大島vs神村学園
松下勇一(大島)
「力の勝負」に打ち勝つ!・大島
強豪・神村学園を相手に打撃戦で打ち勝つ。打力には自信を持っていたが「10回やって1回勝てるかどうかの相手。この展開で勝つイメージはなかった」とは、鹿児島大島・渡邉恵尋監督の偽らざる本音である。だが、大島は「力の勝負」(渡邉監督)をものにして、ベスト8進出を勝ち取った。
「打てる」根拠はあった。大会期間中にスタンドから見た印象では、十分勝負できるという手ごたえを全員が持っていた。一昨年秋の1年生大会でも神村を相手に3点を先取した経験もあった。
2長打3打点の活躍だった6番・小野浩之介(2年生)は「思い切り振って、野球を楽しむこと」を心掛けた。初戦は喜界、3回戦は奄美との「同郷対決」はいずれも1点差の辛勝だったが、「挑まれるプレッシャー」から解放されたことで、伸び伸びと野球ができるようになった。2回には変化球を読んで先制の二塁打を放つ。2打席目は直球を詰まらされて打ち上げたのを修正し、6回一死一二塁で迎えた打席では「直球で勝負してくる」と読んで、今度は低いライナーの打球で右中間を破った。
2点を先制した後は、大振りで打ち上げていたのを、6、7回は各打者がきちんと修正して集中打を浴びせた。
エース松下勇一(3年)にとっては「ストライクをそろえず、内角の厳しいところを突くこととボール球をうまく使うこと」が神村打線攻略のカギだった。12安打されたが「内角の直球に力があって、打たれていなかったので、リードはしやすかった」と捕手・藤原光寿(3年)は言う。8回犠飛で2点差に追い上げられ、なお二死三塁とピンチは続いたが、後続の初球は冷静にボール球から入り、最後は力強い直球で空振り三振に打ち取った。
「勝負所でしっかり抑えられる守備を鍛えること」
県の1年生大会では3点を先取しながら、14点取られて逆転コールド負けで、渡邉監督は今後の課題をそう挙げていた。この試合では2打点と打撃でも気を吐いた中堅手・芝田雅(3年)が2回にバックホームアウトをとっている。ピンチの場面で2つの併殺を取れたのも大きかった。1年の秋より、確実に力強く成長した姿が野球に現れていた。
(文=政 純一郎)