出水vs薩南工
努力の勝利!・出水
濵島隆良(出水)、会心のガッツポーズ
最後の打者を気迫の直球で打ち取ると、出水のエース濵島隆良(2年)は会心のガッツポーズが出た。ベンチ裏に下がると一気に緊張が緩んで感極まる。
「夏前にケガをして投げられなくてチームに迷惑をかけた分、自分を追い込んでやってきた。努力の勝利です」と胸を張って言い切った。
チーム状態は万全ではなかった。正捕手で4番の児島大地(2年)が3回戦の大島北戦(試合レポート)の後に、左手首の疲労骨折が判明し、スタメンを外れた。エース濵島も、代役でマスクをかぶる北條喬久(1年)も動揺がなかったといえば嘘になる。ただ下薗洋一郎監督には「それぞれができることを精一杯やるだけ。良い意味で開き直れていた」と感じられた。
2点を先制され、我慢の投球が続いた濵島だったが、尻上がりに調子を上げてリズムを作る。薩南工の好投手・神薗康太(2年)を打ちあぐねていた打線も終盤で意地を見せた。
一死満塁から5番・樋口健人(1年)の併殺崩れで1点差とし、続く6番・北條はボテボテの三塁ゴロだったが「何が何でもセーフになりたかった」とヘッドスライディングで滑り込み、タイムリー内野安打で同点に追いついた。スマートではないが、泥臭く、しぶとく決めた同点劇だった。
9回は一死から代打で児玉が打席に。差し込まれたが思い切り振り抜いた分、打球がセンター前に落ちヒットで出塁する。代走が盗塁失敗でチャンスが潰えたかに思われたが、1番・海晃矢(2年)がヒットで出塁し、望みをつなぐ。2番・中村聖一朗(2年)がタイムリーを放ち、土壇場で勝ち越しに成功した。
「大地が左手一本で外野に持っていった」姿に心意気を感じた濵島は、その裏、オール直球勝負でねじ伏せ、07年春の第120回大会以来15季ぶりとなる8強を手繰り寄せた。
(文=政 純一郎)