Column

練習と同じくらい大切な休養の話

2020.08.31

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 例年とは違った暑い夏がまだまだ続きますが、皆さんの学校では新学期が始まっていることと思います。新チームでの活動も慣れてきた頃でしょうか。秋の公式戦に向けてそれぞれが新たな目標に向かって練習に汗を流していることでしょう。さて今回は練習と休養のバランスについて考えてみたいと思います。練習を積み重ねて技術力を高める一方で、疲労回復を促す適切な休養もまた必要です。このバランスが崩れてしまうとコンディションを崩したり、ケガをしてしまったりすることがあるので注意が必要です。

暑熱環境が体に及ぼす影響

練習と同じくらい大切な休養の話 | 高校野球ドットコム
暑い時期は外気温だけではなく、紫外線などによっても疲労しやすい

 暑い時期は熱中症を起こしやすいことが知られています。外気温が高い状態で体を動かすと短時間でも体温が上昇しやすく、体は体温調節のために発汗して元に戻そうと働きます。このときに発汗によって水分やミネラル分が失われ、体は脱水状態におちいります。脱水状態のままプレーを続けてしまうと熱疲労、熱けいれん、熱射病といった熱中症のような症状がみられ、生命を脅かすような事態になることもあるので暑熱環境下での練習は十分な配慮が必要です。

 また屋外でのスポーツは紫外線による影響も考慮する必要があります。紫外線は太陽からもたらされる目に見えない光(不可視光線)の一つで、最も波長の短い光として知られています。日中ではお昼頃、日本の季節では6月から8月にかけて紫外線が強くなり、雨天時や曇天時よりも快晴時の方がその影響は大きくなります。強い紫外線を浴び続けると日焼けして皮膚がダメージを受けてしまうことは想像できると思いますが、この他にも活性酸素によって細胞が損傷し、修復のために時間がかかったり、疲れやすさを覚えたりといったことが考えられます。

 暑熱環境によるストレスはいつも以上に体力を奪い、疲労につながりやすいことを覚えておきましょう。

[page_break:運動量と体力レベルを考える/コンディションを崩すパターンを知ろう]

運動量と体力レベルを考える

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オーバーワークは成長期の体に大きな負担をかけやすい

 野球が上達するための方法は「練習すること」ですが、それと同じくらい大切なことが「練習後の疲労を回復させるための休養をとること」です。野球の練習を積み重ねていくと、できないことばかりに目が向きがちですが、できることを一つずつ積み上げていくように見方を変えてみましょう。特に成長期にある皆さんの体はまだまだ発展途上の状態です。骨と筋肉の成長スピードが違うため、骨とその周辺部は筋肉に引っ張られて痛みが出やすいことがその特徴として挙げられます。そこへ練習過多によるオーバーワークや反復動作を繰り返して起こるオーバーユース(使いすぎ)などが重なると、引っ張られている筋肉や腱はさらに伸ばされて柔軟性を失い、痛みなどの炎症症状が見られるようになります。練習量や練習強度を急激に増やすとケガのリスクが高まるため、体力レベルにあった練習になっているかどうか、練習時間は適切かといったことも考える必要があると言えるでしょう。

コンディションを崩すパターンを知ろう

 練習と休養のバランスが崩れるとはどのようなことでしょうか。大きく3つ考えられます。

1)自分の体力レベルを超えた過剰な負荷がかかり続けること(練習量・強度等の増大)。

2)疲労状態から十分に回復しないこと(睡眠不足や食欲不振などによって体に必要な栄養素が不足し、体の回復が妨げられる)。

3)体調がよくない状態(疲労感が続く、風邪などの症状がある)のまま練習を続けること。

 このような状態のまま練習を続けていると、体調を崩したり、ケガをしやすくなってしまったりするだけではなく、慢性疲労状態となりいくら休んでもなかなか体が回復しないような状態になってしまうこともあります(オーバートレーニング症候群)。

 野球が上達するための練習がコンディションを崩し、パフォーマンスを下げることがあってはならないと思います。特に成長期にある皆さんは体が完成された状態ではないことを自覚し、過度な練習が体に及ぼす影響についてもぜひ知っておいてもらいたいと思います。

【練習と同じくらい大切な休養の話】
●暑熱環境はいつも以上に疲労を感じやすく、ダメージも大きい
●熱中症のリスクとともに紫外線が及ぼす影響も理解しておこう
●野球上達の鍵は「練習」と「練習した後の疲労をしっかり回復させること
●成長期の体は骨とその周辺部に痛みが出やすい特徴がある
●コンディションを崩すパターンを知っておこう

(文=西村 典子

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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