・秋山が弾丸ライナーで決勝打、変則横手投げ・小太刀は来春に期待
磯子工7番・秋山 敏樹
◆人工芝と雨にいかになれるか
地区予選を勝ち上がってきた精鋭80校による神奈川県大会が4日より始まった。地区予選では学校のグラウンドを使うことが多いが、城郷と磯子工の一戦は[stadium]等々力球場[/stadium]と、なかなか経験できない人工芝のグラウンドだ。
なおかつ雨が降って滑りやすいなかで、守備がいかに乱れることなく戦えるかがポイントに思われた。
◆守備のミスを逃さない磯子工
先取点を取ったのは磯子工。2回に二死三塁から、9番・橋岡 幸誠のセーフティーバントを、城郷の守備がエラー。磯子工が相手のミスから先取点を取ると、2番・三國 響がレフト線に落とす二塁打で追加点と、畳みかける攻撃で、主導権を握った。
その後、互いに点数を奪い合って3回を終わって4対1と磯子工がリードを作っていた。磯子工としては、中盤以降に畳みかけたいところだが、4回からサイドスローの城郷・小太刀 修平の前に、打線が封じられた。
すると、中盤以降に城郷が追い上げて、7回終わって4対4と試合が振り出しに戻った。
次の1点が勝敗を分ける予感が漂う中で迎えた8回、磯子工は一死から二塁打で出塁した6番・藤原 翔空を二塁に置く。ここでこの試合でタイムリーを放っていた7番・秋山 敏樹が、フルスイングで捉えた痛烈な打球がセンターを襲った。
この試合2本目となる秋山のタイムリーが値千金の勝ち越し打となり、磯子工が5対4で城郷を下した。
◆勝敗分けた守備
2回、そして決勝点に繋がった8回と戦前に考えられた野手の守備力が勝敗を分ける結果になった。
城郷は3回、先頭を出しながらも二死三塁と粘ったところで、磯子工の9番・橋岡のセーフティーを急いで処理して、送球が微妙に逸れた。そこから打線を繋がれて3点を失った。
さらに8回裏、記録上はヒットになっているが、磯子工の6番・藤原の打球をセンターが後逸したのは痛かった。
終盤に追いつき勢いづいていただけに、城郷は8回をしっかり守って最終回の攻撃に繋ぎたかった。もし滑り込んで捕球ができれば、最高だったが、打球はライナー性で勢いがあった。後逸してしまうと、転々と転がる可能性は十分あった。
その時のリスクヘッジのために、レフトかライトがカバーに回るが、センター正面に飛んだこともあり、時間がかかる。であれば、無理せずに打球を処理しても良かったのではないだろうか。
対して勝利した磯子工は、初回に1つエラーがあっただけで、その後は安定した守備で自分たちから崩れることはなかった。
逆にもらったチャンスを活かす集中力を発揮した磯子工。勝負所で崩れた城郷。些細なところだが、ここに勝敗の分かれ目があったと考えられる。
◆イメージは森友哉のフルスイング
チャンスをモノにした7番・秋山は、3打数2安打2打点と下位打線にはもったいない活躍だった。
マウンドの小太刀との6回の初対決では空振り三振に倒れたことで、「角度が凄いので、スライダーを捨てる代わりにストレートに絞ろう」と8回の打席に入り、結果を残した。
「打った瞬間にわかりました。最高です」と嬉しさを滲ませるヒーローは、内容にも納得していた。
「普段から西武・森 友哉さんを参考に、フルスイングをしてセンター方向へ打つように心がけています。だから今日の2本には納得しています」
日々100回だが、自宅で素振りをするようにしてきた今のスイングを磨いた。次戦も磨いてきたフルスイングでチームに貢献してほしい。
◆変則サイドハンドのモデルは益田直也
城郷は敗れたが、背番号9を付けた2番手・小太刀の好投は、城郷の中盤の粘りを支えた投球だった。
エース・肥田野 優太から引き継いだマウンド。セットポジションからの普通のサイドスローだが、小太刀の武器はインステップにある。
通常よりも2、3足分も内側に踏み込んで角度を付ける独特なフォームをしている。これで打ちにくさを作りだし、磯子工の攻撃を凌ぎ続けた。
小太刀は投手で城郷に入ったが、当初はスリークォーターの投手だった。ただ、昨年の夏に打たれにくい投手を目指すために、監督と話し合い、サイドスローへ転向を決めた。
千葉ロッテ・益田 直也を参考にしながら、腰を横回転で使えるように練習を重ねて、今のフォームを作り上げた。
そしてこの試合。「緊急登板でしたが、流れを変えようとマウンドに上がりました」。その仕事は十分果たした。ここから長い冬になるが、春にはさらに成長した姿を見せてほしい。
(記事=田中 裕毅)