川崎北vs日大高
3安打と活躍した1番成田(川崎北)
新生・川崎北、ベストエイト進出
両校は毎年のように練習試合を組んでおり、今年も3月下旬に対戦をしている。このときは川崎北の打線が爆発し、10対1で快勝した。ただ、この日の先発、日大のエース邑楽雅貴は6回から登板し1失点と、結果を残した。邑楽対川崎北の打線が、ひとつの焦点だった。
邑楽は序盤からコントロールに苦しんだ。3回までに3安打4四死球。何とか無失点に抑えてはいたが、3回戦で完封勝利を飾るなど、好投してきた邑楽らしくない立ち上がりだった。
川崎北は初回、先頭の成田幸樹がヒットで出塁すると、2番の酒井唯人が送りバントをせずに強攻。ピッチャーゴロのダブルプレーに終わったが、川崎北らしさが出た攻めでもあった。
「ふつうに考えれば送りバント。でも、この子たちは佐相先生の野球で戦ってきた。それを生かしたかったんです」
この春から監督に就いたばかりの渡邉陽介監督の言葉である。4年間、川崎北で部長を務めていた。
前任の佐相眞澄監督(現・県相模原)はバッティング指導に定評があり、毎年、県立トップクラスの打線を作り上げていた。極力バントはやらずに、強攻策でチャンスを広げる野球だった。
一気に試合が動いたのが4回裏。
川崎北は二死から、9番ピッチャーの千葉竜太郎が二塁打で出塁すると、成田がフォアボール、酒井がセンター前に放ち満塁。2回裏に続き2度目の満塁のチャンスを迎えた。
打席には3番・石川純一。3ボール2ストライクから、邑楽が投げたインコースへのスライダーが引っかかり、足にデッドボール。押し出しで、川崎北が1点を先制した。
続く荒井典裕がショートへのタイムリー内野安打。高橋が邑楽得意のチェンジアップを左中間へ落とし、さらに2点。計4点をうばいとった。高橋はストレートに遅れていただけに、チェンジアップにうまくタイミングが合った感がある。日大バッテリーとしては、悔やまれる配球だった。
4番・荒井(川崎北)
川崎北の先発は右スリークォーターの千葉。右バッターの内にシュート、外にスライダー、左バッターの内にカットボール、外にシュートと左右のゆさぶりを軸に、序盤から好投を続けた。
4回までわずかに1安打。5回表に平川雄大に二塁打を打たれるも、長打力のある長島慎司を外のスライダーでショートゴロ、前の打席で二塁打の邑楽を高めの吊り球でキャッチャーフライに打ち取った。
川崎北が追加点を奪ったのが6回裏。先頭の成田がレフト越えの三塁打で出塁したあと、3番の石川がセンターへきっちりと犠牲フライ。スクイズの素振りは見せずに、強硬策で加点した。
先発の千葉は疲れが見えた7回以降に苦しんだ。
7回裏には無死一、二塁のピンチを迎えるも、スライダーを低めに集め、何とか無失点。
8回裏には、デッドボールを与えたあと、代打・岡崎和樹に二塁打、高橋優輔にタイムリーを浴びて、2失点。3点差にまで追い上げられた。
ここから、本人が「よく粘れた」と語るとおり、4番・中村をスライダーで6-4-3のゲッツー。大量得点を与えずに、ピンチをしのいだ。
千葉にとって、この試合が公式戦初完投。
「西野先生にフォームを見てもらい、よくなりました」
この春の人事異動で、神奈川工で県準優勝の実績を持つ西野幸雄先生が川崎北の部長となった。投手指導に定評がある指導者だ。「試合中に、配球面でのアドバイスも多く、とても助かりました」と、渡邉監督も語る。
川崎北の課題として、常に挙がっていたのが投手力。そこに、西野先生が加わったことでどう変わっていくか。
川崎北は準々決勝で横浜高校と対戦する。
昨秋、同じく準々決勝で戦い、0対12の完敗を喫している。「揺さぶることすらできなかった」と渡邉監督(当時・部長でベンチ入り)が振り返る。王者・横浜に対して、どこまで戦うことができるか。決戦は5月3日。
(文・写真=大利 実)