Column

高い向上心と高い意識で初の聖地を目指す京都国際(京都)【前編】

2018.12.24

 夏の京都大会で4強、秋には初の近畿大会出場を決め、初の甲子園出場が手の届くところまで来ている京都国際。卒業生には曽根海成(広島)や清水達哉(ソフトバンク)といったプロ野球選手がおり、有力選手を輩出する学校として近年、注目を集めている。今回は躍進著しい京都国際の強さの秘密や悲願の甲子園出場に向けた想いなどを伺った。

有望選手を輩出する京都国際の秘訣とは

高い向上心と高い意識で初の聖地を目指す京都国際(京都)【前編】 | 高校野球ドットコム
京都国際野球部の選手たち

 京都国際は前身である京都韓国学園時代の1999年に野球部が創られた。以前は韓国からの留学生や在日韓国人の選手が多かったが、ここ数年は野球を極めに入学してくる日本人で構成されている。

 2008年から指揮を執る小牧憲継監督は「上で通用する選手を一人でも多く育てたい」というポリシーを持っている。その成果が曽根や清水がプロ入りという形に表れ、彼らの影響で「プロになりたい」と志す中学生が京都国際の門を叩くようになった。今年も3年生の池田将也がプロ志望届を提出。残念ながら指名漏れとなったが、彼の元には4球団から調査書が来ていたという。

 有望選手を輩出する秘訣とはいったい何なのか。まずは京都国際の環境から紐解いてみる。学校の敷地内に専用グラウンドはあるが、白土で広さもそれほどではない。実戦練習には不向きな環境だが、そこに強みが隠されていた。小牧監督はこう語る。「内外野の連係があまりできない分、個人の練習時間を確保できます。上手くなりたいという想いを持たせたらその分、技術は上がると思います」。

 組織的な練習をすることが不向きな環境だからこそ個々の能力を伸ばすことに力を注ぐことができる。その中で向上心を持って野球に取り組んだ選手が飛躍できるのだ。その代表格がOBの曽根だろう。小牧監督は曽根の高校時代を「とにかく負けず嫌いで一生懸命にやる子でした」と振り返る。彼の熱意に対して小牧監督も本気で向き合ったことでプロ入りの夢を叶えることができた。

 曽根や清水がプロ入りしたことで中学野球関係者からも信頼されるようになり、近年は有望な選手を送ってくれることが増えたという。その成果が下級生主体のチームで夏4強という結果に表れた。

[page_break:夏の反省を生かし初の近畿大会へ]

夏の反省を生かし初の近畿大会へ

高い向上心と高い意識で初の聖地を目指す京都国際(京都)【前編】 | 高校野球ドットコム
ティーバッティングに励む選手

 「まさかベスト4まで行くとは思っていなかった」と夏の大会を回想する小牧監督。当時の3年生には頼りなさを感じていたというが、秋の主戦投手だった主将の足立賢祐(3年)が怪我で夏に間に合わなくなり、「主将に専念させてください」と直訴。主将が身を挺してチームをまとめることにより、一つになったことが躍進に繋がった。

 準決勝の立命館宇治戦では同点の9回裏に二死二塁から安打を放つが、本塁生還を阻まれてサヨナラ勝ちを逃す。直後の10回表に5失点して試合を決められてしまった。小牧監督は敗因を「人間的な部分でまだ隙のあったチームでした」と分析する。

 その象徴が9回裏に本塁で刺された場面だ。二死で2ストライクということで、ストライクだとわかった瞬間に二塁走者は第二リードを大きく取る必要がある。しかし、第二リードの取り方が甘かったことで本塁へと生還することができなかった。

 そのこともあり、新チーム結成後は走塁を徹底的に鍛えた。チーム全体が走塁で負けたことを自覚しており、練習でも隙を見せると、厳しく言い合えるようになったという。

 「甲子園に行きたいと本気で思わせてくれるチーム」と小牧監督が語る新チームは秋に快進撃を見せた。1次戦から順調に勝ち進むと、準決勝で夏の代表校である龍谷大平安を下して秋の近畿大会初出場を決める。決勝の福知山成美戦は敗れたが、十分に躍進を印象づけた。

 初出場となった秋の近畿大会は初戦で兵庫大会を制した明石商と対戦。強豪相手にもひるまず序盤から試合を優位に進め、7回を終えて4対2とリードする。しかし、8回表に1点差に迫られ、なおも二死一、二塁からレフト前ヒットを浴びる。ここでレフトの早真之介(1年)が打球を後逸。その間に打者走者までが生還し、一気に逆転を許してしまった。

 このプレーが決勝点となり、4対6で敗戦。甲子園初出場の夢は絶望的となった。「『記録に表れるミスをしているうちは勝てない』といつも言っているんですけど、記録に表れるミスを連発していたので、逆転されたのは必然だと思います」と振り返る小牧監督。改めてチームの未熟さを痛感した大会となった。

 前編はここまで。後編では近畿大会終了後の取り組みについて迫っていきます。お楽しみに!

(文・写真=馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.06.16

大阪桐蔭、山梨学院、慶應義塾…強豪校・名門校の昨年度卒業生はどの進路を歩んだのか?【卒業生進路一覧】

2024.06.16

【東北】17日に準決勝!近年強さが目立つ青森勢か、盛岡大附の復活Vなるか<地区大会>

2024.06.16

青学大が中田、藤原のタイムリーで逆転に成功!1点をリードして後半戦へ!【全日本大学選手権決勝】

2024.06.16

【大阪】17日に抽選会!打倒・大阪桐蔭なるか、大阪学院大高や興國などはもちろん、ノーシードの履正社の対戦相手も注目<夏の甲子園県大会組み合わせ>

2024.06.16

大阪工業大の新入生に八戸学院光星の二塁手、敦賀気比、東海大星翔の正捕手など甲子園組や近畿の逸材が入部!

2024.06.14

【福岡】九州国際大付は小倉商、東海大福岡は小倉南、春日は大川樟風、福岡大大濠は輝翔館と対戦【2024夏の甲子園】

2024.06.11

センバツ出場・東北のレギュラー左翼手がプロボクサー挑戦へ! エースはENEOS、主力は國學院大、国士舘大などへ進学【卒業生進路】

2024.06.16

大阪桐蔭、山梨学院、慶應義塾…強豪校・名門校の昨年度卒業生はどの進路を歩んだのか?【卒業生進路一覧】

2024.06.14

15日に夏の甲子園抽選会!超激戦区・愛知が誇る逸材を一挙紹介!素材の宝庫・愛工大名電、中京大中京の149キロ右腕…そしてモイセエフはどこまで成長したのか?今年も全国クラスの逸材が点在!【注目選手リスト】

2024.06.11

【北海道】十勝支部は12日に抽選会!帯広大谷、白樺学園の初戦の相手に注目<夏の甲子園予選組み合わせ>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.21

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在33地区が決定、岩手では花巻東、秋田では横手清陵などがシードを獲得〈5月20日〉

2024.05.19

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在30地区が決定、青森では青森山田、八戸学院光星がシード獲得

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.05.20

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在31地区が決定、宮城では古川学園、仙台南、岩手では盛岡大附、秋田では秋田商などがシードを獲得